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当時の衛星テレビ中継の裏側が克明に描かれているのも興味深い「セプテンバー5」

1972年のミュンヘンオリンピックの選手村で起きたテロ事件をアメリカの放送局ABCのスタッフ目線で描く実録映画「セプテンバー5」。事件自体はスピルバーグの「ミュンヘン」でも描かれているので知っているはずですが、最後まで手に汗握る実録映画になっていました。

テレビの裏側のディテールが凄かった!

物語は

西ドイツに派遣されたミュンヘンオリンピックの中継を担当するテレビスタッフが早朝から放送のスタンバイをしていると選手村の方から銃声が聞こえる。通訳を介して情報を収集すると選手村でイスラエルチームが人質となるテロ事件が発生していると判明。
スポーツ中継班ながら彼らはテロ事件を生中継すると決定し、スタッフたちはそれぞれの現場を中継するために知恵を絞る。そして、なんとか生中継にこぎつけるも警察の突入が中継によって犯人にも筒抜けとなり作戦が失敗に終わる事態に。さらに人質は空港へ連れていかれ新たな悲劇が起こり…

この映画の見どころはテレビ中継の裏側

偶然なのかわざとぶつけたのかわかりませんが現在「ショウタイムセブン」というテロ事件を生放送する日本映画も公開しています。
その作品ではテレビの生放送の様子がかなり適当に描かれていましたが、この作品はそこまで見せるかというほど衛星中継の裏側をしっかりと見せてくれていました。
ピーター・サースガード演じるたぶん現地プロデューサーは電話で衛星回線の時間のやりとりのライバル局CBSと交渉します。
そうやって中継時間を確保しつつ、中継スタッフはカメラを建物の屋上に移動しながら選手村の撮影体制を整えます。
リポーターは選手村への出入りがシャットアウトされる前に現場へ出向くし、閉鎖後の撮影テープは選手になりすましたスタッフが身体にフィルム缶を巻き付けて現場に入り込みます。
音声スタッフは電話の声を拾うためにマイクを電話の受話器にハンダづけするし、生つけテロップはそれ専用の女性カメラマンが自分で文字を組んで撮影します。
回収された撮影テープは選手になりすまして持ち出したスタッフから現像ラボの女性が受け取り現像し編集へ。
ディレクターはその映像を観て番組のオープニングの映像を決定します。
通役の女性は選手に関する資料を整理し、人質が誰かと電話で裏取りまでする働きぶり。特に通訳スタッフの女性の仕事は多彩でドイツの放送局の中継内容のチェックから警察無線のやり取りを聞いて情報収集したりも。
生放送中にはVTR担当者が手動でVTRのスロー再生する姿まで見せます。
ちゃんと食事の手配をするスタッフまでいてみんな仕事出来過ぎるやろ!というくらい有能な働きぶりです。
でもわざわざドイツまで衛星中継に派遣されているくらいだから有能なのは当然なのかも。
そういう事細かなディテールの再現が本当にすごいです。
去年話題になった「悪魔と夜ふかし」も同じくらいの時代のテレビ番組をモチーフにしていますがあっちはテレビの裏側が雰囲気だけ再現されていて細部はかなりでたらめでした。
だからこそ、この作品のディテールの細かさに驚きました。
犯人の呼び方をどうするという相談とか犯人が人質を殺害するような場面になったらどうすべきかとかそういう相談も挟まれたり、そういうディテールを描く作品だからこそ、リアルな人間ドラマも描けたのかなと思う作品でした。

追記

スピルバーグ監督の「ミュンヘン」を見直したら、テロ事件は冒頭に少しあるだけで、本編はイスラエルがモサドを使って黒い9月に報復する話でした。あのテロのあとにこんな展開があったとは!

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