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ドキュメンタリー映画『ミャンマー・ダイアリーズ』ネタバレ感想/聞こえますか、私たちの声が

2022年制作(オランダ、ミャンマー、ノルウェー)
英題:Myanmar Diaries
監督、制作:ミャンマー・フィルム・コレクティブ
配給:E.x.N
ドキュメンタリーレビュー記事一覧

2021年2月1日のミャンマーの軍事クーデターから4年が経つ。状況悪化の一途を辿るミャンマーでは、2024年時点で国内避難民が300万人以上にのぼるという。(以下記事参照)

そんななか、2022年に日本で公開されたドキュメンタリー映画『ミャンマー・ダイアリーズ』のチャリティー配信が始まった。劇場公開時、見逃していたのでこの機に鑑賞。

軍事クーデターについての大まかな流れは、『夜明けへの道』のレビューでも触れている。

とはいえ、あくまで個人の見解であるので、軍事クーデターの背景については然るべき情報源を参照することをお勧めする。


『ミャンマー・ダイアリーズ』で映し出された、ミャンマーの現状ではなく、映像作品としての『ミャンマー・ダイアリーズ』について、今回は見ていきたい。

『夜明けへの道』のレビューで、私は散々、編集があまり良いとは思えないと述べた。そのコミカルさが、現状の悲惨さとギャップがありすぎて困惑したのだ。言ってしまえば、ノイズに感じた。

本作は、ドキュメンタリーとフィクションを織り交ぜた構成になっており、アニメーションが挿入されることも。

匿名の映像作家の映像をまとめた本作は、それぞれが置かれた状況も違えば、その状況を伝える方法も違う。見やすいドキュメンタリーかと問われるとどうかな、というのが正直なところ。ノイズに思える演出もあった。

そのような自分の好みとの相性はまず置いておいて。そもそも、ただ撮影した映像を映し出すだけがドキュメンタリーではない。作り手が取捨選択した映像を、作り手なりの編集で届けたって良いのだ。

現実が悲惨であればあるほど、アニメーション等を用いた演出はどこかちくはぐで、不謹慎だと私自身が思っていたことにふと気づかされたのである。

勿論、言ってやったぜ!とでも言いたげなあざとい、自己主張の強い演出は好きではない。名前をあげて申し訳ないが『パンケーキを毒味する』は酷かった。興醒めどころか、視聴者を馬鹿にしているのかとすら思った。 

『ミャンマー・ダイアリーズ』において、演出がうまくいっているとはあまり思わないが、切実で祈りや希望を感じられるものであった。そう思うと、『夜明けへの道』においてもそうなのかもしれない。

「聞こえますか?私たちの声が」

『ミャンマー・ダイアリーズ』では、世界に、そして政府に、そう問いかける。その切実で強い訴えは、民主化政権を経験したからこそ、2度と戻る訳にはいかない。この世代で終わらせるというミャンマー国民の覚悟といえる。

2020年代になって、ここまで世界が逆行するとは私自身も思っていなかった。世界中で人々が声を上げている。その声を聞こうとし続けたい、一方で私も声を上げていきたい。

その強い思いと同時に私を含め皆疲弊しつつあることも感じている。そのことが辛い。


見出し画像(C)The Myanmar Film Collective

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