衝撃のやくざホラーを35ミリフィルム上映で観るという贅沢「極道恐怖大劇場牛頭GOZU」
三池崇史監督が2003年にオリジナルビデオ作品として製作し、第56回カンヌ国際映画祭の監督週間に正式出品され話題をよんだ衝撃のやくざホラー「牛頭」。
製作当時は映画祭でしか上映されることがなかったこの作品が製作から21年後ようやく劇場公開!しかも35ミリフィルムでの限定上映です。
物語の舞台名古屋のシネマスコーレで観ました。
物語は
字廻組の南は親分からの命令で最近奇行が目立つ兄貴分尾崎を名古屋のやくざ処分場へ連れて行くよう命じられる。
道中、尾崎の奇行で事故を起こし、尾崎は死んでまう。動揺した南は組へ連絡をし喫茶店で落ち着こうするが、コーヒーのサービスの茶わん蒸しに当たりトイレに籠っていると、車にいたはずの尾崎が姿を消してしまい…
改めて観てみると…
ストーリー自体はすごく面白そうな作品でした。
冒頭の尾崎が喫茶店でチワワを見てあれはやくざを殺すために仕込まれたやくざドッグだからやられる前に始末すると犬を虐殺する場面から圧倒され、そのまま129分、異常な世界が続きます。
こんな常軌を逸した物語にもかかわらず昭和を代表する名優たちが脇役で出演していました。
異色なところでは吉本新喜劇の昭和のスター、木村進と間寛平がセットで登場したり、名古屋のヤクザに川地民夫がいたり、米屋が長門裕之だったり、やくざ処分場には丹波哲郎がいたりします。
そのくせ主人公が誰やねんという曽根英樹だったりもします。
そもそもこの作品は…
「仁義なき戦い」などに出演している俳優曽根晴美がプロデューサーで息子の曽根英樹を売り出すために製作された作品でした。
その曽根晴美自身も宿屋の異常な姉弟の弟役で怪演していて、曽根晴美の出演作品で一番インパクトある役になっていたりします。
名古屋が舞台と言いつつも…
名古屋が舞台という印象でしたが改めて観ると、名古屋に到着する前に津島のあたりでずっとごちゃごちゃやっていて、たぶん名古屋なのは最後のやくざ処分場くらいだと思われます。
インパクトある場面がいっぱい
オープニングのやくざドッグから名古屋に向かう途中のやくざカーとか尾崎の妄想が面白すぎます。
そのあとの旅館の姉弟の異常さ。中年の姉の母乳を牛乳瓶につめていたり、弟は霊媒ができると鞭でビシビシいたぶったり、火野正平は謎に顔が半分白塗りで体質というわりに場面場面ですごく白が薄くなっていたり…
牛頭を演じていたのは…
後半唐突に登場する牛頭を演じていたのは映画批評家の塩田時敏さん。三池作品にはたびたび出演していて顔出しなしだけど出演を依頼され、牛頭役はたった1日の撮影だったとか。
トラウマ級のあのシーン!
内容的にはハチャメチャでも興味の尽きない見せ場だらけの作品で終盤の吉野公佳から哀川翔が転生してくるシーンを超える転生シーンはいまだに観たことありません。
哀川翔がこんな滅茶苦茶なシーンを演じているのって今となっては奇跡ですが、こんな役も難なくやってのけているのはやっぱり同じ三池監督の「DEAD OR ALIVE」シリーズでありえないようなシーンを演じ続けてきたからでしょうか。
三池監督は2009年の「ヤッターマン」まではすごく勢いがありましたが、「テラフォーマーズ」や「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第1章」の失敗あたりで世間からの評価を下げてしまった印象。
最近はテレビの仕事も多くなっていますが、またこんな無茶苦茶な映画を作って欲しいものです。