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[あの時、なぜ手を差し伸べないのか]



2022.5.24
一般社団法人全日本バリアフリー推進協議会
代表理事 バリアフリースペシャリスト 静ちゃん


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身体障害者2級、要介護2、電動車椅子である自身が、
実際に体験したことを記すものである。

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ある大雨の日、
私はロータリーでバスを待っていた。


目的のバスは停留所に到着していたが、
運転手さんはトイレに行っており不在で、
私は車椅子で乗れるときを待っていた。


しばらくすると運転手さんが小走りで戻ってきた。


[乗られますか?どこまで?]


そう聞かれたところで、
身体に麻痺のある若い男性が近寄ってきた。


私は、[お先にどうぞ!]とお伝えしたが、


[いえいえ!あとでいいです]
と、先に譲ってくださった。


無事に2人とも乗れたが大雨の影響もあり、
バスはとても混雑していた。


麻痺のある男性も手すりに捕まり立っていた。
心配で不安しかないが、
私は車椅子なので席を譲ることができない。


見てわかる障害なのに、誰も席を譲らない。


しばらくそっと側で見守っていた。


次のバス停のアナウンスがあると、
男性はそこで降りられる様子。


男性はジワジワと前の方へ降りる準備をし、
怪我もなく良かったと私もホッとした。


すると、
雨による急ブレーキと麻痺のため、
男性はよろつき倒れそうになった。


[危ない!だれか!]


声をかけるも誰も振り向かない。
誰も助けない。


[、、ドーン!!]


ついに倒れてしまった。


私は大声で、[誰か!!助けて!!]


しかし、
運転手さんはドアを開けたまま椅子に座っている。


前の椅子に座っている学生、
買い物帰りのお姉さん、
50代ぐらいのおばさまたち、


みんな椅子に座ったまま動かない。


とうとう車椅子席から声を出した。


[どうして誰も手を貸しませんか?]

[なんで目の前で転んだ人がいるのに、
   平気な顔して座ってられますか?]

[身体の不自由な人がいるのに、
     なぜ席を譲りませんか?]


それでも前の優先席に座っている女性は、
買い物袋を持ったまま微動だにしない。


静まり返るバスの中、


[あなた椅子から降りて手伝ってください!]


前の女性は私から肩を叩かれて、

[え?!ワタシデスカ?!]

と言いながら、慌てて席を立った。


すると、
これこそ日本の空気を読む文化的だろうか。


バスの前方の椅子に座っている方の全員が、
椅子を降りて、立った。


バスは発車した。
しかし誰も椅子に座らない。


そのまま次の次のバス停で、
私はバスを降りた。


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お分かりでしょうか。


[空気を読む]


誤解を招きたくないので補足しますが、
これは万人には当てはまりません。


しかし、集団というものは恐ろしいものです。


目の前で困っている人がいたら、

どうか最優先で、
その場の困っている人を助けてください。


人はいつ怪我をしたり病気になるかわかりません。


身体に不自由がない人もある人も、
皆で共存している世の中です。


また、それを不自由かそうでないかと思うのも、
個々の感性です。


過度なお手伝いは必要ありません。
必要なのは、見守りと声かけです。


先日、丸の内線の車内で、
近くの男性が近寄ってきました。

なんだろうと思いましたが、


[お手伝いできることがあれば言ってください!]


私は満面の笑みでお礼を伝えて、
握手をさせてもらってご挨拶できました。


みんなで助け合って生きていきましょう。

そして、それを、
未来を担う子供たちに、伝えていきましょう。



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