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Startup Weekend苫小牧vol.5

はじめに

7/19-21の日程で行われたStartup Weekend(以下、SW)苫小牧vol.5にてファシリテーターとして務めさせていただきました。


SWとは?といったご説明は先だってのSWファシリテーター就任所信表明内で記載しておりますので、そちらをご覧いただければ幸いです。

また、当日の様子など、公式レポートはオーガナイザーにより作成予定ですので、こちらは私目線からのレポート、裏話に書かせていただきます。
このくだり、ぼちぼち恒例になってましたので、過去の裏話を観たい方は下記マガジンよりどうぞ。

審査から学んだこと

毎回のことではありますが、今回は特に審査の過程で学ぶことが多かったです。通常の参加者では聞けない審査過程なども含めて体感できるのがファシリテーターのメリットだったりしますね。

SWの審査基準について

まず前提として、SWの審査基準は全世界共通で、下記の3項目です。

①Validation【検証】:顧客に実際に会いそこに課題があることを検証出来ているか。課題解決は検証されているか。特定の市場を定義し検証出来ているか。
②Execution and Design【実行とデザイン】:MVPやプロトタイプを作ったか。テクニカルデモがきちんと動作するか。UI/UXに考慮しデザインされているか。
③Business Model【ビジネスモデル】:成功するビジネスとして計画出来ているか。顧客が製品・サービスを買う価値をきちんと提供できているか。独自性はあるか。

ここまで読んで気付く方も居るかとは思いますが、SWの審査基準は、ビジネスアイデアコンテストとは違って、その事業がスケールするかなどいった”結果評価”ではなく、"行動評価"です。
これはそもそもSWが”起業家体験イベント”であって、54時間の中で起業家が取るべき行動を取れていたかが評価されるものであって、アイデアやビジネスがrich/poorか、という観点ではないことや、そもそも実際のビジネスにおいては不確実性が高く「やってみなければわからない」ということが根底にあるからです。
少なくとも私がファシリテーターを務める際には審査員にこのような観点をお伝えしたうえで審査いただいてます。(不慣れな初期には抜かしてたところもあると思いますが…)

そして、上記の3つの項目についてそれぞれ1~5点をつけ、審査員毎の点数を集計したうえで、その数値を参考に1~3位を決めていただいています。(たとえ僅差だったり団栗の背比べであっても、1~3位を決める事はとても大事)

以下の点は上記前提を踏まえてお読みいただければ幸いです。

学んだことその①~「置きに行く」のも善し悪し

今回のSW苫小牧は、複数回参加者や、既に起業されている方、ベンチャーやスタートアップ経験者、自分では起業していないもののそのようなイベントに慣れている人も複数参加していました。

そういった経験が多いと、審査基準の理解も早いため、イベント内で求められるものが分かり、資料作成やプレゼンでも「慣れてるな」というチームも散見されました。
当然のことながら、そのようなチームは自然と点数も高くなり、審査としては高評価になる傾向にあります。

ただ、それで本当に良いのでしょうか?
蓋然性を求める助成金や補助金ではそれでよい、という話になりますが、このイベントはアントレプレナーシップを醸成するものです。
イベント内では「ルールがないのがルール」と言っておきながら一定の審査基準で評価せざるを得ないのも矛盾しており、実際、審査員の中でも「まぁ良いっちゃ良いんだけど…」という雰囲気が流れました。

その結果が、2位、3位でありながらも審査員のコメントは辛口だった、という事につながりました。もちろん、「置きに行った」という感覚はなく、精一杯行動した結果として、最善を尽くしたものではあろうかと思いますが、表現の仕方次第ではこのように映ってしまうのも大きな学びではあったと思います。

学んだことその②~「八方良し」をどう目指すか

審査の中でも話題に上がったのは「市場性」と「社会性」の両立。要は、ビジネスとして成立するか、という点と、それがどう社会に貢献するか、という点。
審査員の総評にもありましたが、何か事業をやると機にはステークホルダーは数多く存在する。サービス提供側にも経営者、従業員、株主、仕入れ先、仲介業者、販売パートナーが存在するし、購入側にも同様に多種多様な方々が関わっており、その一つが地域社会でもある。
今回のアイデアの中では、「社会的には良いけどビジネスとしてはちょっと…」あるいは「ビジネス的には一定度売れそうだけどそれやってどうするの…」といったことも議論に上がった。
それらが「八方良し」という言葉に集約されていたように思います。自分だけが良いビジネスも続かないし、社会貢献だけでも補助金頼りになってそれはビジネスとは言い難い。

わずか54時間の中で考えを尽くすのは難しいのかもしれないけれど、他地域ではそこまで考えてしっかり検証もされていたチームもあることを思うと、制限時間だけのせいにするのはちょっと違うのかもしれません。

学んだことその③~最終的には”応援したい”と思わせるかどうか

先ほど記述した通り、不確実性が高い現代、そしてアントレプレナーという文脈においては、いくら項目で評価しても結局のところは「やってみなければ分からない」のが事実。
だからこそ、審査の中でも、複数チームの発表を聞き終わった中で、審査員の心にひっかかり、話題にあがったチームが最終的に評価された、のは必然だったのかもしれません。(もちろん、点数はベースにしつつ)

ビジネスとしてはツッコミどころが多い。社会的にもそれってそこまで意味があるの?とは思いながらも、審査員が自ら「自分だったらこうするけどなぁ」と語っていたことが、ピッチを行った結果として共感を生み、ファンを作ったということの現れであって、それこそがアントレプレナーとしての重要な要素なのだという事を改めて学びました。
たとえ、会場にほとんどいなくて、コーチングもすっ飛ばして会場で提供された食事も受け取らず主催者側的には勿体ないと思わせるような行動であったとしても、それを自分で選択し、貫いたことこそNo talk, All Actionを体現した事なのだと思います。

もちろん、それを成し得たのはSWに幾度となく参加してその考え方や理念、ノウハウなども十分に吸収したチームメンバーがいたからこそであり、また、課題を持つ人間がチーム内に居て、チーム内での化学反応がしっかりと起こったからこそでもありますが。
やみくもに会場を放棄すればよいわけでも、チームを組むのが誰でも良いというわけでもないことは大前提として。

終わりに

今回書いたのは、あくまでも審査の過程の中で見えてきたことであって、各チームが全力を尽くして54時間を駆け抜けたことは疑いようもないことは、運営側から見れば一目瞭然です。
実際、私が応援したいチームが審査員と同じチームだったわけではないですし(どこかは伏せますが)、そういう意味では、力の尽くし方の方向性や、最終的にどう表現すればよいか、といった観点での参考になれば幸いです。

力を出し切って満足そうな人たちもいましたし、それでも結果が得られなくて悔しそうな人たちもいました。でも、それらを含めて学びなのです。
少なくとも、満足してそこで立ち止まるよりも、悔しさから次の行動に移す方の方が間違いなく成長可能性は高いです。何しろ今回の優勝チームのメンバーには全国のSWに19回も参加しながら初優勝だった人もいるくらいなのですから。(別に揶揄しているわけではなく。おめでとう(私信))

ぜひまた新たな学びを得たい方々とお会いできることを楽しみにしております。次回私がファシリテーターを務めるのは8/23-25のSW人吉球磨。

今回開催した苫小牧からはだいぶ遠いですし、4年前の大水害によりJRも断絶されている地域ゆえ、九州内の方も気軽に来られる場所ではないものの、その中でも地域を盛り上げたいと奮闘しているオーガナイザーがいるからこそ実現した、初開催の場となります。
新たな学びを得たい方は、ぜひお越しくださいませ。

それでは皆様、引き続きNo talk, All actionで参りましょう!

ちなみに今回のカバー写真はいつもの集合写真ではなく、クロージング時に「楽しかった人」と尋ねた際の写真です。皆さんの疲れ切った笑顔が家宝ものです。

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糸川郁己
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