《詩》ベーカリー物語～ふたりぼっちサンド
1枚でいるのは無理だから
2枚で生きていこうと決めたのです
それでもふたりとも寂しがりやだから
あなたに振り向いてほしくて
そっと手にとってほしくて
あなたの好きなものは何だろうって
いつも考えずにはいられないのです
小さな子どものあなたには
鮮やか黄色がたまらない卵がいいでしょう
健康志向の女性には
シャキシャキレタスでお迎えします
おなかを空かせたあなたなら
おまかせカツを入れればボリューム抜群でしょ
おしゃれ好きなあなたのために
とっておきのBLTだってあるんだから
本当はひそかな願いがあるんです
中身だけじゃなくてそれを挟んだパンの私そのものの
おいしさも味わってほしいなと思うけど
そんなわがままは言わないので
いつもそっと優しく手にとってもらえたら
それだけで私は
寂しさが満たされるのです
（にじぐち）