取扱説明書【かつお節は洗う?洗ってはいけない?】
最近、節が良く売れるようになってきています。
若い方からの購入が増えており、世代が、一周回ってきた感じがしています。
また、海外の方からのご注文も増えてきています。
これは、『日本食が健康にいい』という昔からの話を耳にされた海外の方や、海外在住の日本人の方がお求めになられているようです。
そこで気になるのが、節の扱い方。
弊社では、商品に扱い方の説明を書いた紙を入れておりますが、こちらでもテーマごとに分けて短めの内容でさらっと読めるように、改めて節の取り扱い方を書いていこうと思います。
第1回目は、【かつお節は洗う?洗ってはいけない?】で、お届けします。
1. まず、結論。
洗うか?洗わないか?これの答えはこちらです。
これです。
順を追って説明していきますね。
2. 洗う理由
最初に、私が洗うことをお勧めする理由です。
皆さんが買っている「枯節」というかつお節は、表面にカビが生えています。触ったことがある方はわかるかと思いますが、触るとグレーっぽいとか茶色っぽいカビの粉が手につきます。
①手が汚れます。
②道具も汚れます。
③そのまま削ると、カビも食べます。(食べても差し支えはないがカビ臭い)
④そのまま削って出汁を引くと、出汁からうっすらとカビの臭いがします。
⑤そのまま削って出汁を引くと、アクが立つ原因になります。
さらっと挙げただけでも、これだけマイナスな理由が出てきます。
美味しく食べたいと思って、わざわざ節を買って削っているのに、美味しくなくなる要素を入れるのは勿体ないですよね。なので、私は洗うことをお勧めしています。
でも、カビを取ってしまって大丈夫なのか?と、気にされる方もいます。
このカビは、かつお節をおいしく熟成させるために必要なものでした。お客様の手元に届いたときには、熟成はベストな状態になってカビの役割は終わっていますので、必要ありません。
なので、洗い流していただいても、全く問題ありません。
洗い方はこちらの動画でご覧いただくとわかりやすいかと思います。
これは、以前さばけるプロジェクトさんにご依頼をいただき、監修等のお手伝いをさせていただいたときの動画ですが、この中でかつお節を「洗って、乾かして、削る」ところまでを紹介しています。
(実は、この動画で出演している女性は私です。緊張しまくりだったので、ちょっと動きがぎこちないのはご愛嬌ということで💦)
3. 洗わなくてもいい理由
次に、洗わなくても良い理由です。
上記の①~⑤に上げた理由が気にならなければ、布巾で払うだけでも、そのままでも問題ありませんので、メンドクサイ、気にならないからいいや、と思われる方は洗わなくて大丈夫です。
これだけです。(笑)
「洗う」「洗わない」は個人の好みですので、必ず洗わなくてはいけない!というわけではありませんが、洗った方が使いやすいし美味しいと思うよ?ということで、私からは洗うことをお勧めしております。
4. 『洗ってはいけない』は大間違い!!
最後に、これはとても重要な事なので、しっかりと書いていきます。
人によって
かつお節を洗ってはいけない
洗うとかつお節が痛む
洗ったかつお節は使えない
と伝えている方がいますが、はっきりと申し上げます。
これは間違いです。
まず、カビの役割は上記にも書きましたが、お客様のお手元に届いたときには、役割を終えています。だから、カビがついていた方が品質が保てるという方もいますが、それは残念ながら間違いで、あっても特に意味がありません。
更に、かつお節を洗うと「傷む」というのは、一体何を指して傷んでいるのかという疑問です。乾物として水分が17%以下にまで締まっているので、少し濡れたくらいでは、中にまで水分は浸透しませんので「傷みようがない」のです。ガチガチのかつお節の表面に、何時間も水をかけ続ける、または何時間も浸水させる、ということをするのであれば、話は別ですが、そういったことを通常行うことはありませんよね。だから、そもそも「傷む」という事象が、どのようにして発生するかという事自体に、大きな疑問が生じるのです。
そして最後に、「洗ったかつお節は使えない」と言っている方もいますが…これはありえませんと、断言します。
何故なら、市販されている本枯節の削り節は、100%水洗いをしてから、削られているからです。
このくらい豪快に洗っています。これは荒節を洗っている画像ですが、枯節も全く同じように洗います。
この機会は、埼玉県草加市にある高橋水機株式会社さんが作っているピカ一(ピカイチ)という商品です。農家さんが使っている、農業用の野菜の洗い機を少し改良して作られている、鰹節用の洗機です。
専用の業務用の機械があるくらい、洗うのは当たり前の事なのです。
また、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、日本の厳しい食品衛生の検査で、菌数検査というものがあります。
もしも洗わずに、かつお節を削ってしまったら…いったいどうなるでしょうか?
カビも一緒に削られて、製品の中に入ります。となると、検査をすると大量の菌が検出されますね。それは販売不可となることは、誰しも簡単に、想像ができるかと思います。日本の食品衛生検査の基準は、一般の方にはあまり知られていませんが、実は世界的に見てもトップクラスの、非常に非常ーに、厳しいものです。
だから、洗ったかつお節は使えない(=洗っていないかつお節しか使えない)なんて、ありえないのです。
以上の事から、「洗ってはいけない」は間違っている、ということになります。
5. 扱い方を伝える方への苦言
(ここは一般の方は、飛ばしていただいても結構です)
近年、健康への意識の高まりから、国内外を問わずかつお節への興味・関心が高まっており、購入を希望される方が非常に増えています。
しかし、現代に於いては、殆どの方がかつお節の知識を持っていません。
日本人の方でも、海外の方でも、それは同じです。
WEBでの通信が非常に活発になり、世界を股にかけての出汁取り講座や、自社商品のアピールをされる方も、増えています。
だしソムリエ、健康食品店、料理教室の講師、そしてかつお節の生産者など…
かつお節の業界が活発になり、商品が動いていく事は、業界にいる人間として嬉しいことでもありますが、それと同時に、講師をされる方は
伝える事への「責任を負っている」ことを自覚してください。
何故それをするのか、理由をきちんと伝えてください。
理由が説明できないものを、適当に教えないでください。
わからないならわからないと、きちんと話してください。
今回のように、「洗ってはいけない」ということや、次回以降に書きますが、保管方法で「冷蔵庫に入れてください」、削る時に「火で炙ってください」「レンジで温めてください」と伝えることは、人に間違った知識を伝えているのです。
それはとても、不誠実です。
なにより、間違った知識を伝えることは、業界にとっても日本の食文化にとっても、長い目で見ると、大きな損害が生じます。
伝えるということは、その責任を負っているということです。
自分のところの商品を、他とは違うものに見せたい、他とは違う売り込みをしたい、もっと売りたい、という気持ちは理解できます。
でも、間違ったことを伝えることは、お客様に対して、業界に対して、不誠実で失礼です。
伝えるのであれば、正しい知識を、文章に残してもいいくらい、きちんと伝えてください。
かつお節を大切に思う一人の人間としての、お願いです。
この文章を読まれたら、内容に心当たりのある方が、複数名いることでしょう。
名指しでの批判はいたしません。
ただ、心当たりのある方々が気づいてくださることを、切に願います。
締め
かつお節の扱い方は、間違った知識が多く流布されています。
何故こうなってしまったかという、一番大きな問題は、扱っている人自体が、日頃からかつお節を使っていない、または学んでいないことが、一番大きな理由です。
かつお節は、間違った知識を持つことで、扱い方がめんどくさくなっているという側面が見られると気づいてから、そこを「解消出来たら」と思うようになりました。
それらの悩みを一つずつ解決して、皆さんの生活に少しでもかつお節が馴染んて行くことを願い、このnoteを書いていきます。
また、過去にはこんなnoteも書いていますので、よろしければこちらもご参考まで。(かつお節は洗った方がいい理由)
扱い方がわからない方がいたら、ぜひこのnoteを紹介いただいたり、ご覧になられた方が、伝えてください。そこでまた疑問が出たり、気になることがありましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。
電話やメールでのお問い合わせも受け付けています。
ご覧いただきまして、ありがとうございました。