人間の学校に行くね『ポニイテイル』★45★
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「ブラックフォール?」
「しかもひとりで! プーコには一生ムリでしょ、あの滝に行くのは。ブラウニー図書館なんて大したことないし」
ところが意外にも、プーコはちっともひるみません。
「フフフ。そんなのすごくないよ。だって、ブラックフォールってぜんぜんあぶない場所じゃないんでしょ」
「ぬ?」
「それどころか、あまいにおいがして、すごく気持ちいい場所なんだってね。そんな安全なところ行っても、ぜんぜん自慢にならないし」
「ぐはっ!」
な、なぜそれを?
「ブラウニーの大図鑑にはなーんでものってたよ。安全なブラックフォールの黒い竜のことも」
「マジか!」
「じゃあ、また明日。ていうかさ、明日があたしたちの誕生日なのは覚えているよね?」
「え? そうだっけ?」
あどはハムスタみたいな顔をして頑張ってとぼけました。そうでもしないと、ブラックフォールの戦利品、『ユニコーンの角』を取り出しちゃいそうだったから。
それにしても……プーコはいつにもまして元気です。
「明日のあたしたちの誕生日会はさ、ブラウニー図書館でやろうよ。あどちゃんにはちょっとこわいかもしれないけど、この町で一番高いフロアを案内してあげる。とっても見晴らしがいいんだから。ぜんぜんこわくないブラックフォールだって見えるんだよ。じゃ、また明日ね!」
「あ! 待って!」
「じゃあね。バイバーイ!」
「ねぇ、ちょっとプーコ! 明日はズル休みはなしだよ。ちゃんと学校に来くるんだよ!」
ズル休みはホント、やめてほしい。この日——7月6日火曜日、プーコは遅刻ながらも一応来たけれど、その前の7月5日月曜日は欠席でした。プーコは6年生になるまで、一度も学校を休んだことがありませんでした。一度も休んだことがなかった子が、休んだのです! だからあどは悲しくて……ついに『その日』が来ちゃったと思ったのです。
『やっぱ、あたしも人間の学校に行くね』
親友に休まれて取り残されたあどの頭に、そんな『言われてもないセリフ』がこだましました。
学校を休んだ理由は、ウチがヘンな話ばっかり作って書かせるから?
それにプーコは『人間だけの中学校』へ行くための受験勉強を、毎日せっせと家でしているようでした。
『やっぱ、あたしも人間の学校に行くね』
言われてもないセリフがふたたびこだまします。ブラウニー図書館へ向けてツバメのように飛び立とうとするプーコの背中へ、あどは慌てて叫びました。
「ねぇプーコ! 今日みたいに……遅刻もヤダよ。心配しちゃうから、ちゃんと午前中に来てよ! 昨日みたいに休まないでよ!」
このセリフ、あどがプーコによく言われていたセリフです。
「わかってる、わかってる。自分の誕生日に休んでどうすんの!」
「明日、ゼッタイ来てよ! プーコへのプレゼントもちゃんとあるんだから」
「マジ?」
「マジマジ!」
「どうせ、ドブネズミのしっぽとかでしょ」
「もっともっと、ずっとずっといいものだよ!」
「そうなの? じゃあ、一応……期待しないで待ってるよ。じゃ、行ってきまーす!」
プーコは笑顔で手を振って、教室のバルコニーから飛び去りました。もう二度と会えなそうな感がマックスです。そして予想通り——誕生日の1日前であるこの7月6日火曜日が、『プーコと2人で物語を作った最後の日』となりました。
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