ブロッコリーを傘にした市【#同じテーマで小説を書こう】【ショートショート】【#60】
「私たち部路狐狸(ブロッコリー)市は、先日発表したしました市の改名に続きまして、2025年を目標に名産であるブロッコリーを、より全面的に押し出していくことにいたします。目玉事業としては、市庁舎の屋上に巨大なブロッコリーを栽培し、モニュメントにするとともに、壮大な雨よけ装置といたします」
「……し、市長。いくらなんでもそんな巨大なブロッコリーなんてありませんよ」
「その問題は解決済みです。先日、市内の製薬会社が開発した成長促進剤を使うことで、通常のブロッコリーの1000倍から2000倍の大きさにまで成長させることができると実証済みです。市庁舎を来訪していただいた方にブロッコリーをどうやったらアピールできるか。そう考えたときに、一番良いのは『市庁舎自体がブロッコリーである』ということではないか、という判断にいたりました」
「そんなことしたら、青臭くて近寄れたもんじゃないよ!」
「匂いについても、様々な改良が検討されておりまして、日夜香水の香りをかがせることにより、それぞれの香りを発することができるブロッコリーを栽培できるようになる……これは、現在では実験段階ですが、来年には実装される予定ですので、そういった心配は無用です」
唖然とする記者たちを見回して、市長は続ける。
「そして、市民の皆様や記者の皆様にも、わが市の一員として『ブロッコリー』をアピールする一助となっていただきます。手始めに記者の皆様及び、業務の一環として来庁していだたく方は、わが市で開発いたしました傘を使っていただきます」
市長は下手側に向かって、向かい入れるよう合図する。女性職員が抱えて入ってきたのは、1メートルはあろうかというブロッコリー。長く伸びた幹を手に持ち、頭を花蕾(からい)の下に収めている。
「こちらご覧ください。『ブロッコリーの傘』でございます。ブロッコリーアンブレラ……略して『ブロリアン』と呼んでおります。こちらの傘を皆様にお配りいたします。明日からは、こちらの傘を利用していただかない方は出入り禁止となりますので、ご理解いただきたいと思います。……では、質問等あるかたはいらっしゃいますか?」
記者たちはあきれて誰も口を開くことができない。
「最後になりましたが、市民の方にも徐々に協力をしていただきたいと考えておりますので、2025年までには今使っていただいている一般の傘はすべて回収させていただき、皆様にもこちらの『ブロリアン』を使っていただく予定になっております。意外と使い勝手も良く、一度使っていただければオーガニックな、この『ブロリアン』の良さにも気が付いていただけると考えています。では、記者会見はこれで終了いたします。部路狐狸(ブロッコリー)市のブロッコリーとプロリアンを今後ともよろしくお願いいたします」
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しほさんのこちらの企画にのってみました!
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