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【第243回 開催レポート】「津田梅子」大庭みな子
開催日:2024年12月14日
課題図書:「津田梅子」大庭みな子
2024年の様々な出来事の中に新紙幣発行があった。一万円札は渋沢栄一、五千円札は津田梅子、千円札は北里柴三郎が選ばれた。
紙幣の肖像に選ばれる人物の条件は、「国民から尊敬され、日本を代表するような人物であること。」
お三方の名前や功績をなんとなく知ってはいるけれど、詳しく語れるかと言えば、むむむ。
ということで、紙幣の肖像に選ばれた人物の中から赤メガネのメンバーがその人の事をもっとよく知ろうと選んだのは「津田梅子」だった。
課題図書になったこの本は、1984年に津田塾大学の構内で見つかった津田梅子の大量の私信を元に、著者である大庭みな子さんが梅子の生涯を追いかけ綴ったものだ。
日本初の留学生として6歳の時にアメリカへ。11年間滞在し、帰国後ホームステイしていた先のランマン夫人宛てに書かれた手紙には、日本になかなか馴染めない様子であったり、彼女の志し、明治大正時代においての女性の置かれた立場などが感情豊かに語られている。
私を含め赤メガネのメンバーが津田梅子について課題図書を読む前に知っていた事と言えば「津田塾大学の創設者」「英語が堪能な人」という事だけで、その他の事柄はなかなか挙げることが出来なかった。
だが課題図書読後の読書会では、
「もっと早くに『津田梅子』の事を知っておきたかった。」
「性格や価値観の基本が形成されるであろう10代の頃にアメリカで生活をしたにも関わらず、『日本人』として生きようとした姿に感銘を受けた。」
「明治大正の窮屈な時代に女性の地位を高めようとした行動力が凄い。」
「伊藤博文をはじめ津田梅子を取り巻く人が歴史上の有名な人物ばかりで驚いた。」
などなど。
この本の中でとても印象的だったのは、227頁に登場する津田梅子から直接教えを受けた岡村しなさんの語り。
岡村さんの話しは梅子の人物像をさらに浮き立たせ、それと同時に当時の日本の生活風景がありありと感じ取れるものになっている。
その他、著者である大庭みな子さんの繊細なる筆致のおかげで、梅子の内面的な葛藤や、彼女が抱えた孤独感がリアルに伝わってきたのも読みどころのひとつ。描かれているというより、津田梅子が生き生きとそこに存在するかのように感じることが出来た。
梅子が日本社会で受けた偏見や批判に耐えながら、自分の信念を貫いた姿は、これからの女性の生き方に勇気を与えることであろう。
それにしても昔の人は、よく手紙を書いた。人物像がリアルに伝わってくるので、解説書などを読むよりもとても面白い。
この本を読んだことで、財布の中にある五千円札をこれまで以上に丁寧に扱うようになった。
そんな気持ちになったのは私だけではないはず。