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【文豪たちの映画論】寺田寅彦の場合〜器械の活動美
寺田寅彦は映画の中の機械(器械)について、次のように書いている。
「器械の活動美を取り入れたフィルムもあるが、やはりこしらえものは実に空疎でおもしろくない。
たとえば「メトロポリス」に現われる器械などは幼稚で愚鈍で、無意味というよりは不愉快である。
フリッツ・ラング監督『メトロポリス』
これに反して平凡な工場のリアルな器械の映画には実物を見るとはまたちがった深い味がある。
見なれた平凡な器械でも適当に映出されるとそれが別な存在として現われ、実物では見のがしている内容が目に飛び込んで来るのである。」
ダリオ・アルジェント監督『サスペリア PART2』
ダリオ・アルジェント監督『サスペリア』
(寺田寅彦『映画時代』より)
一見すると平凡なものであっても、カメラワークの工夫によっていくらでも非凡なものに変わる。
ダリオ・アルジェントの『サスペリア PART2』におけるエレベーターの動輪や『サスペリア』における印象的な自動ドアのシーンは、寺田が指摘するように、まさしく「別な存在」として、見る者の眼前に現れるのである。