クローズドサスペンスヘブン | 読書感想文 #1
こんばんは、うえおです。読書感想文の記念すべき1投稿目!
五条 紀夫さんの「クローズドサスペンスヘブン」についての感想文です。
新潮文庫 クローズドサスペンスヘブン 五条紀夫/著 693円(税込)
1. はじめに
天国屋敷へようこそ――
え!?俺イケメンなの?
書店にたくさんの本たちが並んでいるなかで、一際目立っていたマゼンダ色の帯には「湊かなえ 道尾秀介 お墨付き!!」の文字。
私が作家買いという概念を知り、それを実行するきっかけとなった作家、湊かなえ。
人生の中で一生忘れられないであろう衝撃を与えた小説を書いた作家、道尾秀介。
その二人がお墨付き?!私にとって効果抜群すぎる宣伝文句にまんまと惹かれ、ほとんど無意識的にレジに運んでいました。
はじめから登場人物は死んでいるという、言わば最大のネタバレをされている状況から始まるミステリ。読む前からわくわくが止まりませんでした。
2. 感想
全員死んでいて、舞台は天国でありながら全員の殺害現場を模した屋敷。そして登場人物はみんな記憶を失っているが、見た目の特徴からあだ名を付けられるほど個性的。天国である前提なので、現実ではまずありえない、ファンタジックな出来事も起こりうる……などなど、すごくメディア化に向いているなと思ったのが読んでからの第一印象。
メイドの服装をしているからメイドさん、ポーチを下げているからポーチさん、人相が悪く小指がないからヤクザさん(本当にそうだったらどうするの!!命知らず!!命はもうないけど!!)
主人公・ヒゲオが満場一致でイケメンと称されているところも含めて、映画化の流れが見える見える笑
読み進めていき、真相解明に入った時、自分でも「やっぱり!」と、「なるほど!」となるくらいのちょうど良いヒント、伏線の散りばめ方。感情移入とは少し違い、常に主人公と読者である自分の足並みが揃っているな、という感覚があります。特に、主人公が何を思ってポーチさんにカメラを借りたのかがわかる。自分がその場にいたのなら同じことを提案しただろうなと思えるほど主人公と思考が合致する瞬間。それが気持ちよかった。
(自分が鈍すぎるがあまり、ミステリにおける探偵役に置いてけぼりを食うことが多々あるのです……)
⚠️ここからは本筋にも触れていきます!
きっと天国屋敷で呼ばれているあだ名と、生前のロールは異なるのだろうなとは思っていました。ちょうど良いヒントのおかげで、その中でもオジョウが生前では本当のメイドなのだろうとだけは気づけました。そこからの真相解明で、各人の本来のロールが明らかになるのですが、オジョウ、コック、メイド、ヒゲオは、生前の姿と天国屋敷での姿との繋がりや差異?に妙な納得感があります。現実ではあのような人生だったから、天国屋敷ではそのような姿になったんだね、と。
基本的に、天国屋敷では自分が想い望むような姿になっていたようです。
途中で登場人物たちが一度辿り着きかけた、ヒゲオの二重(あるいは多重)人格説、個人的にはかなり好きです。ジキルとハイド的な設定が大好きなので。
でもそれだと諸々に全然説明がつかないもそれはそう笑
それでヒゲオがみんなに犯人だと疑われて、違う!と連呼したのは、単に自分が犯人であることの否定なのか、本能的なところで成瀬秀明は殺人なんかしない!という信仰の結果なのか?読者視点では“ヒゲオの見た目=現実世界のイケメン俳優 成瀬秀明だが、ヒゲオの生前の姿≠成瀬秀明”だとわかっているからできる妄想であって、作中ではその時点ではみんなの真の姿とかわかっていなかったはずなので、普通に前者だと思うのですが。後者も含んでいると嬉しいな。湿度の高い、重苦しい感情が大好きなので。
結末は、ある種のメリバだなと思えたので私は満足しています。
真相解明だけでは成仏せず残された4人が、本名や生前での人となりを知ってからも、あだ名で呼び続けていたことも、現実から目を逸らしているようで。
→これは読了後すぐに手元のノートに記していた感想です。が、しばらく経ってから思い返したとき、やっぱりメリバよりさらに悪い結果では?!というか、別に何にもなってなくないか?!となった旨が追記してありました笑
天国残留組で勝手に絆っぽいものが生まれているだけで、無理やりハピエンっぽく終わらせたような…と。
note執筆現在も、「メリバよりさらに悪い結果」というのには概ね同意ですし、どちらにせよ満足は満足。
なにはともあれ、私くらいは成瀬秀明と国沢春斗を心の底から祝福したいなと思いました。誰か一人でも彼らを祝福する人がいたのなら、この天国屋敷は存在しなかったかもしれません。
作中で登場した人物の中で、国沢秋夫だけがどこを切り取っても悪人……というか、救いようのないどうしようもないやつ感があって、ヴィランっぽく感じました。
いや、それでいえばヒゲオもヤクザさんもそうだとは思うけれど!
ポーチさんに関しては、すごくリアリティがある人柄をしていました。(私たちの生きる)現実にもそういう人いるよなぁという感じ。LGBTQ(などのセンシティブな話題)について、あーだこーだと変に気を遣っているというか。無意識下で気を遣って"やっている"が滲み出ているというか。ほっといて欲しい人もいるよね。
3. 総括
成瀬秀明と国沢春斗も含めて、全員が自分本意で生きて、誰かを傷つけて傷つけられた結果死んだのだな、と思いました。どんな聖人もどんな悪人も、こういう末路を辿るんじゃないかな?自分も含めて。
4. この本をおすすめしたい人
全員すでに死んでいて、舞台も天国というファンタジックな特殊設定、主人公と並走して謎を解いていけるくらい適度に散りばめられた伏線など、読みやすい要素がたくさんあるように感じました。ミステリ初心者や、普段本をあまり読まないよーという方にもおすすめしやすいです。
5. おわりに
読書感想文1本目、無事書き終えました。はじめの一歩とはいえ気合が入りすぎてしまったのか、思っていたより長くなってしまいました。
思えば、人に読んでもらう文章を書くことも久々な気がします。支離滅裂になっていなければよいのですが……。
サムネイルのイラストは、「取り上げる本を象徴するもの」や、「読んだ人にはわかるもの」を差し込もうというマイルールがあります。今回は、後者の「読んだ人にはわかるもの」として選定しました。(フリーのイラストを使用させていただいています!)伝わる方がいれば嬉しいです。
また更新します。最後まで読んでいただきありがとうございました。
うえお