『麻雀』で自己肯定感をやしなおう
「麻雀はどちらかというとストレスがたまる」
先日、テレビでそう言っていたのは、東大卒で、弁護士で、プロ雀士の小説家という輝かしい経歴の持ち主であり、人気小説『元カレの遺言状』の著者、新川帆立さんだ。そして彼女は同時に「麻雀をしてきたことで、折れない、ブレない、強いメンタルが鍛えられたのではないか」とも言っていた。
こんな輝かしい経歴の方と同列に話には抵抗があるけれど、私も麻雀を愛する一人の人間としてここに申し上げたい。
『麻雀』を楽しみ、その仕組みを理解することは、自己肯定感をつちかうことにつながるのだ。
麻雀なんてやざくれた人たちがやるものでしょう。
という気持ちはとてもよくわかる。昨今ではかなりイメージアップしてきているとはいえ、タバコがもうもうとケムる部屋で、毎夜こわもての人たちによって、お金のやりとりが行われているというイメージを持つ人もいまだにいるだろう。あながち間違ってもいない。
それに、いざ卓を囲んできちんと麻雀をやろうとなったら、少なくても数時間、多ければ一晩中かかるので、手を出しづらいのも確かだ。だから「ぜひとも雀荘に乗り込んで麻雀をやりなさい」とは言わない。
しかし、麻雀というものが持つゲーム性には学ぶべき部分が沢山あるのだ。
麻雀を知らない人のために簡単にルールを説明しよう。あくまで基本的なルールであり、変則的なものは割愛する。
4人の対局者が 136個の牌 (パイ) を一定のルールに従って組合せ、得点の多少によって勝敗を競う。始まった段階では手元に13個の牌があり、順番に山から1つ牌をとり、1つを捨てる。これを繰りかえし、最終的に特定の組み合わせができた人があがりだ。
写真のように3個のセットが4つと、頭(あたま)と呼ばれる2枚、計14枚であがりを作る。同じ絵が3つでもいいし、数字は1~9まであり一番左側にあるように「6、7、8」などの並んだ3つの数字でもセットにできる。
簡単に言ってしまえば、絵合わせゲームである。しかしこれが難しく言うと『運』と『確率』のゲームになるところにその面白さがあるのだ。
例えば、この2つの組み合わせのいずれかを切らなければならないとなったとき、どちらの組み合わせから切った方がいいだろうか? 牌は一種類につき4枚しかないと決まっている。また数字は1~9までだ。
左の「1、2」は端っこのため3が来ないと形にならない。枚数で言えば4枚だ。他方、「5、6」は4もしくは7がくれば形になる。つまり右の方は、理論上、形になる確率が左のふたつにくらべて倍ある計算になる。
ただし麻雀では『役』……つまり、あがった時の形によって点数が変わってくるので、確率は低くても、そちらを残していくということもよくあることではある。
様々な選択肢の中から、自分が進む方向性を決め、その中で高い確率のものを残していく。運と確立に支配されたゲームなのだ。
その時、目に見える情報から、確率とリターンを掛けあわせ、最もリターンの大きいであろう選択を積み重ねる。自分の進む道のリスクが高い場合、我慢して守りに徹しなければいけないときもある。とにかく運が悪く、ただじっと待ちながら、好機をうかがうだけのときもある。
「運」という自分にはどうにもできない部分に翻弄されながらも、各人の手に配られた牌、つまり「自らがどうにかできる部分」を最大限に活用して勝利をめざす。
――そう、これはまさに人生の縮図だ。麻雀は人生なのである。
麻雀は大切なことを教えてくれる。冒頭、新川さんが言っていたように、ストレスを感じる機会も多く、単純にストレス耐性ができるという良さもある。
だが、それ以上に自分の選択に自信を持ち、「後悔しない大切さ」を教えてくれる。私は、それが麻雀の教えてくれる一番大切な人生訓だと思っている。
自分が良いと思う方向にカジを切るとき、目に見える情報の中で、最大限リターンが高いであろう選択肢を選ばなければならない。その選択をするために努力をしなければならない。
それでも確率に反し、いままさに切った牌を持ってくることもある。しかしそれは後悔するようなことではないのだ。私は、最前の選択をした。そこに胸を張っていい。そこから同じ牌を3枚連続で持ってきたとしても、自分の選択を恥じる必要はないのだ。
自分の選択を信じること。そして選択を後悔しないこと。
この2つができれば、自己肯定感などどのようにでもなる。そんな考え方を麻雀は育ててくれる。
上でも言ったように、いざ卓を囲んで麻雀をやろうと思ったら、数時間から一晩ほどかかってしまう。しかし、現在ならインターネットでお手軽に麻雀を楽しむことができる。私だってもう10年以上、ちゃんと卓を囲んで麻雀をしていないけれど、たまの週末にパチポチと手軽に楽しんでいる。
雀荘に出向く手間も、相手を探す手間もいらない。お金をかけることもないし、危なくもない。それにインターネット上で主流なのは通常の半分で終 わるルール。時間的にもかなり気軽に楽しむことができる。
ちなみに私が最近やっているのは、人気の麻雀ゲーム「雀魂ーじゃんたまー」。女の子かわいい。ウェブだけで完結するのも良し。
そして麻雀を知ることで、自己肯定感もあがる。
ここまで言って麻雀をやらない理由があるだろうか。いやない。
――というほど世の中簡単にできていないのは、重々承知しておりますが、前向きな考え方のクセをつけるときに、麻雀というヤクザなゲームは一役買ってくれるのではないか、と私は思っています。