
まだ2月上旬だけど今年の個人的ベスト1はたぶんこれで揺るぎない「雪子a.k.a.」
「スーパーミキンコリニスタ」の草場尚也監督の初商業作品で山下リオさん主演の「雪子a.k.a.」を名古屋シネマスコーレで草場監督と占部房子さんの舞台挨拶付きで観てきました。
正直、ここまでドハマりできる映画だとは思ってませんでした。
物語は
小学4年生の担任をしている29歳の吉村雪子は趣味でヒップホップを始めたばかり。仕事にも恋人にも自信を持てない雪子はいろいろと悩みを抱えていて、週末にラッパーをしているときだけが自分をさらけだせる場だった。
そんな中、友人たちは結婚を決め、恋人からも結婚を迫られ、仕事でも不登校児との接し方に頭を悩ませる日々。ある日、先輩の大迫先生が隣町でたばこを吸っている姿を見て彼女に本音をぶつけることで吹っ切れた雪子は故郷長崎で行われるラップバトルの地方予選に出場し…

理想の人間関係が描かれる良質なドラマだった!
29歳の小学校教師がヒップホップをするという発想は監督がヒップホップが好きで教員免許を持っていたところから。
それを「BISHU 世界でいちばん優しい服」の鈴木史子さんが脚本に落とし込み、女性としてのリアリティを加えたことでこの作品がリアルで生き生きした物語になっていました。
悪者が全然出てこないお話と批判する人もいるかもしれませんが、この作品は人を多面的に描くことに留意していたということで単純な悪人が出てこないのはそのせい。
よくあるドラマなら親の一部をモンスターペアレンツにしたり、同僚教師や先輩教師を悪辣に描くことも多いですが、この作品ではそのキャラクターも他者を一方的に非難することなく相手の身になってしっかりと理解し合います。
学校に宿題のことで文句を言いに来た生徒の母もやり方を工夫して宿題に協力する姿が描かれます。
ヒップホップでラップバトルする相手も単にディスリ合戦するわけではなく相手のこともリスペクトしてみせます。
個性豊かな同僚教師も自信のない雪子のいいところをしっかりと見ていて、そこを褒めます。
そんな感じで人一番努力する雪子はヒップホップは下手だけど、それをやることで教師としても一つ突き抜けることが出来るようになり、恋人との関係にもある変化がもたらせられます。
舞台挨拶では

占部房子さんは監督の現場の空気作りの素晴らしさを絶賛していました。具体的に占部さんは子どもたちをリクリエーションする時間があって役作りにとてもいい経験ができたと。
舞台挨拶には生徒役で出演していた名古屋在住の子役も飛び入り参加し、舞台挨拶をほんわかとさせていました。
この舞台挨拶の空気感を見ればこの作品のこの感じはこの監督の信念が貫かれていたからこそなんだと実感出来ました。
山下リオさんの演技が素晴らしすぎた!

個人的にはこういう映画が大好きで近い感覚を持ったのは「ブータン 山の教室」くらいです。
監督の演出も素晴らしいですが主演の山下リオさんの演技がまた本当に神がかっていました。山下さんは深夜ドラマでたまに主演することはありましたが、だいたいは脇役に回ることが多く、最近ではバイプレーヤーとしての印象が強かったですが、今回の主演ぶりを見て、やっぱり稀有な魅力を持った女優だったことを実感。
スラリとした肉体と大きな瞳、それでいて控えめな佇まいも似合うというのは本当にすごいです。
「サイタマノラッパー」や「ベイビーわるきゅーれ」をドラマ化したテレ東あたりでこの作品を連ドラにしてもらえないかなあと妄想してしまいました。