
ホラー映画好きなパンクバンドの映画なのになぜかかわいらしい「ザ・ゲスイドウズ」
「みーんな、宇宙人。」や「悪魔がはらわたでいけにえで私」の宇賀那健一監督の新作がなんとシネコンで上映していてびっくりでした。そりゃあもう初日に観に行くってもんです。
物語は
人気のないパンクバンドのザ・ゲスイドウズはマネージャーから田舎へ行って曲を作れと最後のチャンスを与えられ、高崎の田舎町で農家の手伝いをしながら新曲作りにいそしむことに。ボーカルのハナコは26歳の誕生日を迎え、あと1年したらジム・モリソンやカート・コバーンみたいに死ぬと決め、死ぬ前にブレイクすることを決意し死にもの狂いで曲作りに打ち込む。
メンバーは地元の女の子を好きになったり、おはぎにハマったりするなか、ハナコは犬のジョン・ケージの声に導かれて作詞する。
渾身の新曲は世界中で注目されるようになり…
ホラー好き要素がいいスパイスに!
ハナコはかなりヘビーなホラー映画好きで曲のコンセプトで「2000人の狂人」のハーシェル・ゴードン・ルイスにまで言及するし、アルバムタイトルが「悪魔の毒々モンスター」の原題にちなんでいたりして、ホラー好きの自分にはかなり刺さりました。
しかも「悪魔の毒々モンスター」のロイド・カウフマン監督まで出演していたりして、まったくどこまでホラー愛を詰め込むのかという感じ。
バンドメンバーがチャーミング
パンクバンドというのにみんないいやつすぎて楽しいです。
ゴールデンボンバーの喜矢武豊さん演じるベース担当はなぜかくるくるパーマのヅラをかぶっていて「ベイビーわるきゅーれ」の伊澤彩織さん演じる地元の金髪娘にひとめぼれするし、多国籍バンドALIのボーカリスト今村玲央さん演じるギター担当は地元のばあちゃんの差し入れで食べたおはぎにハマるし、モヒカンの白人ドラマーは料理上手という意外性だらけのメンバーたち。
パンクなのにみんな礼儀正しかったりするのも好印象でした。
脇役たちも魅力的
マネージャー役が「辰巳」の主演で株を上げた遠藤雄弥さんで、いい加減な対応のマネージャーをひょうひょうと演じていて楽しそう。
犬のジョン・ケージの声が斉藤工だったり、ハナコから生まれる新曲のカセットテープの声がマキタスポーツだったりするのも楽しいです。
新曲が普通に名曲!
最初に出てくるバンドのライブシーンではパンク通り越してノイズしかない演奏と絶叫ばかりのボーカルに大丈夫か?と思わされますが、高崎の田舎で生み出す新曲はメロディアスな青春パンクで普通にいい曲でした。
サントラ出てたら欲しくなるレベルで好きになりました。
宇賀那ワールドのひとつの頂点かも
「黒い暴動♥」の田舎、「サラバ静寂」の音楽性、「魔法少年☆ワイルドバージン」の笑い、「転がるビー玉」の青春、「異物」の異物(今回はカセットテープ)、「悪魔がはらわたでいけにえで私」のホラー風味などこれまでの主要な宇賀那作品の要素が盛り込まれていて集大成的な感じもありました。
個人的にはこれが一番好きな宇賀那作品かも。