『タン・ソイ 美しき殺し屋』『ハイ・フォン: ママは元ギャング』ネタバレ感想/ベトナム発アクション
Netflixにて配信されているベトナム映画『タン・ソイ 美しき殺し屋』『ハイ・フォン: ママは元ギャング』(以下『タン・ソイ』、『ハイ・フォン』と省略して表記する)。
『ハイ・フォン』が先に制作・公開され、その人気を経て前日譚として制作されたのが『タン・ソイ』となる。日本ではどちらもNetflixにて配信されているが、Netflixオリジナル映画なのは『タン・ソイ』のみ。
『タン・ソイ』→『ハイ・フォン』の順で見たのでその順番で紹介していく。
タン・ソイ 美しき殺し屋
監督を務めるヴェロニカ・ンゴー(Veronica Ngo)は前作『ハイ・フォン』で主演を務め、本作でも監督出演を兼ね、ベトナムを代表する女優の一人である。
『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』や『オールドガード』に出演し、ハリウッド進出もしている。
さて、映画について。幼いタン・ソイは母親と2人で暮らしている。貧しく、学校にまともに行けず、母親は食うために体を売っている。
ある日、母親の留守中に客の男がやってきてタン・ソイを襲う。必死に抵抗するも力に敵わず…そこに母親がやってきて男に殴りつけるが、力では敵うわけなく殴り返され殺されてしまう。幼いタン・ソイは包丁を持ち男を殺す。血まみれの手に呆然としつつも我にかえり、家族を失ったタン・ソイは1人都市へと向かい、底辺の暮らしで生き繋いでいく。
成長したタン・ソイは男たちに襲われそうになっているところをある女性・ジャクリーンに助けられる。彼女に連れられていくとそこには同じくらいの若い年頃の女の子が2人いた。
なめられないように、襲われないように、強くなるしかないと女の子2人とジャクリーンに徹底的に鍛えられるタン・ソイ。しぶとくしがみつき殴られても立ち上がり強くなっていくと共に次第に3人の女の子の間に連帯感が生まれてくる。
タン・ソイ以外の2人もお金のためや人攫いによって若くして売春婦をやらされていたといった境遇をもつ。そんな2人もジャクリーンによって救われたという。
ジャクリーンは、田舎などから攫った若い女の子を売春婦として働かせ搾取しているギャングたちを止めて女の子たちを救いたいという。
その志のため、3人は協力してミッションに挑む。しかし、あるミッションで1人が亡くなってから少しずつジャクリーンに対せる不信感が現れてくる。それもそのはず、ジャクリーンは夫と息子を殺された復讐のためにギャングを狙い、ギャングの頭を殺した後は自分がその座につくつもりでいた。
ジャクリーンにとって3人の女の子たちは自分の復讐のための手駒でしかなかった。それまでの流れはまるで少しシリアスな『チャーリーズ・エンジェル』のようで、好感であったがラストの展開でこちらとしても驚きであった。
また、タン・ソイは、人を殺すことに対して恐怖より嬉しさを感じたと言っている場面もあり、彼女が闘う理由は生存本能のようなものであり、大義は関係ないようである。そのキャラクターが次の『ハイ・フォン』ではかなり雑な扱いになっていてそこもズコッとしてしまうところではある。全体的に粗はあるが、アクションシーンはこだわりが感じられて良かった。
ハイ・フォン: ママは元ギャング
クラブで用心棒をしていたハイ・フォンは妊娠し、仕事を辞め田舎に引っ越してきた。田舎でも借金の取り立ての仕事をしており、娘のマイは借金取りの娘、父親がいないということでいじめられていた。
それでもマイを大切に思い、自分は学がないから学んでほしいと思うハイ・フォン。ある日、マイが人攫いに攫われてしまう。ハイ・フォンは必死に追いかけるも見失ってしまう…。
引退し、ホーチミンの街を去ったハイ・フォンであったが娘を助けるため再びホーチミンへ。警察はあてにならず、昔の仲間などを頼り情報を集める。街を牛耳っていたのは刑務所から出所し瞬く間にトップに上り詰めたタン・ソイであった。
ここで前日譚である『タン・ソイ』との繋がりが描かれるわけである。『タン・ソイ』のラストでは刑務所でひたすら体を鍛え、年月を経て出所した姿で終わっている。
そもそも、『タン・ソイ』でジャクリーンを演じていたヴェロニカ・ンゴーが本作でハイ・フォン役を演じている時点で混乱ではあるが…そこら辺はまあ目をつむるとしよう。
殴られても立ち上がり食らいつく、強いというよりしぶとい母。前作のキャラクターはいずこにと思うようなただ強いマッチョなタン・ソイとアクション以外の見応えがない上に、母娘の感動と、たたみかける展開はしらける一歩手前…。
個人的には『タン・ソイ』の方が面白かったが、戦う母好きには『ハイ・フォン』も良いだろう。