やさしいおでかけ、やさしい人(おでかけ子ザメ/ペンギンボックス)
よくおでかけしている子ザメちゃんを、ぼくはツイッターで見かけるのを楽しみにしている。し、自分がおでかけするときも、「おでかけ子ザメ」をお供にする。楽しいおでかけになるように、お守りになってくれる気がして。
子ザメちゃんは、楽しいことを見つけるのが得意で、おでかけの道中で出会う人達と、すぐに仲よくなる。出会う人達がみな優しいのもある。けど、それは子ザメちゃん本人が優しいからだと思う。
キミのやさしさに みんな気づいてるよ。
本の帯のことばに、「なんて、すてきなんだろう」とぼくは思った。「キミ」が優しいと思われているのもすてきだし、優しさに気付くのも優しい人のはずだから、それもまたすてきだと思った。
たぶん、キミ=子ザメちゃんだと思うけど。誰とは言わない「キミ」という言い方が優しい。
このことばは、誰が言っているのかわからない。子ザメちゃんが、今まで出会った人達かもしれない。それとも、もしかしたら子ザメちゃん本人かもしれない。
どちらにせよ、この本を見つけた人にも、言ってくれているとしたら。それを考えると、なんだか救われる気がした。
おでかけが大好きな子ザメちゃんは、今までもこれからも、いろんな人に出会う。ぼくは、ぼくのおでかけで出会った、いろんな人を思い出した。
おでかけはもともと好きだったけど、人が苦手で、人がいるところにはあまり寄り付かなかったぼく。ほとんど人がいないところでも、それはそれですてきなものを見つけられたけど。
きっかけが重なって、すてきな人がいる、すてきなところにも出かけるようになった。すてきな人と知り合うと、他のすてきな人を知ることができる。そうしてぼくの世界は、少しずつ広がっている。少しずつ、怖くない人を知って。
子ザメちゃんのことを思い出すと、大変なこともあるけど、おでかけは、本当に楽しいんだよなと思った。
この一年だけでも、コーヒーを飲めるようになったり(自分で淹れるようにもなったり)部屋に花を飾るようになったり。おでかけしていなかったら、たぶん出会えなかったことにたくさん出会った。人にも、自分にも。
子ザメちゃんのおでかけを見かけると、ふいに自分のおでかけに重なることがある。子ザメちゃんは、いつもとても幸せそうで。そんなとき、ぼくも自分のおでかけをふり返る。今日も、どこかへ行きたいな。と、毎朝思っている。
おでかけ子ザメ - ペンギンボックス(2022年)