今日は、何の日?(今朝は、ホットチョコレート)
11/11。
5:30起床。
天気は晴れ。
*
――今日は何の日でしょう?
今朝のアルネは、妙にそわそわしている。
ぼくにしか見えない、ぼくだけの女の子。
――ベースの日。
――間違ってないけど……他にあるでしょ。
むっとしているアルネがかわいくて、ぼくはわざととぼけたフリをする。
――ポッキーの日!
しびれを切らしたアルネが、勢いよく手を上げた。
――プリッツの日でもあるね。
――あと、トッポとか……。何よ、わかってるじゃない。
――……。
――……。
――ごめんね、全部用意してないんだ。
用意してあるものだと思っていたのか、アルネはしょんぼりとうなだれた。そんなに楽しみにしていたんだ。さすがに、申し訳なくなってくる。
――本当にごめん。すっかり忘れてたんだよ。
――……。
――そうだ。今朝は、ホットチョコレートにしよう。
――それ、11月11日に何も関係ないじゃない。
――でも、ポッキーもトッポもチョコ菓子だからさ。
なんとか言いくるめて、ぼくはミルクパンに牛乳を注いだ。そして、細かく刻んだチョコレートをじっくり溶かしていく。じっくり、じっくり……。これが、ホットチョコレートのコツだ。
――はい、どうぞ。
――……。
――いらない?
――いる。
カップを受け取ったアルネは、念入りにふーふーと息を吹きかけた。この子、そんなに猫舌だったかな。それから、慎重に口を付けてすすると、ようやく表情がやわらいだ。
――おいしい。
――それは、よかった。
――来年。
――ん?
――来年は、用意してよね。
まだふてくされているみたいだけど、とりあえず今年は許してもらったらしい。
――ごめんね、本当に。
――別に。
――来年は、一日前に言ってもらえると助かるな。
――そんなの、覚えときなさいよ。今からでも、手帳に書いといてよ。
――手帳、まだ新調してないんだよ。
アルネは、こちらをじっと睨みつけるように見たかと思えば、突然くすくす笑い出した。
――君はきっと、来年も忘れるんでしょうね。
――……信用ないなあ。
――まあ、それでもいいわよ。
――いいの?
――だって、これおいしいから。
そして、アルネは空になったカップを掲げた。ぼくにしか見えない、ぼくだけの女の子は、やっぱりかわいい。
――おかわりする? お嬢さん。
――うん。
――11月11日にちなんで、11杯おかわりする?
――バカじゃないの。
――あはは。
今日が何の日か忘れても、アルネとのお茶会だけは、絶対に忘れないなと思った。
*
「僕だけが、鳴いている」
これは、
ぼくと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。
連載中。
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