「対等な国際協力とは」についてV-ACTが考えてきたこと
みなさんは国際協力と聞いてどのようなものをイメージするでしょうか。アフリカに井戸を作る。カンボジアに学校を作る。そのようなイメージを持っている方が多くいると思います。もちろん、私たちはそのような活動を否定するつもりもありませんし、それらの活動が多くの人を救ってきた事実も認めています。
しかし、学生団体であるV-ACTは一味も二味も違った観点から国際協力について考えてきました。今回はそんなV-ACTが現在、国際協力にどのような考えを持っているのかについて皆さんに共有できたらと思います。
私たちV-ACTは国際教養大学の学生団体として2011年から活動しています。Vitality-Anyone Can Take ACTion. 活力があれば誰にでも行動を起こせる、をモットーに活動してきました。人と人との継続的なつながりを基に対等な協力関係を構築するという目標を掲げ、フィリピンの小学校やフリースクールなどに訪れたり、秋田県朝市や学祭などでフィリピンのフェアトレード商品の販売を行ってきました。
2023年3月にはコロナ明け3年ぶりの渡航を再開でき、V-ACTにさらなるVitalityが湧いてきました。
しかし、渡航を通じてメンバーの心の中にあった疑問が浮き彫りになってきました。V-ACTの目標の一つである「対等な協力関係」さらには「対等な国際協力」とはどのようなものなのだろう。何が対等で何が対等でないのか。どうして対等にこだわるのか。フィリピンでの活動での一つ一つをV-ACTの理念に重ねて考えることでこのような疑問が出てきました。
具体例を一つ紹介します。
V-ACTは以前、主な活動拠点の一つであるパアアラランパンタオと絵本プロジェクトを行いました。 2023年8月に私の代で2回目の渡航を行い、もう一つの拠点地であるサンホセ村の小学校で私たちは何か同じような協働プロジェクトができないかと考えていました。
サンホセ村の先生方と協働プロジェクトについての話し合いをする機会がありました。その時、私たちが心に留めていたことは「V-ACTからの一方的な提案ではなく、一緒に考えて何をするか決めたい」「対等な協力関係を大切にしているということを理解してほしい」というものでした。しかし、その対談で先生方がおっしゃったことは「V-ACTを私たちの小学校の大切なDonator(寄付者),でありSponserとして考えている」でした。V-ACTは“ものを持つ側“から、“ものを持たない側“への一方的な物質的支援は対等ではないのではないかと考えてきていたため、私は少しショックでした。
先生方に私たちは「対等性にこだわっているためものを送ったり、お金を送ったりはこれからできなくなるかもしれない。」と伝えました。先生方は私たちの理念に理解は示してくれましたが、協働プロジェクトは足踏み状態でした。
さらに部内で話し合いをしている際に「私たちは比較的に裕福でフィリピンで困っている人を助ける余裕、能力があるにもかかわらず、対等性にこだわるためその人たちを助けないという選択をするのは正しいのか。」という疑問が出てきました。どうして対等にこだわるべきなのか、その利点は何なのかをはっきりさせることが重要だと思い、日本に帰国後は毎週の定例で対等な国際協力についての話し合いを行いました。
では、私たちが考えた対等な国際協力について紹介したいと思います。今回だけで私たちが考えたとこを全て書き残すことはできそうにないので3つの軸で主に説明していきます。
1つ目は「対等な関係とはどのような関係か」です。私たちV-ACTは対等な関係にはいくつかの重要な鍵があると考えています。まず、双方の意見は平等に共有される必要があります。さらに、友達の関係のように互いに主体的に相手のことを考えることも重要です。フィリピンの人たちとの関係においても全ての活動をV-ACTの発案で行うのではなく、意見を互いに言い合える、そのような関係が対等な関係なのではないかと考えてきました。最初にもお伝えしたように、現在国際協力という言葉を耳にして多くの人が想像するものとは違った関係性をV-ACTは求めているのです。
2つ目は「どうしてV-ACTは対等な関係を築こうとしているのか」です。対等な協力関係の利点、欠点について皆さんに共有したいと思います。対等な協力関係、国際協力の最も大きな利点の一つは相手の自主性が継続的な発展を支えるということです。国際協力の懸念点として多く耳にするものに支援後の自立ができず、支援が打ち切られたらその後発展することができなくなってしまうというものがあります。支援頼りの考え方やその仕組みがこのような状態を作ってしまいます。対等な協力関係ではまず、相手が主体的に発展、改善したいと考えます。そして私たちと共に何かできることはないかを考えるため、「自分たちの生活に関わる大切なこと」として主体的に取り組むことがより多くなります。
しかし、対等な協力関係には困難も多く存在します。その一つに相手との関係性の維持の難しさがあります。
想像してみてください。自分たちより裕福な人たちがはるばる遠くの国から訪れに来たら何を期待しますか?多くの人はその人たちから物でありお金であり、何か価値のあるものをもらえるのではと期待するでしょう。しかし実際私たちが行おうとしているのはその期待を裏切ることになるものです。物質的支援や金銭を送ることはできるだけ避け、自主的な意思に基づく発展を協力する関係を目指します。彼らはある意味失望するかもしれません。自分たちよりもお金を持っているはずの人たちは私たちを助けてくれないのだと受け取られてしまう可能性も存在します。そのため重要なことは、どのように私たちとの関係性を理解してもらえるかだと思います。私たちはお金をくれる団体ではなく友達のように隣で支え合ってくれる存在であると認識してもらうことが大切なのです。これにはかなりの時間や苦労が伴うと思います。今までの固定概念を壊し、新しい関係を構築することは極めて大変なことだと思います。
最後にV-ACTの19期代表として考えてきたことを皆さんに共有したいと思います。私がメンバーとして活動してきた中でV-ACTの可能性を多く感じてきました。例えば、V-ACTは学生団体であるということを強みにもできると考えています。私たちはお金も知識も技術も他の国際協力団体に比べると少ないです。このことは相手もわかっています。そのため私たちは先ほど述べた「期待」が他の国際協力団体に比べると小さいのです。期待が小さい分V-ACTは彼らに私たちの理念である対等な関係を理解してもらいやすくなります。専門性や技術、お金を持たないことが強みとなっているのです。
以上が私たちがここ1年ほど考えてきたことの一部になります。V-ACTは一つのサークルであり、毎年新しい部員が入ってきます。それぞれの代で考えること、大切にしようとする理念など変わってくると思います。むしろ変わっていってほしいとも思います。変わらず大切にしようと思うもの、新しく変化を求められるもの、新しいV-ACTが国際協力にどのような風を吹き込んでくれるのかを楽してしています。
東 翔太郎