初めて自社サービスをローンチしたプロジェクトマネージャーのひとり反省会
WHITE プロジェクトマネージャーの岡本です。普段の業務内容はクライアント企業の新規事業開発支援ですが、2018年の終わり頃から、自社の新規事業開発プロジェクトにも参画しています。初めてローンチしたサービス開発のプロジェクトのスタートからローンチまでの約半年間の失敗談と学びについて、振り返ってみたいと思います。
目次
・プロジェクトスタートの経緯
・初期段階、なにが起こったか
・みんなでつくるために大切なこと
・さいごに
ーー 開発したサービスの基本情報 ーー
サービス概要: 新規事業・イノベーション創出のクラウド型支援サービス
サービス名称: innovation design compass
サービスサイト: https://idc.255255255.com/
開発期間: 6ヶ月(2018年10月プロジェクト開始ー2019年3月リリース)
メンバー: 4名(サービスデザイナー1名、エンジニア2名、プロジェクトマネージャー1名)
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プロジェクトスタートの経緯
「『AI/chatbotを活用し企業のイノベーション創出を支援する』という、サービスの構想はある。サービスデザイナー1人とエンジニア2人もアサイン済。このまま3人で話していても具体化していかないので、スケジュールちゃんと引いて、前に進めてください。ひとまず、年明け2019年3月末にリリースすることを目標に、動き始めてみてね」。
そうプロダクトオーナーである上長から声をかけてもらったのが、このプロジェクトの始まりでした。
当時私はWHITEに入社したばかり。前職では業界も業種も違ったため、WHITEで実践している新規事業開発の知見はありませんでした。早く経験を積みたかったので、嬉々としてプロジェクトにジョインすることに。
ただ、初めて話を聞いたときに頭に浮かんだのは、本当にできるの?という疑問でした。ただでさえ曖昧な表現や不確実な要素が多い新規事業開発を、本当に自動化することができるのか…?具体的なアウトプットがイメージできない状態でした。
初期段階、なにが起こったか
アウトプットがイメージできない!
→ 開発プロセスが設計できない!
→ 仕様が固まらない!
→ 工数見積ができない!
→ スケジュールが引けない!
→ プロジェクトマネジメントできない!
絶望的ですね。怖い。順を追って説明していきます。
大きなコンセプトは『新規事業を開発できるチャットツール』、使用するチャットツールはSlack、メインターゲットは、コンサル会社に依頼したいけれど予算や立地の都合で依頼できない企業。この程度までは決まっていたものの、具体的な機能要件はまだ決まっていませんでした。
実装する機能が決まらないことには、開発プロセスも描けない。まずはみんなで「どんな機能が必要か」という議論から始めることにしました。しかし、そもそも…という概念的な議論がつづき、一向に具体的な機能要件に落とし込めない時期がつづきました。
このままでは前に進まないので、視点を変え、サービスデザイナーを中心に超具体的な利用シーンから「どんな機能があるとユーザー体験として良いか」を考え、それをベースにみんなで機能要件を詰めていきました。
どんな機能を持ったサービスにするか、大まかな整理はできた。いざ開発!とはなりません。今度は、機能の仕様設計における出戻りが多発。その原因は、サービスデザイナーが提供価値から仕様までを詰めた上でエンジニアに開発依頼する、という進め方にありました。
たとえば『スケジュールを自動で生成する機能』が欲しい!となった際、
・スケジュール生成のロジックは?
・何をトリガーに生成する?
・スケジュールの根拠となる〆切はどのタイミングでユーザーに聞く?
・〆切が特に決まっていない場合はどうする?
・土日祝日はどう計算する?
・ファイル形式は画像?エクセル?
など、実装の前に決めなければならないことが膨大に出てきたり、サービスデザイナーは簡単に実装できると思っていたけれどエンジニアが調べてみると技術的に難しいということが判明したり…。
結果、はじめに想定していた仕様ではないほうが良さそうだ、と方針転換し、一度決めたはずの仕様をもう定義し直す、といったことが発生しました。
この事象の根底には「エンジニアには、きちんと仕様を詰めて開発依頼しないと…」「提供する機能の内容に、エンジニアがどこまで口出していいのかな…」という、お互いの遠慮がありました。「何を発言しても否定されない」「自分の一言でもっと良くなる」「いつ声をかけても大丈夫」という心理的安全性を持てるようになってから、この遠慮が徐々になくなっていったと、今になって感じます。
この辺りから、機能要件ではなく、実現したい提供価値の議論の段階からエンジニアと相談できるよう、打ち合わせを設定。「それならこういう機能のほうがスマートに実現できるのでは」「この機能をつけるとこんな弊害が起こりうるかも」と、前向きな議論ができるように。仕様定義の出戻りも減り、その場で仕様を固めていけるようにもなってきました。
こうして仕様はどんどん決まりいざ開発作業の段階になると、エンジニアチームも経験したことがない開発作業も多く、今度は工数見積もりが機能しない(着手してみたらめっちゃ大変やんこれ…)ということが起こりました。ガントチャートで作成したスケジュールがどんどん後ろにずれこみ、あまりよろしくない状態が続いてしまいました。
最終的には、中長期でのスケジュール設計を一旦ストップし、各タスクの〆切だけを目指し「できるところからひたすらやろう(気合い)!!!」という状態で何とかリリース。プロジェクトメンバーはもちろん、社内の他メンバーにもサポートしてもらったおかげで、リリースは無事できたものの、プロジェクトマネージャーとしては本当に不甲斐ない進行になってしまいました。
現在進めている第二期開発では、開発工数を見積る期間を設け、それからスケジュールを引くことや、大きな方針についての議論はプロジェクトメンバー全員で行うことなど、新しいプロジェクトの進め方をトライしています。(そちらの成果は、また別の記事で。)
みんなでつくるために大切なこと
後半、スケジュールは崩れてしまっていたものの、前向きな雰囲気で進行できていたのは、前述したとおり「デザイナーもエンジニアも一緒に考えたほうが良いものができるよね」という、暗黙の共通認識ができてからだと思います。それを下支えしていた(かもしれないと今になって思う)のは、
1.意義を知る
2.負をなくす
3.褒めまくる
という3つの行為でした。
1.意義を知る
メンバーがこのプロジェクトに取り組む意味を知ること。新しい技術を使ってみたい、UXをとことん考える時間が楽しい、サービスをつくったという実績が欲しい、新しい知見を広げたい…どんな理由でも良いので、一人ひとりのアガるポイントを理解し、それが実現できるような進行や役割分担、コミュニケーションを心がけていました。
みんないい大人なので「仕事だから」と割り切ってやることもできるけど、クライアントワークとは違い、はじめのうちは稼げない自社の新規事業だからこそ、「なぜこのプロジェクトをやるのか」、会社にとっての意義と、社会や業界にとっての意義とは別に、自分にとっての意義を持ち合わせていたほうが、モチベーション高く取り組めると思います。
2.負をなくす
プロフェッショナルたちが、それぞれの任務に専念できる環境をつくる。妨げる要因をなくす。タスク管理ツールの導入、進捗管理、ファイルの整理、他案件との稼働調整など、一つひとつは小さいことで、プロマネとして当たり前にやるべきことかもしれません。何がいま彼らのネックになっているのかをこまめに探り、やらなくてもいいことをやらなくて済む状態にできるよう意識していました。
3.褒めまくる
とにかく今回のメンバーはみんな、褒めるのがとても得意な人たちでした。自分のやったことがどんなに小さくても「すごい」「天才」「最高」「素晴らしい」「爆速」と言葉にしてもらえると、純粋に嬉しいし、場の雰囲気も明るくなりました(はじめバカにされてるのかと思ったのはヒミツ)。こういうことを口に出すのは恥ずかしくてあまり得意ではなかったのですが、他のプロジェクトでも実践していきたいと思っています。
さいごに
最終的な責任を持つプロダクトオーナーが、大きな方針以外はほとんど権限を委ねてくれたおかげで、総じて意思決定スピードは早く、軌道に乗ってからはとてもスムーズに開発が進みました。各々が見つけてきた新しい仕組みを取り入れてみたり、とことん議論したり、このスピード感は自社事業の醍醐味だなと感じます。
一方で、0→1の新規事業に取り組むことの難しさも痛感しました。初めてのことばかりで不安で、社内に知見がなくどう進めればいいか分からなくて、経営層からの期待が時にプレッシャーに感じて…。通常業務で対面する大企業の新規事業開発担当者の方々の気持ちが、ほんの少しだけ分かった気がします。今回の学びは新サービスの第二期開発はもちろん、クライアント案件にもどんどん還元していきます。
本サービスの第二期開発は、第一期開発にひきつづきサービスデザイナーとエンジニアに加え、データサイエンティストやプロデューサーなど新しいメンバーも増え、4人から7人になりました。第一期開発の反省を活かし、試行錯誤しながら、より良いプロダクトに育てていきます。
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▼サービスデザイナーもnote書いてます
(Top Image:Photo by Glenn Carstens-Peters on Unsplash)