@cioran_pessimism(生まれてきたことが苦しいあなたに/大谷崇)
“生きることを嫌う”
からこそ
あなたの人生は楽になる。
――帯より引用
ぼくがその謳い文句には惹かれたのは、「生まれてきたことが苦し」かったからだろう。(この本を読み始めた当時、ぼくはまだ会社で働いていた。)
ペシミスト(悲観主義者)たちの王(らしい)エミール・シオランの入門書。彼の著書から引用されたアフォリズムを眺めていると、「人の考えることって、本当変わらないな」と思えてくる。
「ああ、また一日が始まった、またこの日を耐え、この日を終えなければならないのか」と考えねばならない苦しみにまさる苦しみはないでしょう(『シオラン対談集』254頁)
――p72より引用
これはつまり、現代的にいえば「仕事に行きとうない」ってことでいいんですかね。日曜日の夜に「月曜日が怖い」と布団の中でうんうんしている学生および社会人……。
いざ仕事に行ってみても、なかなかはかどらないことは、多々あった。ああ、そうだ。これは15時までに終わらせないといけないのに、まだ全然出来ていない……。
もう駄目だ。こうして時間を無駄にしていていいのか。午前中、ほとんど昼近くになって、例によってまだ仕事に取りかかっていないのに気づき、あやうく落涙するところだった。(『カイエ』135頁)
――p69より引用
これはまるで、仕事をしていた在りし日のぼくじゃないか。(まあ、「どうしよう、午前中何もできなかった」と頭を抱えることは今でもあるけど。)
なんだか今までの説明だと、シオランがネガティブなツイートばかりしている人みたいになっている。
ちなみに、シオランのアフォリズムの中だと、ぼくのナンバーワンはこちらです。
生に明確な目的を与えてみたまえ。それは直ちに生本来の魅力を失ってしまう。(『崩壊概論』25頁)
――p234より引用
「人生に意味なんてない」とはよくいわれることだけど、「生本来の魅力を失ってしまう」なんて、考えたこともなかった。
たしかに「明確な目的」があれば、生きるのはさぞ窮屈だろう。あれをしなきゃいけない、これをしなきゃいけない……。これこそ、「生まれてきたことが苦しい」原因かもしれない。
どうして、あれもこれもしなきゃいけないの? あれもこれも出来なきゃ、生きちゃいけないの? ねえ……。
もしもシオランが現代に生まれていたら、絶対Twitterやるんだろうな。アフォリズムが得意だから、140字制限があるTwitterはうってつけだ。そんなシオランは、何をツイートしてもバズ……いや、炎上するかな。
やれやれ。
今も昔も、生きていくことは苦しい。
生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想/大谷 崇(2019年)