お母さんは心配性Part弐
長女が絶賛卒論宴もタケナワ中で
12時には帰る夕飯は要らないと
残業するお父さんみたいなLINEを送ってよこしたので
先に休ませていただきますと昭和な妻みたいに返信して
お布団を敷いて11時には寝てしまったのだけど
お年頃なもので夜中に1回はトイレに目覚めることが多く
2時57分目覚めてヨロヨロとトイレに立つと
長女の布団が無人で帰ってないんかいと血相を変えながらも
こちらも一刻一秒争うやつなので
モウモウと湯気を立てて私の内側から外側に向かって排出してホッと息をつき
携帯のLINEを見やると
実験で帰れなくなった
研究室に泊まる
と短いメッセージ
げ
あの小屋みたいなところに泊まるって?
実験室はこの前の学園祭の時に
イベントをやったのに招待されて初めてお邪魔したけど
森の中の小屋みたいなやつやったやんかと
あんな床もないところに寝れるのか?と
ああこんな時に泊まらせてもらう友達でもおったら安心なのになあと
このクソ寒いなか暖房はあったろうか
布団はないよな
寝ないで実験してるんやろか
そう言えば喘息が再発してるっぽかったのに
絶対体調悪化するやつやんと
不安な想像がいくつも束になって脳内を占拠する
当然私が寝れない
そしてウツラウツラしていると夢を見る
家の前が浜辺になっていて
横切って歩く長女を
家の窓から眺めていると
突然みるみる波が荒くなり
ザッパーンとやってきた津波級の波が
浜辺を散歩する人達を飲み込んでしまった
げえええええええ
と叫びながら波打ち際に向かって走り出すけれど
そこにはもう人の姿はなくて
目が覚めて
ああ夢かと
その次はダンジョンみたいな迷路に長女が迷い込んでパニックになってお客様案内係みたいなカウンターの人に道を尋ねているのを
目玉だけの私が監視カメラみたいな角度で見ているけれど
目玉だから声も手も出せないで
フガフガジタバタしていると
また目が覚めて
ああ夢かと
自分が太平の安眠を貪れるのは
自分の心配事がないのは勿論だけれど
自分の大切な人が安寧であることも
実はセットだったんだなあと
母の心配をよそに
朝方に送ったLINEには既読がつかず
まだ帰ってこない長女を待ちながら
眠れぬ朝を迎えた赤毛母は22年目
心配?
お互い幾つにになったって
それが母親稼業の商売でいっ
尽きるわけがないだろとキレ散らかしながら
朝日に向かって洗濯物を干す
帰りを待つ