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年間ベスト10〜2020〜

2020年の年間ベストまとめ。
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年間ベスト

①コロンバス

無機質な建物も君の吸い寄せられような瞳に吸い寄せられて、息づいて見えてくる。人々の営みが建物を息づかせ、君と共に見るから違って見える。心の中にあったわだかまりが少しずつ溶けていき前に進んでいく。心地よい余韻に包まれる美しい映画。

②オリ・マキの人生で最も幸せな日

何も求めてないのにどうして失望するの。勝手に期待した人が失望してもあなたのせいじゃない。オリ・マキの人生は彼のもので、期待に応える必要なんてない。自分の居場所に気づき貫くことは難しい。だから幸せになりたいと思う。幸せを見失ってしまうから。

③名もなき生涯

英雄になりたかったわけでも、ヒトラーに、世界に反抗したかったわけでもない。神に祈り、妻と笑い合って、作物の収穫をし、日常を重ねていく。それだけで十分だったのだ。自分が正しいと思えないことは出来ない。一人の男のたった一つの信念の物語。

④マーティン・エデン

貧困の中で生まれ育った青年が上流世界を目にし、文学に出会い、純粋なまでの恋心と夢を活力にもがく。絶望し、足掻き、成功を手にするも、どこまでもうまらない現実がそこにある。その狭間で揺れる主人公を演じたルカ・マリネッリに拍手。圧巻の演技!

貧困の中で身を粉にして働きながら本を読み、詩を書き…野心と活力にみなぎるルカ・マリネッリの瞳を見ていると、何故か「太陽がいっぱい」のアラン・ドロンが重なって見えた。アラン・ドロンも上流階級に憧れ足掻く青年がよく似合ってたな、と。

⑤異端の鳥

人間という生物が備え持つ残酷性、醜さを隠さず、ただ醜く生きる生ける屍となった人間ののおぞましさをこれでもかと見せつけられ、傍観者であった少年もこの世界で生きていく術を身につけてしまう。人は尊厳を奪われずして尊厳を手放す瞬間がある。異様な説得力……。

⑥ある画家の数奇な運命

⑦鵞鳥湖の夜

抗争に巻き込まれ、追われる身となった一人の男。妻を待っていた男の前に現れた謎の女。鵞鳥湖周辺のレトロでごちゃついた街で行き詰まる男と女。街を照らすネオン。闇夜に飛び散る血飛沫。銃音。エモーショナルでハイセンスなチャイニーズノワールに酔いしれた。

⑧LETO-レト-

共産主義の統制下にあった80年代のレニングラードを舞台に西側の音楽に憧れた若者の青春ムービー。もうとにかく遊び心のあるシーンがエモーショナルで素晴らしい!エネルギーをもてあました若者達を描きながら主軸においているのは三人の若者というミニマムさも絶妙。

⑨この世界に残されて

戦争により家族を亡くし、残された者としてただ生きているだけの2人が出会い、寄り添い合い、少しずつ生きていこうとする。しかし、世間はそんな2人を受け入れはしない。2人に焦点を絞り描くことで切なくて、くすぐったいほど優しい感情が伝わってくる。

多くを語るわけではないけれどそれぞれのトラウマ、2人が出会い感情が変化していく様を優しく描く姿勢がとても好きだったなあ。そしてアルド役のhajduk károlyの寂しげな表情であったり、戸惑いながらも拒絶をしない優しさだったり、全てがとても良かった。うん。いい映画です。

⑩ホモ・サピエンスの涙

ホモ・サピエンスの涙が散り積もって世界を作り出し、そこに愛がある。リビングトリロジーから続くお馴染みの作風ではあるが今回は語り手の存在があったり、笑いよりも悲しみが多くほろ苦さが強い印象。どうしようもない人間たちへの優しい眼差しは変わらず。素晴らしい。

CGではなく、オリジナルのスタジオで長い年月をかけて映画を作り上げる作風のロイ・アンダーソン。過去作は円盤での鑑賞だった故、スクリーンで見た美しさに感動した。そしてどうしようもない人間の悲しみも一種のタブーと取られそうな所まで織り交ぜてしまう大胆さ!好きです。


俳優賞

マリアーナ・ディ・ジローラモ『エマ、愛の罠』

虎視眈々と獲物を狙う目つき、過激な行動、そして大胆でエモーショナルなダンス。ミステリアスなニューヒロイン エマに人々は魅了され虜になっていく。そんな彼女が仕掛けたきわめて不道徳な“愛の罠”に何たること…!と骨抜きにされてしまう。お見事!

森崎ウィン『妖怪人間ベラ』

桜田ひよりちゃんの狂演っぷりの可愛さに悶絶するも即退場にしょぼん。そこから始まる森崎ウィン劇場に引き込まれ、お腹いっぱいになるほど森崎ウィンを堪能しタイトルなんだたっけ?という所でラストのEmmaちゃんが美しいねえ。


監督賞

ムニア・メドゥール『パピチャ、未来へのランウェイ』

“服装の問題じゃない、偏見が女たちを殺す。ここが私の国、たたかう必要があるだけ”

好きな服を着て好きな音楽を聴くことが罪である。正しい服装をすべき。そんな抑制下で自分なりに闘おうとしている女子大生たち。苦しかった。

命の危険を顧みず自分の権利を訴える彼女らの強さ、その強さの前に立ちはだかる偏見と社会。父親や男兄弟の言いなりで若くして結婚させられ、家庭に入ったら夫の言いなり。働くにも男たちの許可がいる。自立することを許さない社会体制。住む場所を変えたところで偏見は変わらない。

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