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【第185回 開催レポート】「夫婦善哉」織田作之助

開催日:2021年5月22日
課題図書:「夫婦善哉」織田作之助

「善哉って漢字が読めなかった!」なんて話をしつつ始まった今回の課題図書は「夫婦善哉(めおとぜんざい)」。

1940年に発表された織田作之助の代表作。

今回の参加者は、作家の名前やタイトルを知ってはいたが作品は全員初読。

それぞれ登場人物に対しては想うところがあったものの、総じて面白く読めた模様。

大正末期から昭和初期の大阪を舞台に描かれる夫婦の物語。
天婦羅屋の娘として愛され育った蝶子は、自ら希望して17歳で芸者になる。
そこで客として来ていた化粧品問屋の若旦那、柳吉と恋に落ち、柳吉には女房子供もいたために駆け落ちをする。
柳吉の実家には勘当され二人の関係は認められないが、柳吉を自分の手で一人前の男に出世させてみせると意気込む蝶子。
二人で商売を次々と替えながら生活していくが、ダメ男柳吉の遊び癖による散財から苦しい日々は続くも、何とか支え合い(いや,蝶子の支えだけで)生きていく二人のお話。

全編を通して街の風景、食、人がとても細かく描かれ、大阪弁での会話も楽しく、大阪を訪れたことがない者でも当時の大阪の風を感じることができたようだった。

「蝶子は柳吉のことが本当に好きだったのだろうか?」という質問に話が盛り上がり、勿論好きだったという意見と、柳吉の家に認められないことへの意地で一緒にいたのではないかという意見も。

20歳にして「おばはん」と呼ばれ、親の死目にも会わせてもらえない蝶子。放っておけないと思わせる何かが柳吉にあったのであろうか・・・?

今回訳あって旧版の本を読んでいた参加者がいたのだが、よくよく照らし合わせてみると、なんとそちらには「続」夫婦善哉が収録されていない!

続編について調べてみると2007年に新たに発見され出版されたものだった。

続編では夫婦で大阪から別府へ移住し、また新たに商いを始めるのだが、「夫婦善哉」後の「続夫婦善哉」では、読者がもつ二人の関係性の感じ方も変わるようなエンディングに面白さがあった。

新潮版の「夫婦善哉」には表題作の他に5作の短編が収録されていて、皆どれも面白かったとの意見。それぞれに好きな作品も違っていた。

私小説のように、作家本人の経験に基づいているのであろう話ばかりで、全ての作品を通して織田作之助という人物を感じることができた。

夫婦というテーマで描かれた作品は数多く存在するが、ここまでとことんダメ男もなかなかいないのではなかろうかと思わせる柳吉に、一度恋をして家族になると何だかんだと支えてしまうもんなのか?と考えつつも、こんな男即離婚!と思ってしまう結婚3年目の私はまだまだ甘いようですね。

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