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人生の終わりに帰る場所



ひとりぼっちの惑星への移住計画は、人生の前半戦の片付けに追われ
なかなか進んでいない

でも、自分が思ったよりは早く進んでいる気がする
何かが背中を押してくれている気がするから

それでも、私は見慣れた世界から未だ抜け出せずにいる

身体中を縛り付けている何かを今日も感じているからだ


ー息が出来ないー
ーただ、生きているだけなのに窒息して溺れてしまいそうー

そう、毎日の生活で感じてきた

それから随分と長い間、息がしやすくなる方法を学んできた様に思う

そして知った事は、私が胸の底から新鮮な息を吸って吐いて生きていける場所はきっと限られていると言うこと

毎日、呼吸が浅く
気付けば力んで息が止まっているのは、森へ行く様になってからは
更によくわかる様になった

コンクリートに車の音、電線やら人工物に溢れた地
見たくも聞きたくも無い人の心模様に第二の声
暴きたくも無い嘘
両親の本当を探していた子供時代からの癖が、そんなものを目の当たりにさせる
守られる事がなかった人生で、命を繋ぐ為
自分の身を守る為に備えた生きるためのセンサーも
今では自分を苦しめているのだ

私の息が浅くなる原因はこんなような物の塊


私から見て、普通と言う物が何かと言うのなら
この世界の中でも、リラックス出来て問題なく深い呼吸が出来る事だと思っている

それは言うならば馴染むと言うこと

そんな世界で当たり前のように生きて見たかった

それなのに何十年もここで生きて来て、どんなに頑張っても一向に馴染め無い私がいる

どうしてだろうか?
他の人の様に、ここは自分の居場所と思えるような
そんな、確信めいた物が胸の中にはないのだ


そんな分離した世界で、失うことには随分と慣れ過ぎてしまった
だから、出会う人々とはいつでも振り返り忘れられるように帰り道を確保し
別れを思い向き合っている


ひとりぼっちの惑星の事をよく想像するのだけれど

毎日、誰とも会わず
木々や虫たちに挨拶をして
てんとう虫の背中を撫でる
食器棚に住んでいるおかしな生き物たちが話し相手


小さな小屋の様なタイニーハウスを森の中に建て暮らすのだ

何故か分からないけど、そんな事を考える時はいつも目に浮かぶ
私を待っている場所がある気がして
そこに出会う日に向かい
窒息してしまわないように気をつけながら、どこに行くのか分からないそれ道を不安と共に走っている

ただ、胸の底から優しく息を吸って吐くために


歳もとるだろうから、最期はパタリと死んでしまって誰にも気付かれないのだと思う

それでも良いかなと思っている

小さなお墓の中に何年も閉じ込めらずに形に縛られずに無に帰れるのなら
それもいいかなと

『どうか、大好きな場所で形のないものに帰って行く私を誰も見つけないで』とそう思う


人生で、ほんの少しだけでも
胸の底からごく自然と息を吸って吐けるのなら

人生で、わずかな時間でも
何かを忘れて生きることが出来たなら

人生の荷物の空きスペースに
これ以上何かを詰め込みたいと思う欲望とお別れできるのなら

人生の残りを、生きたいと思わなくちゃと自分に鞭を打たなくて良いのなら

今、ここにある何か
大半の物がきっとひとりぼっちの惑星には無いはずで
今ここに無い、わずかな大切な物がきっとひとりぼっちの惑星にはある気がしている

私は、そのほんの僅かな物の為に多くのものを失って来て
まだまだ、これからも失って行く

ただただ、ふるさとへひとり帰る為だけに


akaiki×shiroimi


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