見出し画像

《詩》言った言わない

誰かが投げた言葉のボール
彼は投げたことすら忘れたという
そのボールは
手を離れた瞬間から
速度を上げ 回転を強め
形を変えながら飛び続けた

丸かったはずのボールは
いつしか尖り 鋭さを増し
見えない場所で磨かれていった

 その言葉は相手に届き
受け取ったつもりの相手は
グラブを貫いたトゲに驚いた
そのトゲは皮膚を突き抜け
体内を駆け巡り
心の奥深くに染み渡る

「大丈夫」と言い聞かせても
そのトゲは消えることなく
ただ小さすぎて見えないだけ
証拠もない
それでも 確実に残り続ける

言った言わないの問題は
残った残らない問題なのだ
いつしか消えたことにされても
元に戻らないのに

(にじぐち)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?