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『しろくまちゃんのほっとけーき(51さいおめでとう)』

★絵本シェルフ★

『しろくまちゃんのほとけーき(51さいおめでとう)』

自分が書いた本を、「ちゃんとした本」という形でプレゼントできる立場の人(作家)っておそらく限られていて、しかもそれが「ちゃんとした本」の形になっていたとしても、読まれるかわからない。読まれないとしたら、廃棄される食べられなかった食品みたいだ。ブックロス(新語)。自分のまわりを見渡す限り、たった今、自分の書籍を「ちゃんとした本」という形で届けたとしても、そのブックロス率は、ものすごく高そうだ。95%くらいだろうか。ん? もっと高いかな?

そもそも『ぐりとぐら(選んだのは青い子篇)』に書きましたが、「ちゃんとした本」が威圧感を与えることもある、というのは小学1年生のときに自分自身が身をもって感じたことですし。

そして昨日、高校2年生の女の子、業務スーパーちゃんにおそるおそる(?)聞いてみたら……

「本ですよね、ほぼ1冊も読まないです。読んでも30ページが限界です!」

にっこり答える業務スーパーちゃん(※安売り大好き)。

「え、でも30ページは読めるんだ。すごいじゃん」

「あは! 半年くらいかかりますけどね」

再びにっこり答える業務スーパーちゃん(※野菜の直売に行くJK)

毎日のようにAmazonがやってくる自分の感覚を基準に考えちゃだめだ。今、ぱっと頭に浮かんだのは、相撲部屋のちゃんこ当番である力士が、大量の食材と大鍋で離乳食を仕込んでいるこっけいな図。

いいのかなぁ……こんなちょっとでいいの? これで食事って言える?

いいのかなぁ……こんなちょっとでいいの? これで書籍って言える?

「これ読んでみてくださーい」と、普段読む習慣のない人に気軽に届けられるのは、栄養に気をつかったひとすすりで十分な離乳食。あるいは丁寧につくらた気軽に食べられるおやつ。ちょっと共感して、誰かにおすそ分けできるもの。サプリメントのようなエネルギーになるもの。数分でリフレッシュできるもの。短い動画みたいなもの。

そうしたものを、たくさん(1000作くらい)作っているうちに、離乳食が食事になったり、お菓子の詰め合わせやギフトセットみたいな形が出来ていくのかな。2017年3月から時間ができるので、離乳食も作ってみたい。不気味なサプリメントも製造したい。ちゃんとしたふつうの食事も整えたいし、斬新なギフトも作ってみたい。

今日から「ちゃんとした本」という形以外を「本じゃない」とみなす感覚を改めよう。そんなわけで、『絵本シェルフ』と冠した一連の本の第一篇『ぐりとぐら(選んだのは青い子篇)』を書き終えたので、誰に知らせようかなぁと考えた。ブックロスを防ぐには、業務スーパーちゃんの好きな直売方式が有効か。

普通に考えると、虹色きららのお母さんである、ぐりとぐら好きの「C・まゆみん」(広島カープファン)だけど、しばらく考えて、絵本が好きそうな手芸作家「ちーさん」(玄関に灯油をこぼしたばかり)と、息子にバレンタインのチョコをくれた優しい「スノーウィさん」(昔ヴェスパに乗っていた)、そして私のソウルメイト、夢見る宇宙派詩人「エンリコちゃん」(秋田在住)にLINEしました。

するとちーさんからLINEで返信があり。

「先生の文にウンウンと同じ感情です読んでおりました(^-^)」

句読点のない、天才的手芸作家らしい率直で詩的な感想をいただけました。

文のどこにウンウンしてもらえたのか、そのポイントはわかりませんが、顔文字から推測するに、たぶん低学年のとき「本より絵本に助けられた」というニュアンスのところに反応されたのでは? ちがうかな。

「ちーさんのお好きな絵本がありましたらタイトルが知りたいです」

と書き添えていた部分に対しては

「好きな絵本は沢山あり今思いつくのは……わかやまけんさんのこぐまちゃんシリーズ」

とありました。

こぐまちゃん! 

こぐまちゃんシリーズについてはちょうど書きたいことがありました。

***

息子ハルキ(現在9歳11か月)の誕生日になると、文京区からバースデーカードが届きます。

差出人はこぐま社

どのようないきさつで届くようになったのかはわからないけれど……手描きで宛名が書かれてます。毎年毎年届きます。カードがとてもかわいいので、誕生日でもないのに、毎日毎日教室の見えるところに飾っています。

たった今、ネットで調べたら、『読者はがき』を送ったり、『サイトで登録』すると、お誕生日カードを送ってもらえるそうです!

たぶん妻が読者カードを返送したのだと思います。そういう情報は妻の年子の妹「あこに」(『MOE』の愛読者)がもたらしてくれることが多いのです。

息子が3歳くらいだったかな。よく読み聞かせしていたのは『しろくまちゃんのほっとけーき』でした。私が一番好きだったのは、

「おいしいね、これしろくまちゃんがつくったの?」

「そうよ、おかあさんといっしょにつくったの」

というセリフです。ここにぐっときます。私がここのやりとりを声色を変えて堂々と読むので、ハルキもこのページがくると私の顔をのぞきこんで、読む前から笑い出しそうな顔になっていたものです。

おいしそうなほっとけーき。

自分ひとりが作ったんじゃなくて、「おかあさんといっしょにつくった」のが自慢になるその感性に、ウンウンと同じ感情です!

ハルキが5歳くらいのある日、公園でサッカーボールを蹴っていると(リフティングのフリースタイル)、周りの人に「サッカーやっているんですか?」と聞かれたことがあった。

「はい。遊びみたいなものですけど」

「チームに入ってるんですか?」

「いえ、一人で練習してます」

一人で練習している、という私の言葉を聞いて、ハルキが猛烈に怒った。

「パパ! ひとりじゃないよ、ハルくんといっしょでしょ!」

その頃は今と違って、ハルキと一緒に練習しているという意識はぜんぜんなくて、完全に自分の趣味としてボールを蹴っていたんだけれど、ハルキは違った。私のそばでウロチョロしているだけだったけれど、本人としては練習しているつもりだったんだ。今でもよく「チームに入っているの?」と聞かれるが、そのときは

「そうです、息子とふたりで練習してます」

と答えるようにしています。しろくまちゃんが胸を張ってこたえるように。

そんな息子ももう10歳。別のサイト情報だと、10歳になるとこぐま社のバースデーカードはラストになるらしいです・・・。

10歳にラスト1枚が届くのか、10歳は届かないのかわかりません。

10歳はもう子どもじゃないんですね。

そして気づくとバースデーカードをもらってばかりで、こぐま社50歳の誕生日をお祝いするタイミングを逃していました。

私はひとりで仕事をしていますけれど、こぐま社センパイを見習ってがんばりたいです。

あ!

「ひとり」で仕事をしているんじゃないや!

この本にも、たくさんの仲間や生徒が登場しています。

ありがとうございます。

こぐまちゃんのカードのおかげかな。誰の誕生日というわけではないけれど、毎日毎日「たんじょうびおめでとう!」「どうもありがとう!」な気分です。


***

『しろくまちゃんのホットケーキ』を実写版にしている方がいらっしゃいました。すばらしいです!

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Jの先生 / 藍澤誠
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