これからの歯科保健推進への展望 Vol.05
Ep2-4.次の一歩へ~ 踏み出すための専門性を育む~
鳥取で暮らす要介護2 の義父が秋口に肺炎を起こし体調を崩していたのですが、「食育・口腔機能の勉強会」の3 回目を終えた10 月末に、義母より急に口から食べられなくなったとの連絡がありました。電話で詳しく聞いてみると、「口に触るようなつぶつぶの食形態だとすべて吐き出してしまう。流動食のようなものもまずいのか多くは食べてくれない」との状況でした。義母はどうしていいのか分からなくなって感情的にもまいっており、「とりあえずどんな物を調理したらいいか教えてほしい」と訴えてきました。11 月の4 回目の勉強会の内容がそのものズバリ「要介護者への適切な食形
態の提供と食介助のポイントを学ぶ」で、これはすぐに行って実践しなければ! と翌週に鳥取へ帰る手筈を整え、タイムリーにもその間、前座で紹介した講座が栄養士さんとのコラボ事業だったので、栄養士さんに介護食のレシピを幾つかいただき、調理のポイント等を教えてもらうことが出来ました。
さっそく、幾つかの介護食を作り食べてもらったのですが、かなり柔らかい鶏のつくねもミンチが舌に触ると吐き出してしまったので、ミキサーにかけてゼリーで固めたり、トロミ剤でトロミをつけたりしながら摂食可能な形態にしました。最後には、貝柱のムースにかぼちゃのクリームソースをかけた“ まるでフレンチ” のような介護食が出来上がり、美味しそうに完食してくれて嫁の面目躍如でした(^^ゞ
次に口腔ケアですが、元看護師の義母でも最初は「それは勘弁して(-_-;)」という感じでした。しかし、洗面所まで行かずにケアできるよう大阪から持参した手作りケアグッズを使用して、少々リラクゼーションもしてもらいながら口腔ケアを始めると、口腔前庭から出てくる食物残渣を見て、舌が届かないとこのように溜まってしまうことを理解し、口腔ケアの必要性を認識してくれました。それからは毎晩、舌の体操や口腔ケアを二人で頑張って行ってくれていて、開始からわずか2 週間ですが顔色も良くなり少しずつ食べる機能も上がってきているとの知らせをもらい一安心しました。
初めて作った介護食いろいろ
このように、口腔機能と食は切り離せないものです。そして実質的に対象者の必要としている支援を提供するためには栄養士さんや介護者をはじめ他の専門職との協働も欠かせません。歯科専門職が歯科疾患の予防や治療にとどまらず国民の健康維持増進に寄与し、公衆衛生の向上に寄与していくためには歯科という特殊性の中でのみ専門性を発揮するのではなく、国民のQOL の向上という土俵で他の専門職や組織、市民と協働しながら互いの専門性を高め合う関係性を構築していくことが重要になります。
歯科衛生士法の一部改正が平成27年4 月から施行されましたが、また一歩先の目標として、職種の使命としての第一条の“ 歯科疾患の予防と口腔衛生の向上” という目的を手段と捉え、“ 歯科医療および公衆衛生の向上に寄与する”職能団体へと進化するべく、歯科医師と共に“ 国民の健康な生活を確保する” ことを目的と捉える視点を次世代に伝えていきたいと思います。
まずは“ 歯科疾患の予防と口腔衛生の向上” という職種の使命に歯科衛生士自身が本当に力を注いできたのか? といった省察とともに、使命への主体的、自律的な取り組みへ踏み出す時だと思います。また次の一歩を踏み出すためには、様々な情報から問題を見出す力とそこで期待される役割だけでなく自らの課題を見出す力を養い、社会に向けて働きかけていく組織づくりの基盤として共に学び合い補い合う姿勢もって専門性を高め、使命を果たす喜びを分かち合う場づくりが大切だと考えています。