厄落としと浅草寺
次女と浅草でお昼を食べた
カウンターがくるりと
真ん中の厨房を囲む形で
店をとぐろを巻いていて
吉牛とか回転寿司みたいなスタイル
GWの浅草だから
鬼混みだったけど
オペレーションも手早く
入れ替わり立ち替わりで
お客さんが席を後にしていく
3歳くらいの男の子を連れた
お父さんが右隣に座った
カウンターの向かいにお兄ちゃんだろう
6歳くらいの男の子がひとり座った
お父さんの隣の男の子は
なんやかやとお父さんのお世話を受けて
ジッとはしていないけど
それだけリラックスして
楽しんでいるのだろう
方やお兄ちゃんの方は
ご主人さまを待つハチ公のような目で
ジットっとふたりを恨めしげに見つめて
ひとりチビチビ水を飲んで暇を持て余している
可哀想だけど
この布陣がベターだよな
3人では座れない
でも弟は一人では座れない
お兄ちゃんにエールを送っていると
赤毛の左隣のご夫婦二人が席を立つ
食器を下げに来た店員さんに
あの
もしそうした方が良いようだったら
席移りますんで言ってください
あのお兄ちゃん
お父さんと並んで食べたいでしょうから
宜しいんですか?
ではそうしていただけますか?
ガシャン!
席を立とうとして
下を見やると
読んでいた文庫本と
赤毛の携帯が地面に散らばる
画面上にバッキバキに入ったヒビ
ヒエエエエエ
JKのスマホみたいじゃああ
なんじゃこりゃああと
心のなかで松田優作先生みたいに叫んだけど
平静を装って
左どん詰まりに席を移る
空いた3つ繋がりの席に
チョコンと並ぶ男の二人と
お父さん
さっきまでは聞こえなかったお兄ちゃんの話し声
よかった
お兄ちゃんこんな声やったんやな
スマホの画面を見やると
なんとヒビのせいで指紋認証が出来なくなってもうた!
ちょっとブルーになったけれど
もしかしたら
席を譲ってスマホを落として厄落とし
もし落とさなければ
もっと違う何かを落とさなければならなかったかもしれないし
それはそれで良しとしよう
自分でそうしようと思ったことなんだから苦笑
すぐに
間に1つ開けた席にも
海外からのお客さんが一人座って
テトリスはカチンとうまく成立
ああこれで良かったんだ
一つ詰めたことで生まれた空白を
予定通りといったスムーズさで
埋まっていくのを見て
そう思う
帰り際にお父さんが深々とご挨拶してくださって
コソバユカッたけれど
いい休日をといってお別れした
今日のこの日に同じ店で昼食を取ったのも
袖振り合うも多生の縁だ
その後で行った浅草寺
久しぶりに引いたおみくじは
凶で涙
ちゃあんと境内に結びつけて帰ってきましたとさ涙