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デザイナー組織で「Unlearn」する取り組み

Goodpatch Design Advent Calendar 2020 の5日目の記事です。

この記事では、Goodpatchデザインパートナー事業であるクライアントワークを行っている部署で取り組んでいる、ナレッジシェアについて紹介したいと思います。(クライアントワークの詳しい事例はこちら

Goodpatchでは、社内の取り組みをPizzapatchやTakopatchなど「〇〇パッチ」と名付けがちなのですが、ナレッジシェアに関する取り組みは「ナレッジパッチ」と称し行っています。

そんなナレッジパッチにはUnlearnという考え方が重要なポイントとなっているのではないかと思っています。今回はそのUnlearnという考え方をベースとしナレッジパッチについて紹介できればと思います。

Unlearnとは?

Learn:「学ぶ」に否定の“un”がついているので、Unlearn:「学ばない」?とも思いますが、辞書には下記のように載っていました。

1〈学んだことを〉念頭から払う,忘れる.
2〈癖・誤りなどを〉捨て去る.
〈学んだことを〉 忘れる。
https://ejje.weblio.jp/content/unlearn

「学ばない」ではなく、「〈学んだことを〉念頭から取り払う」ということは、Unlearnの前には必ずLearnがある状態であると言えます。学ぶことが前提としてあり、その他Unlearnを調べてみると「学びほぐし」と訳されることも多いようです。

ほぐすを調べてみると下記のように載っていました。

ほぐす:結び合わされたり縫われたりしているもの、または一つにまとまっているものを、解いてばらばらにする。転じて、もつれたり固くなったりした状態を解きやわらげる。ほごす。
Oxford Languages and Google

「学びぼぐし」を分解すると「学んだことを、解いてばらばらにし固くなった状態を解きやらげる」と言えそうです。

Unlearnすることの重要性

スクラムの生みの親としても有名な野中郁次郎の著書「知識創造企業」のなかでも、Unlearnについて触れられています。

組織進化論の発見の一つに、「適応は適応能力を締め出す(Adaptation precludes adaptability.)」というのがある。過去の成功への過剰適応(overadaptation)だといってもよい。恐龍がその一例である。太古の一時期、この生き物は、生理的にも形態的にもある一定の環境に適合していた。しかし、その環境に適応しすぎて、ついには気候とエサとなるものの変化についていくことができなかった。日本軍は同じ罠に陥ったのである。過去の成功に過剰適応して、変わりつつある新しい環境の中でそれらの成功要因を「学習棄却(unlearn)」することに失敗したのである。
「知識創造企業」P248
SECIモデルについても詳しく解説されており組織でのナレッジマネジメントを学べるオススメの本です。

今の世の中が「予測不能な時代」を指す言葉でVUCAと称されるように、刻々と変わる環境に応じ変化することが強く求められる時代となっています。

その時代の中で「Unlearn:〈学んだことを〉念頭から取り払う、学びほぐし」は、既存の学びに固執することなく変化に応じ学んだことをさらなる学びに昇華し進化するための考え方だと思っています。

「学んだことに固執せず、学びほぐし進化する。」

Unlearnには、そのような重要性があるのではと思っています。

ナレッジパッチとUnlearn

冒頭にも書いたようにGoodpatchでは、ナレッジパッチというナレッジシェアの場があります。

元々は、評価時期に行っていたプロジェクトレビュー(アウトプット評価)がベースとなっています。

プロジェクトレビュー時は、半期に一度評価時期に各プロジェクトで取り組んできたことをシェアし、マネージャーがレビュー・評価するというものでした。レビュー自体は誰でも参加でき、いろいろなプロジェクトでの取り組みやナレッジを吸収できる場となっていました。

ただいくつかの課題もあり、評価目的としたプロジェクトレビューは行わなくなりました。(半期に一度のように点での評価ではなく、毎週や隔週など継続的な線での評価に変わりました)

<プレジェクトレビューで課題になっていたこと>
・半期に一度となり、プロジェクト終了タイミングと時期が空いていたり、プロジェクトの進捗によってはシェアしづらいことがある
・プレゼンのみの情報になるため表面的な評価になる(アウトプットに至った過程などを評価しづらい)

メンバーとしては他のプロジェクトのプロセスを本人から聞ける機会はとても貴重で学びの大きい場でした。
評価はしないが、純粋にナレッジをシェアするという部分を残し「ナレッジパッチ」としてカタチを変え、不定期な社内イベントとして今は実施するようになりました。
ちなみに「ナレッジパッチ」という名前に変わってからも、しくじり先生スタイルでプロジェクト内の失敗ベースでナレッジをシェアするカタチなのど色々と試し改善を行いました。

そのようなカタチで行っているナレッジパッチはある意味、組織(集団)におけるUnlearnの場だと思っています。
1. プロジェクトを通し、実行してきた事実をベースとし学びを出力(学びのメタ認知)。
2. 出力した学びを他者と共有し、学びをみんなで見つめ直しディスカッションする。
3. 発表されたナレッジをベースとし、他プロジェクトのナレッジと結合し学びをアップデートする。

発表するプロジェクトメンバーは、プロジェクトで学んだことを見つめ直し他者から意見をもらいディスカションすることでUnlearnでき、発表を聞くメンバーは、新しい学びを得ることで自分のプロジェクトで得ている学びをUnlearnする状態が生まれていると思います。

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プロジェクトという実例を元にし、そこで得た学びを集団で共有しディスカションや内省を通し、うまくいったプロジェクトであってもその成功経験に固執せず念頭から取り払い、さらなる学びに昇華するそんな場になっているのかな思っています。

Unlearnする方法

Unlearnはもちろん一人でもできることだと思っています。
ただ、一人だと自分の成功を取り払うことは難しいことも多くあるのではないかと思います。(ヨーダがルークに助言したように経験が少なく未熟な状態では特に※画像参照)
組織・集団であると、自分が学びだと思ったことを共有するとそれをベースとして別の考え方を他者からインプットでき、そのインプットが自分の学びに固執から脱却する一種のスパイスになるのではと思っています。

Unlearnすることと組織・集団で学びをシェアすることは、重要な繋がりを持っており、その場を作れることで組織としても個人としても進化することができるのではないでしょうか。

Unlearnをアーカイブする

ナレッジパッチは今年夏頃から活発にやるようになり、基本リモートで開催しています。
リモート開催になったことでZoomやオンラインホワイトボード (Strap)、Slidoなどのツールを使い実施しているのですが、その恩恵もあり、ナレッジパッチの発表を録画し、社内ドキュメントツールのesaに発表内容をまとめ情報を削ぎ落とさずアーカイブできるようになりました。

<esaにまとめている内容>
・プロジェクト概要
・発表メンバー
・ナレッジパッチ参加メンバーからの感想(実施後のアンケートで収集)
・発表内容の抜粋
・Q&A内容
・発表動画
・もっと深掘りして聴きたかったナレッジ等のアンケート結果
・その他プロジェクトに関係するナレッジesaリンク

アーカイブしたナレッジパッチのesaをみることで参加しなかったメンバーにもナレッジシェアをすることができ、リアルタイムでなくともUnlearnの機会を作ることができるようになったのではないかと思っています。
また、ナレッジパッチのesaをプロジェクトデータベースとして蓄積することで社内のナレッジを循環できる仕組みも構築中です。

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プロジェクトデータベースにある過去のプロジェクトナレッジをインプットとし、プロジェクト設計・実行。プロジェクト終了後ナレッジを出力し、ナレッジパッチを実施。組織でUnlearnし、学び・ナレッジのアップデートしプロジェクトデータベースに格納。
ナレッジをアップデートしながら蓄積できる仕組みになるよう試行錯誤しています。

Goodpatchがおかれている環境は、VUCAの代表される環境でもあり変化も激しくそのスピードも早いと思っています。
常に前線を走り、変化する組織である必要があると思っています。
その基盤の一つとして、Unlearnする取り組みを実施し、

Unlearnする組織=Goodpatch

としてこれからも変化し続けられればと思っています。(個人の想いです)

最後に、この記事中の図はすべて Strap というオンラインホワイトボードで作成しています。チームでのコラボレーションだけでなく、個人の思考や学びを素早くいい感じに図式化することもできるのでUnlearnする取り組みにも最適なツールです。トライアルもあるので試してみてください!



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