ブラックおとぎ話 #1
むかしむかし、それは高い山の上の、綺麗な海の見える学び舎の話です。
ある男の子は、とても綺麗な白い肌がちょっぴり自慢でした。
男の子の大好きなお母さんが、異国生まれだからだそうです。
男の子が7歳になり、いよいよ、学び舎に通う歳ごろになりました。
期待に胸をいっぱい膨らませて、男の子は学び舎に向かいました。
たくさんの友だちに囲まれて、初めての学び舎が始まりました。
しかし、男の子は、周りの子達にひどい言葉を浴びせられてしまいます。
「君の白い肌は気持ち悪い。」
「どうして皆と色が違うの?」
男の子はバカにされ、笑われ、とても嫌な気持ちになりました。
それでも大好きなお母さんと同じ色だから、男の子はいつでも笑っていました。
ある日、それを気に食わなかった子達が、男の子を納屋に連れて行きました。
「君の事は嫌いだ。」
「なんでずっと笑っているんだ。」
と、心無い言葉をかけられては、殴られ蹴られてしまいます。
男の子が気づいた時には、身体はアザだらけで、真っ暗な納屋にひとりぼっちでした。
納屋を出ると、外も真っ暗です。家に帰ろうと思って歩き出した時、男の子は足を踏み外してしまいます。
男の子は崖から落ちてしまったのです。
「お外がこんなに暗くなかったら家まで帰れたのに...」
男の子がそんなことを思っている時にはもう、男の子は死んでしまっていました。
訃報を聞いた男の子のお母さんは、悲しみのあまり涙が止まりません。
泣いても泣いても、まだまだ涙が出てきます。
お母さんは、時間を忘れるくらい泣いていたため、外が真っ暗なことに気が付きませんでした。
ふと外を見てみると、いつもは暗いはずの外が少し明るいようです。
戸を開けて外に出てみると、空には白くて丸い物が浮かんでいて、外を照らしていました。
その丸は、表面は少しでこぼこしていましたが、お母さんはなんだか温かい気持ちになりました。
「きっとあの子が見守ってくれているのかもしれない。」
そう思うと、毎日夜になるのが待ち遠しくなりました。
いつもは暗い夜も、この白くて綺麗な丸のおかげで少し明るいのです。
男の子は、綺麗なお月様になって、暗い夜を照らしす道しるべになったのでした。