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適当に書いた習作

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2014年8月の記事一覧

冬の動物園

※最後まで読めます。レッツ怖い話。 

 遠い山間で鷹がゆっくりと旋回していた。 
 空は晴れ模様。息を吐くと白い十二月最初の日曜日。 
 ベージュのコートにミトンの手袋をした女の子が、駅前にある時計塔の下に立っていた。
「約束した時間の十時まで、あと二十分」と女の子は呟いた。
 女の子は改札口から誰かが出て来るのをずっと待っていた。
 今日は動物園でデートをすることになっていた。人生で3度目の動

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習作『伝わらない寓意 ―スターチス―』

※最後まで読めます。放課後恋愛譚。

  ――君との距離と伝えたい言葉の量にいつも戸惑う。

   二月の上旬。暖房の効いた教室で、うつらうつらしながらシャーペンを回転させ、彼女に云われた言葉を反芻する。窓から降り注ぐ日光が、開いたノートをより一層白い光で満たしていた。五時間目の国語の授業は教諭の都合で自習となっていて、副担任の先生から急遽出されたプリントの問題を早々に埋めて提出してしまうと、クラ

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