モラハラ、パワハラ、精神的DV:その違いと立証の難しさ
現代社会では、ハラスメントの問題がますます重要視されています。中でも、「モラハラ(モラルハラスメント)」「パワハラ(パワーハラスメント)」「精神的DV(ドメスティックバイオレンス)」は、心の健康を脅かす深刻な問題として認識されています。しかし、これらの概念の違いや、それぞれの立証の難しさについては、まだ十分に理解されていないことも多いです。
1. モラハラとは?
モラルハラスメント、通称モラハラは、他者の精神的な尊厳を傷つけ、持続的に精神的な苦痛を与える行為を指します。これは職場、家庭、学校など、あらゆる場面で発生し得るものです。モラハラの特徴は、その攻撃が言葉や態度を通じて行われることです。たとえば、繰り返し侮辱したり、無視したり、相手を意図的に混乱させることで、精神的に追い詰めることが含まれます。
モラハラの特徴
直接的な暴言や侮辱は避けられる: モラハラでは、「馬鹿」「デブ」「死ね」などの直接的な暴言や侮辱はあまり行われません。むしろ、もっと微妙で巧妙な方法で相手を精神的に追い詰める傾向があります。
典型的な喧嘩の範疇に入る行為で精神的に追い詰める: 例えば、出された料理に対して「不味い」とは言わず、溜息をつきながら食べる、あるいは無言で食べるなど、何度も繰り返されることで、相手を精神的に追い詰めることがあります。また、相手の存在を無視することもモラハラの一種です。
後出しジャンケン: モラハラの典型的な手法の一つに「後出しジャンケン」があります。これは、相手が何か行動を取った後に、それを非難したり、「そういうやり方は良くない」と後から言い出すことで、相手を混乱させたり、自己評価を低下させる手法です。例えば、「仕事をしたい?」という問いかけに対し、「したい」と答えれば「家庭は誰が守るんだ」と言い、「したくない」と答えれば「家計に協力しないのか」と非難するような、どの答えを選んでも相手から批判される状況を作り出すことです。
モラハラの立証の難しさ
モラハラは、その性質上、立証が非常に難しいです。まず、物理的な行為が伴わないため、目に見える証拠が残りにくいです。また、直接的な侮辱や暴言を使わないため、外からは分かりにくいのが特徴です。さらに、モラハラを行う人は、他人がいる前では決して行動に移さず、逆に周囲には非常に優しく丁寧に接することが多いです。このため、被害者が孤立しやすく、周囲からの理解も得にくくなります。モラハラは長期間にわたって徐々に相手を追い詰めるため、証拠を集めるには長期的な取り組みが必要です。しかし、日本の司法では物的証拠が重視されるため、モラハラの立証は非常に不利な立場に置かれがちです。
2. パワハラとは?
パワハラは、職場で上司が地位や権力を利用し、部下に精神的な攻撃を加える行為です。過度な叱責や無理な指示が含まれ、被害者が抵抗しにくいのが特徴です。
パワハラの立証の可能性
パワハラには、時には物理的な暴力や威圧が伴うこともありますが、主に言葉や態度による精神的な圧力が中心です。そのため、証拠が残りやすい場合もあり、モラハラに比べれば証拠が取りやすいといえます。
3. 精神的DVとは?
精神的DVは、家庭内や親密な関係での精神的虐待を指します。パートナーや家族に対し、言葉の暴力や無視、孤立させる行為を通じて心理的に支配する行為です。
精神的DVの立証の難しさ
精神的DVは家庭内での問題であるため、外部に漏れにくく、証拠が残りにくいのが特徴です。物理的な威圧行為が伴うこともありますが、立証には困難が伴います。
4. モラハラ、パワハラ、精神的DVの違いと共通点
共通点
これらのハラスメントには、いずれも加害者が精神的な優位性を保つために相手を支配し、精神的な苦痛を与えるという共通点があります。被害者は、自己価値感が低下し、深刻な精神的ダメージを受けることが多いです。
違い
物理的な行為の有無: モラハラは主に言葉や態度による攻撃であり、物理的な行為は伴いません。一方、パワハラや精神的DVでは、物に当たるなどの物理的な行為が含まれることがあります。
立証の難易度: モラハラは立証が非常に難しいのに対し、パワハラや精神的DVは物理的な証拠が残ることがあるため、やや立証しやすい場合があります。
まとめ
ハラスメントの被害は、心の中に深い傷を残します。モラハラ、パワハラ、精神的DV、それぞれが持つ特徴と違いを理解することは、被害者を守り、支援するために重要です。特に、モラハラのような証拠が残りにくいハラスメントに対しては、社会全体での認識と理解が求められます。
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