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ジャニーズ問題 TBS「報道特集」と日本メディアに足りないもの

ヒガシも性加害を知っているのか!?

週刊文春記のジャニーズ追及も15週目となり、今回も秀逸な記事が掲載されてました。

「東山くん、知ってるでしょ」 元オトコ組 土田氏の怒りの告発

という記事です。詳しくは週刊文春をぜひ読んでもらいたいのですが、ヒガシもジャニーズタレントも性加害を見て見ぬふりをしてましたよね? という問題提起です。

大手メディアの弱さ

今回特集したいのは、文春記事ではなくて。
ジャニーズ性加害問題は広く認知された一方で、なぜ大手メディアの追及が甘いのかという問題を考察したいと思います。

大手メディアは問題を単発で報じこそすれ、スクープを出した社はないのではないでようか。ですので、どうにもインパクトが弱い報道が多くある印象です。なぜそれを考察したいのかというと、ジャニーズ事務所の問題を巡っては海外メディアと、日本メディアでは価値観の相違を見ることが出来きてしまうからです。海外メディアは「犯罪」として捉えている一方で、日本メディアには犯罪であるという指摘は少なく、多くはジャニーズ事務所の言う「再発防止策」などを悠長に報道している。

本来は日本メディアの底チカラを見せる意味でも各社が切磋琢磨すべきだと思うからです。


深くジャニーズ問題を理解するために


そこで今回はジャニー喜多川氏の性加害問題、そしてメディアの役割を深く知るための映画2選をご紹介したいと思います。

ジャニーズ問題に関心のあるかた、また報道現場にいるかたはぜひ見るべき映画です。

1つ目は「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」です。

 映画はワインスタイン事件をすっぱ抜いた、調査報道記者の回顧録を原作として作られています。2017年10月。米ニューヨーク・タイムズに、世界を大きく揺り動かすスクープが掲載される。ハリウッドのプロデューサーで、絶対的権力者だったハーベイ・ワインスタインによる性的暴行事件である。記事を書いた2人の女性記者の回顧録が原作だ。



 事件は性被害に遭った女性たちの告発運動「Me Too」に発展し、今も世界中に広がったことは広く知られています。女性2人へのレイプなどで有罪となった米ハリウッドの元大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン被告(67)に量刑を言い渡す公判が11日、ニューヨークの裁判所であり、禁錮23年。 ワインスタイン被告に対しては90人以上が被害を訴えており、裁判では被害を受けたとする女性6人が証言に立った。

同映画では被害女優の一人が本人役で出ていることも話題になりました。アシュレイ・ジャッドに至っては本人役を演じている。

 問題意識を失わず、こつこつと取材先に電話をし、メールを送り、話を聞く。連絡が取れない相手は、直接自宅を訪ねてみるという地道な過程が描かれており。記者から見てもリアルは報道の様子を知ることが出来る映画となっています。業界の大物が部屋に女優を誘いこみ、マッサージをするからと不埒な行為に走るさまは、男女の差こそあれまさにジャニーズ問題と酷似していたことがよくわかります。映画では問題の本質が業界の隠蔽体質にあることが描かれ、ワインスタイン側からの妨害を受けながらも記者が真実を追い求めて奔走するという胸熱映画となっています。


少年への性加害の残酷さ


もう一本が、以前も紹介した「スポットライト」です。

カトリック教会のスキャンダルを2002年、アメリカの新聞「ボストン・グローブ」が、「SPOTLIGHT」というコーナーで告発する記事を書きます。ボストングローブの購読者の半数以上がカトリック教徒という背景のなか、記者がタブーを打ち破りキャンペーン報道まで漕ぎつける様もまた、記者から見たら胸熱な映画となっています。


2002年には、アメリカの有力紙、ボストングローブが、カトリック教会が組織的に聖職者による性的虐待を隠ぺいしていたと報じ、衝撃が広がります。同紙はボストン司教区の教区司祭ジョン・ゲーガン神父が30年にわたる司祭生活の中で、延べ130人もの児童に対する性的虐待を行って訴訟を起こされたこと、カトリック教会はゲーガンに対しなんら効果的な処分を行わず他の教会へ異動させただけで、それが事態を悪化させてきたと、特集を組んで報道した。その後ゲーガンは2002年に禁錮9 - 10年の実刑判決を受けたが

その後、ドイツやアイルランド、オーストラリアなどでも、教会や、教会が運営する学校での性的虐待疑惑が次々と明るみに出たり。アメリカ東部ペンシルベニア州の検察が、州内にあるカトリック教会の聖職者あわせて301人が、およそ70年にわたって1000人を超す未成年者に性的虐待をしていたと、衝撃的な発表まで行われた。そのきっかけとなった世紀のスクープでした。

ジャニーズ事務所問題には、ワインスタイン事件&カソリック事件を併せた醜悪さがある


ジャニーズ性加害問題は、ワインスタイン事件とカソリック性加害事件を2つ合わせたような事件であると分析しました。世界ではこうした問題がどう報じられてきたかをメディア側から見ることができる映画がこの2作品なのです。


報道で見るべきポイント2つ

記者として、この映画では2つの
ポイントに注目します。

①   上司が報道をバックアップしたこと。

スポットライトでは局長が、単発記事ではなくキャンペーンをやれと発破をかけボストングローブがキャンペーン取材を始める経緯が描かれています。シーセイドでは、同じく上司が記事へのゴーサインを出すだけではなく、ワインスタインが何回も圧力をかけえきても「電話切るぞ」と相手にしなかった様子なども描かれています。

②   どちらの報道も初出ではなかった点です。

カソリックの性加害記事はそれまでも単発記事では報じられていました。また、ワインスタインの情報はすでにSNSに出ていたことが映画では描かれています。注目すべきはそれらを新聞が、徹底取材でスクープキャンペーン記事に昇華させている点です。

この2点を踏まえて、日本メディアの考察をしてみたいと思います

TBS「報道特集」を検証してみる



一部ではジャニーズ問題を扱ったTBS報道特集が話題になりました。とうとうTBSが切り込み、特集したとかの評判もありました。

僕も観てみましたが、まず、興味深いシーンだと感じたのが、メディア側の責任のくだりで元朝日新聞でアエラ編集長などを務めた浜田敬子さんがインタビューに応じているシーンです。彼女はこう答えていたんですね。

「(ジャニーズの性加害は)企画会議にあがらなかった。性加害にたいする理解が進んでいなく、芸能ゴシップだと捉えていた」などと語る一方で、「ジャニーズを表紙にすると雑誌が売れた」とも語りました。他部署からクレームが入るので忖度していた的な話もありました。

僕はこのシーンを見て、よく話したなと思うと同時に、恥ずべき感覚だなと思いました。

朝日新聞の雑誌部門とはいえ、その問題意識、感度の鈍さ、情報収集力の低さ、そして浜田敬子さんはプランナーとかビジネスマンではなく、おそらく今でもジャーナリストを肩書きとされているはずです。それなのに、ジャーナリストとは思えない考え方をインタビューでは明かされていました。

ジャニーズ事務所の性加害を見過ごしてきただけではなく、ジャニーズが表紙だと売れたという話も含め、日本メディアの問題点がまさにここにあるのだと感じたわけです。

ジャニーズからおこぼれをもらう新聞社でいいのか



まず1つがジャーナリズム感覚の薄い上司の問題です。報じなかったということは、知らなかった強弁するジュリー社長と同じであり、つまりは無責任主義なのです。

そして雑誌を売る為に記事で勝負するのではなく、ジャニーズを起用するという手法を安易に取る。つまりは自らの出世のために、ジャーナリズムを犠牲にしたともいえ、勝負もしなく自分のことしか考えていない上司が、報道の質を大いに低めているということをよく示しているインタビューだと思いました。

 その後、アエラが変わったのか? というとそういうわけでもなさそうで。定期的にジャニーズが表紙に起用されるのは相変わらず。性加害問題の記事も、私の知る限り「再発防止への課題 ジャニーズ性加害問題でジュリー社長が謝罪」という記事一本が確認できたに止まりました。朝日新聞はボストングローブ記者をインタビューしたり、映画のテーマとなった問題についての報道を行っているにも限らず、組織的に学ぶことが出来ず、それが身になっていないという印象が拭えません。
「朝日新聞はジャニーズ事務所と決別します」、と宣言しても良いくらいなのに、そうはしないわけです。


報道特集の「忖度」



 「報道特集」がジャニーズ問題を取り上げ話題になりましたが、これも通り一遍の特集でしかなく、報道としては本気度は決して高くないと感じました。

同じTBSのbs番組である「報道1930」では、報道特集の数週間早くジャニーズを特集していました。このときの言い訳も本当にダサくて「週刊誌を下にみていた」とかゴチャゴチャ解説をしたりする。でも一方で、性加害問題を追及してきた週刊文春記者をゲストに招くわけでもなく、芸能ライターでお茶を濁そうとする。不思議なことNHKも同じような人選をしており、こうしたところにも大手メディアのつまらないプライドを感じるわけです。

さらに報道特集の駄目だなと思わせる最大のポイントが、ジャニーズ事務所への取材シーンがなかったことです。再発防止チームの記者会見の様子は描かれていますが、こんなのは取材でも何でもありません。ジュリー氏およびジャニーズ事務所への直撃なり突貫取材を行っていないところに、強い忖度の意思を感じました。

不倫を叩くテレビ局がなぜジャニーズ事務所には甘いのか。不倫発覚したらタレントは番組を降板させられるケースも少なくない。本来であれば不倫よりも何百倍も罪が重い性犯罪事案なわけですから、全容解明がなされ再発防止策がまとまるまでは、ジャニーズ事務所との取引を一時停止します、というテレビ局があってもよいはずです。

テレビも、新聞もジャニーズ事務所問題では、記者会見などのトピックスを追うだけの報道がほとんどという状況です。共同通信は積極的に報道したり、特集を試みたりと意地を見せていますが、その他はジャニーズ事務所と差し違える覚悟を持っていないメディアがまだ多い。

一回、目を見開いてシーセイドとスポットライトを見ろと、と提言して今回は終わりたいと思います。。(了)


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