![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/171753843/rectangle_large_type_2_552526d03ed8cac9dd4b036b3350d2b7.png?width=1200)
完成度が高く美しく面白い!でも…な「紅夢」
「紅いコーリャン」「ハイジャック」「菊豆」に続くチャン・イ―モウ監督×コン・リーによる1991年製作の歴史ドラマです。
製作総指揮が「悲情城市」のホウ・シャオシェンで第48回ベネチア国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞した傑作をやっと観ました。
![](https://assets.st-note.com/img/1737893809-oK3zdjg6sr1MSxPAD4wVOcbG.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1737893890-ySVf45Ir3YA7ZQ8KkRicG1Ng.jpg?width=1200)
物語は
父の死で大学を中退し、大富豪の第4夫人となったスンリエン。彼女はそこで閉ざされた世界に生きる3人の妻たちの姿に絶望する。彼女についた使用人の娘は富豪の主人に寵愛されていて、自分が第4夫人になれなかったことを不満に思いスンリエンに反抗的だった。第3夫人は嫉妬心からか夜中に具合が悪くなったと騒ぎ主人を呼び立て、早朝には元役者で培った歌声を披露し睡眠を妨げる。第1夫人はもはや諦めの境地でしきたりだけを守り続け、第2夫人はスンリエンに優しく接する裏で使用人の娘とスンリエンに呪いをかけていたりする。
主人の心を独占しようとしたスンリエンは妊娠したと偽り、そのことがやがて多くの死人を出すことになり…
100年前の中国の大奥だった!
4人の夫人と一人の使用人の娘の主人をめぐる愛憎劇は日本人にとってみれば「大奥」でよくあるお話である新鮮味がないといえばないです。
それでも観ていられるのは美術・撮影の美しさやキャストの演技の細やかさにあると思います。
シンメトリーな映像を多用し、赤を印象的に使い、チャン・イ―モウの演出はさえわたり、俗っぽいお話でも重厚感ある仕上がりです。
![](https://assets.st-note.com/img/1737893906-sN1tORC5K9xuQlwzYvgVHE8c.jpg?width=1200)
コン・リーが一番美しい時代の作品だとは思うけど…
ビジュアル的にはコン・リーのピークとも言える絶対的な美しさだけど、とにかく彼女演じるスンリエンの性格が悪くて、彼女のせいで負のスパイラルが起きてラストはバッドエンドで終わります。
ヒロイン像は「菊豆」と同じように貧しさ故に嫁ぎますが、「菊豆」では主人がサディストで夜な夜なSMプレイで責め続けられていて生き延びるためにおいで養子の男をたらしこみますが、このスンリエンは仕事もしなくていいし、主人の夜の相手を務めるほかはほぼほぼ自由に生きられる身分。なのに周りの人々を恨んで辛くあたりまくるという性格の悪さで全く好きになれません。
周囲の人間もみんな腹黒く、嫌なヤツばかりなのもしんどいです。この作品には「紅いコーリャン」や「菊豆」にいはあった切実さがなくなっている気がします。
この作品に比べて「菊豆」にはエロスというごちそうがある分、ずっと楽しめました。
映画の予算規模からいっても「菊豆」よりかなりビッグバジェットになっていると思われるし、完成度も高いですが、どちらが魅力的かと聞かれれば断然「菊豆」です。
チャン・イ―モウが後にハリウッドで薄っぺらい活劇を作るようになるのもなんかわかる気がする一本でした。