年間ベスト10〜2023〜
①aftersun/アフターサン
自分がその年になってみてわかる、あの時の大人にも、親にもなりきれていない不安げな父の背中。大好きで、求めている言葉が欲しくて。でも嫌われたくなくて1人でぽつんといじける寂しさ。わかって欲しかったけれど、それ以上に分かってあげたかった。
②シャドウプレイ完全版
③兎たちの暴走
あなたのためなら何だってする。
父の再婚相手とうまくいっていないシュイ・チンの元に、生まれて間もない頃出て行った実母チュー・ティンが戻ってくる。
自分のために戻ってきたわけではない、何か事情があることは薄々分かっていただろう。捨てられたと憎むのでなく、母にとって必要な存在になろうとするシュイ・チンの物分かりの良さと切なさが突き刺さる。
④ミマン
ミマン。日本語で思い浮かぶ漢字は、未満だろうか。韓国語のミマンを辞書で引くと出てきた3つの意味と新たな造語を含めて4つ構成で描かれる。
大きな変化はないが、移りゆく人々のふとした再会や別れ、様々な会話を街並みと共に映し出す。ただ日常を映しているだけなのに、心に染み込んでいく。映画と共に私の物語も繋がって続いていくかのような心地よさ。
⑤白い小船
⑥青春の反抗
⑦ブルー・ムーン
コロナ禍を舞台にした映画は色々出ていたが、その中でも好きな映画であった。(中にはコロナ禍であることを明示する必要性のない映画もあり、それにはつい小言を言ってしまう)
妻との別居を隠している息子、コンビニで働くもうまくいっていない娘。そしてシングルマザーの母親。皆それぞれ何かを抱えているが言えずにいる。特に娘の社会的に中途半端な自分の立場、セクハラ気味のコンビニの店長とうまくいかない日常風景が良かった。でも何より良かったのは出会い系アプリを巡るリアルさかも……。
⑧行く先/後世
小説家を目指しつつも何にもなれていない、うだうだした男が恋に落ちる。彼女のために…と奮闘するも高すぎるプライドはなかなか折れず、金に困ると平気で盗みもするくせに親や彼女の前では大丈夫なふり。
もっと上手くやれよと思いつつも実際問題そんな上手くできるならこんな状況にはなってないわけで。学生の女側の葛藤、一緒に暮らし始めたものの…な、すれ違いはリアル。保険金目当てに当たり屋をしてみたり。本当に馬鹿で、そういうことじゃない感が良い。終わりが丸く収まりすぎだがまあまあ。
⑨ガール・ピクチャー
10年代の青春映画から徐々に変わり始めた2020年代。『ブックスマート』で感じたもやりを払拭してくれるような『ガールピクチャー』の登場に私は拍手を送る。
間違って、遠回りして、ぶつかり合って。親友同士のロンコとミンミが思わず喧嘩してしまうシーンがある。怒りのままにそこら辺にあるものをぶちまけてしまったミンミをロンコは駆け出して抱きしめる。何も話さずただ抱きしめるだけ。たったこれだけのシーンでもこの映画が信頼できる映画だということがわかる。
自分に対する苛立ちを相手にぶつけてしまう。自分の不完全さを上手く受け入れられない思春期の少女たちをありのままに受け入れ包み込む優しさが映画全体を通して感じられる。