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【エッセイ】青い鳥の尾を追って、赤い鳥の羽に乗って


山嶺の運転

私の住む地域にいると言う赤い鳥が目の前を羽ばたいて行った

それは美しい赤



ある時から野鳥を観察するのが好きになった

そのきっかけをくれたのが、青い鳥

近所の誰もいない背の高い木が生えた屋敷に住み着くオナガたち


私が名付けた、その通称オナガ屋敷では
見た目とは似つかわしく無い汚れた声で鳴くオナガが
その名の通りの長い尾をふわりとさせて飛んでいて

なんて美しいのだろうとひと目で恋に落ちたのだ


それから、私は日常の中で宝探しをする様に
オナガとの出会いの様な素敵な出来事を見つけようと
珍しい鳥を見ては名前を調べる事が癖になっている

そんな私に続くように、息子もボサボサ羽根の灰色の鳥を指差し
あれはヒヨドリだとと言うのがまた嬉しくて
野鳥観察には、ますます熱が入るのだ


山へ行き、そこで出会った人に赤い鳥の話を聞いた
この近辺には、小さな赤い鳥を求めて県外からも大きなカメラを下げてたくさんの人が来ると言う

その日から
私もその赤い鳥、イスカの姿を無意識に探すようになっていた

出会いは意外にも早く突然に
イスカを知ったその日から
たった一週間ほどで、私はその姿を目にしたのだ

ー本当に赤いのね

思わずため息混じりに浸ってしまう

長い間、住み慣れた場所だと言うのにまだ知らないことだらけで

まだ、煌めきは見慣れた世界にもあるのねと少し嬉しくなる



自分の知っている事なんて
たかが、図書館の本棚の一区画でしか無いのだと
こんな出来事がある度に、まざまざと思い知らされるのだ

自分の経験や価値観を詰め込んだ小さな棚
誇れるほどの素晴らしい知識など無いと言うのに

そんな、本棚をいつだって綺麗に整頓しては
必死で守っている

本当はそんな本棚を整頓するだけの毎日から
少し離れたどこかにある新しさを探して止まないと言うのに

足を運ぶ棚はいつも同じ
何度、図書館に来ても
また同じ棚の前で足を止めているように
自分の世界はなかなか広がらない

そんな限られた場所を抜け出し
新しく知らなかった図書館の本棚の前に立ったのは
不器用で小さな冒険をした後だった

そんな自分が少し嬉しくて
ちょっぴり背伸びしている自分も好きだったのを覚えている

あれから何度かその本棚に行くようになり
私の小さな冒険が
新しい何かを見つけようと
また、違う棚に足を運ばせる

それは、オナガが見せてくれた
赤い鳥の様に

前の私なら、到底見つけなかった本を手に取って

いつからか、オナガが教えてくれた世界が私に空を見上げさせる様に

図書館の端に新しく目を光らせる物があるらしい

オナガの尾を追いかけて、イスカの羽に乗り
見惚れた先の何かに新しい世界を思う

akaiki×shiroimi

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