第20話 学芸員古沸妖の妄想宇宙論【実体験×科学×オカルト=ビックバン】いっしょにぶっ飛び!
人はなぜ生きるか?
6.魂と脳という臓器-4
「健常な子供を見ていると、正直羨ましくもなりました。
何でうちの子が…でも、普通の事がどんなに素晴らしくどんなに奇跡なのか?
この子は身をもって教えてくれています。
それに生理も始まりました。
人間の根底を司る生殖機能が始まったのです。
なんと素晴らしい事でしょう。
この子は命を産めるのです。
──生きているのです。
そして私たちに生きることの素晴らしさ、普通である事の素晴らしさを教え続けているのです。
『この子が生き続けること』
──それが私たちにとって全てです」
お母さんは穏やかな表情を一切崩さず、そう言った。
この質問で十分だった。
あとは何も聞けないと思った。
そうして感謝の意を伝えると帰ることにした。
すると、帰りがけにお母さんは言った。
「この子はあなたに会えて大変喜んでいます。こんな事ははじめてです、近くに来たら是非たち寄ってあげて下さい」
館主は再び大ショックでした。その子にはお母さんだけが感じとれる「感情」つまり「心」がある。
脳がダメージを受けて全く思考ができないのに、体を全く動かせないのに心をお母さんに伝えている。
確かに、お母さんが若い館主に気を遣って言ったようにも受け取れますが、その時は気を遣ってるふうでもなかったんです。
考えてもみて下され、はっきり言ってこの親子にしてみてば、邪魔者ですぞ、興味本意で取材にきて、使われもしない事をわかりつつ、取材に応じて。
聞かれたくもない事を聞かれて、でも、館主にとって意味がある事、と思ったからあからさまに答えてくださった。
──その言葉を真摯に受け取ったからこそ、少女も「喜んだ」
それをお母さんに伝えた、どういう方法を使ったのかは館主には全くわからないがね。
ええ、ええ、赤木館主の守護霊である古沸妖にはその方法はわかってますよ勿論、でも現世で生きる人間に説明するのはちと難しい。
この出会いにはこの宇宙論の骨子を形作る多くのの要素が入っているのです、お判りですか?
もちろん館主だってすぐにそこまで気がついたわけじゃない、入り口は『驚き』からですが、出会いから30年あまりずっと自分の人生と照らし合わせてきて、ようやくわかったんですが…。
つづく
→第21話
第1話 1.プロローグ 2.ここは思念の世界です
第2話 3.物語を進めるにあたって
第3話 作用と反作用-1
第4話 作用と反作用-2
第5話 作用と反作用-3
第6話 概念における作用反作用-1
第7話 概念における作用反作用-2
第8話 心における作用反作用
第9話 思い出すってなんでしょう?-1
第10話 思い出すってなんでしょう?-2
第11話 思い出すってなんでしょう?-3
第12話 思い出すってなんでしょう?-4
第13話 オカルトなお話し-1
第14話 オカルトなお話し-2
第15話 出会い-1
第16話 出会い-2
第17話 魂と脳という臓器-1
第18話 魂と脳という臓器-2
第19話 魂と脳という臓器-3
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