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【第242回 開催レポート】「結婚の代償」ダイアナ・パーマー著 津田藤子訳

開催日:2024年11月23日
課題図書:「結婚の代償」ダイアナ・パーマー著 津田藤子訳

もうすぐ250回を迎える赤メガネの会では古今東西の様々な文学作品を読み、語り合ってきました。この会の素晴らしい点のひとつは、書店で自分では手を伸ばさない本と出会えることだと思います。課題図書として読み切り、そして赤メガネのメンバーたちと語り合うことで、自分の読書記憶として収めていく。そういう意味では今回の課題図書は、ずっと書店で気になっていた「一体、あの棚の本は誰が読んでいるのか・・?」という本に触れる絶好の機会。それぞれが相当な数の本を読んできているメンバーたちもハーレクイーン・ロマンス小説を読むのは今回が初めてでした。

■あらすじ
身寄りを失くしたテスは大牧場の家政婦として働くことになったが、牧場主のキャグは何故か自分には冷たい。彼のためにせっかく作ったバースデーケーキは台無しにされ、彼のペットの蛇には巻きつかれ、もう牧場を出ていくことを考える。しかしキャグから美しい宝石やドレスをプレゼントされ、会話を重ねるうちに次第に二人の距離は縮まっていく。・・(省略)・・ともかく最後には二人は結ばれ、ハッピーエンドを迎える。
(1冊読んだだけですが、どうもハーレクイン・ロマンスのあらすじは大体こういうパターンの様です。)

まずはページ数も150ページ程度と短く、文体も簡潔、ともかく読みやすい。いや読みやす過ぎて、物語の印象が残らないほど。テスとキャグの間に障害となる出来事が次々と起きるのだが、足早にどこにも引っ掛からずに通り過ぎていく感じ。ミステリー小説のような「読解」やSF小説のような「未知」を楽しむのではなく、逆に読むことに極力ストレスが無い「安心して読めること」がこのロマンス小説というジャンルの特徴ということに驚き。そして読者は恋愛に未熟な主人公テスに自分を置き換えて、恋のもどかしさを追体験し、必ずハッピーエンドに帰結する、と考えればハマる読者がいるのもわかる気がしました。今回、ハーレクインをより深く理解するために副読本として読んだ「ハーレクイン・ロマンス 恋愛小説から読むアメリカ(尾崎 俊介)」によれば、ハーレクイン小説には黄金律のような物語のパターン/ルールがあり、登場人物や背景にはバリエーションはあるが、基本的に同じストーリーが繰り返し作られているとのこと。でもこれはワンパターンではなく、作品/物語のクオリティの均一化という一種の発明で、想定外の物語に発展しないことで得られる大いなる安心感と、すでに知っている物語だからこそリラックスして感情移入して楽しむことができる、という読書体験のひとつのカタチなんだと思います。余談ですがこの副読本には、ハーレクイン・ロマンス小説が生まれた背景やそれを支える女性読者と作家陣、イギリスやアメリカの社会の状況などが書かれていてとても勉強になりました(レコメンド!)。これまで読んできた本とのお作法の違いに混乱したメンバーもいれば、意外と共感できる点もあって面白かったと感じるメンバーも。そして男性メンバーは完全にターゲット外であることを認識しながらも、はじめてのロマンス小説の読書体験を楽しめました。

ところで、本作の「結婚の代償」というのは一体何だったんでしょうか?

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