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PERFECT BLUE   ぱ~ふぇくと~~~~~~~~~~~~~ぶるうぅぅぅぅぅ~~~~~~~

     今 敏(監督). (1998). PERFECT BLUE [映画]. マッドハウス.

  こんにちは。会津大学アニメ研究会部員のらーゆです。本日は今敏監督による劇場アニメーション作品「PERFECT BLUE」の感想をお話ししていきたいと思います。

 PERFECT BLUEは1997年の作品で、改めまして監督は今敏監督。今敏監督については、名前のまとまりの良さ(だって2文字、かっこよくない???)、先進的なアニメーション、リアルな人間模様。どこをとっても孤高の存在で、あこがれているアニメファンは多いのではないでしょうか。残念ながら2010年に今敏監督はなくなりました。タラればな話ですが、監督が今も時代の流れに乗りつつ、人の心を深く突き刺す作品を作り出していたらと、思わずにはいられません。

 そんな今敏監督の初監督作品が「PERFECT BLUE」になります。制作はマッドハウス。初監督作品ながら、まったくもって気後れしていない、作家性全乗っかりの作品です。

 あらすじ(ギャル語)
 アイドルグループ ’CHAM’で活動している未麻は女優への転身を理由に、グループを脱退する。未麻の心の中には、熱心なオタクからの嫌がらせ、女優への転身による不安、様々な負の感情が渦巻いていく。その感情の渦は未麻、そして周囲を巻き込んでいく。

 こんなかんじ。なんも明るくないっすねww。しょっぱなからずーーーーっと気持ち悪い雰囲気がまとわりついてくる。醜悪を煮詰めたみたいなキャラクターがめちゃくちゃ出てくるし、ほんとにずーーーっと気持ち悪い。だけどすっきりしている作品だとも思います。

おいおいおい。これが初監督ってどういうことだよ

 どういうことだよ。ほんとにさ。この作家性はどこから生まれたんでしょうか。雑に感想を語ります。ネタバレ注意。

 ねちっこい雰囲気は、どこか夕方にぼーーっと眺める断片的な情報しか知らないドラマのような。二人くらいしか見ていない小さな映画館の画質の悪いサスペンスみたいな。2チャンネルの有名じゃない洒落怖みたいな。人がいないのに、人の怨念とか執念とか、人間の良くない空気がぎゅっと詰め込まれているような雰囲気。この雰囲気はどうして生み出せたのでしょうか。世紀末が迫っていてどこかみんな抱いていた諦めの空気?それともバブル後期、もしくは崩壊後の足場が崩れているのにまだ浮いていると感じているような浮ついた感じ?今敏の生い立ちとかに関係あるんでしょうか。
 
 雰囲気だけではありません。ストーリーも暗すぎるし、ちょびっと難解。ストーカー被害という、誰でも遭遇しうる事案をここまでゆっくり怖く描く。その主軸とは別に理想と現実の中で揉まれ、同時に他人からの羨望や嫉妬の視線が降り注ぐ。アイドルという純粋さを振り撒く職業からの転落とも言ってもいいでしょう。

 かわいいキャラとかわいくないキャラ。気持ち悪いキャラ、そうでないキャラがめっちゃくちゃ分けて描かれている。かわいいキャラはちゃんとかわいい。性格までかわいい。未麻ちゃんがそうだ。打って変わって、ストーカーとマネージャーはかわいくない。見た目と内面のシンクロがわかりやすい。その中での未麻の理想と現実。外見と中身の乖離がこの映画のテーマの一つだと私は感じた。

 オタクもちゃんと気持ち悪く描く。そこには令和との価値観の差異があり、今ではよくないことかもしれない。だが、はっきりとこの時代にはオタクというカテゴリは気持ち悪いカテゴリでもあったんだということが全編に通してずっとずっと。

 アイドルの未麻と女優になりたい未麻。オタクから見た理想の未麻と現実の未麻。いろんな人のいろんな未麻。いろんな像が重なって、現実の未麻は揺らいでいく。苦しそ~~~~~~~~~。まじで。ほんとに。ぐぅぇすぎる。あらゆるうまくいかなさを、肥大妄想で加速させていく。それにストーカーの二の矢。ぎぃいえ。

 あと、オタクの声たっけぇのな!!そこも平成初期。街並みも平成初期。感じたことのない平成初期。あらゆるシーンに平成初期がにじんでいて、勝手にそのころの日本を心配してしまいます。

 時代の負の感情を総まとめにしてかつ、悲観しきっているわけではなく。

 

映像について

  綺麗の「綺」の字の「奇」。その「奇」が似合うきれいな映像だと思います。いつ切り取っても、絵画になりうる美しさ。無機質な生活感。怖くてきもい劇半。そのすべてが、無駄なく組み合わさって、繰り返しの中で違う意味を持ったりして。まったくもって無駄なシーン演出がないとも思います。

 シンプルに彩度が低いからずっと不安。陰の揺れ方とかもゆらゆらしていて落ち着かない。

 鏡が良く出る。鏡に映る非対称な自分が、まさにここにいる自分とその向こうの自分の境目をふっと消してしまうような。そんな境界線があやふやな世界。一度夢オチ、ドラマオチ(実はドラマでしたオチ)を経験してしまうと、これは夢なんじゃないかっていう思いが消えない。どのシーンに対しても疑いの目を向けてしまう。落ち着かない。

 声優さんの演技が、アニメチックじゃないのもよい。ドラマに近い演技が、当時のドラマ、アニメを知らない私たちからしたら、不安をあおるような、ない懐かしさをくすぐるような気がする。

 カメラワークも素晴らしい。魅力的な一瞬を、違和感なく引き伸ばしている印象を受けました。もう一人の未麻を追いかけ、階段で未麻と未麻がすれ違うシーン。その一瞬の未麻の顔がとっても印象的です。刹那なんですが、彼女の微笑みが、純粋で恐ろしいものだというのが伝わります。

 繰り返しもとても有用に使われている気がする。未麻が凶器に染められてしまった。という事実を伝えるために、何度も何度も人を刺す。おんなじ繰り返しの中を何度も何度も。何度も何度も自分を責める。何度も何度もすれ違う。

 初監督。どういうこっちゃ。これほどのクオリティと尖り具合を持ち合わせ、アニメに甘えず、リアリティを持った作品に仕上げている。すげぇよまじで。

 雑に語りましたが、アニメ史に残る傑作だとはっきりと言えます。1時間20分くらいなので、ぜひ見てください。ほんとに。ぜひ見てください。ええ。

まとめ

 今敏はずっと現実を見ている。現実の中に確かにある”ないもの”を見ている。それをアニメという現実には、あり得”ないもの”を使って視覚化してくれている気がする。これほどまでにエキセントリックなのに、リアリティも両立している。

 語るべきところが、多すぎるし、私は理解しきれている気がしない。だけど、すんごいいい作品かっこいい作品だというのははっきりとわかる。
 んで初監督!!!!!意味わかんないって。今敏以前に今敏はいないのに、どうしてこんなにも今敏なわけ???????????才能に驚かされちゃいますね。まさにPERFECT。ありがとう今敏。

書いた人 らーゆ



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