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#184  お気に入り小説に 『東京藝大 仏さま研究室』 を追加

面白い本.読み始めたら,引き込まれる本.読んだ後,世界がちょっと変わって見える本.そんな本と出合えると,嬉しくなります.図書館で背表紙を見て,つい手にして読んでみたくなる本たちとの出会い.

「青春もの」「歴史」「芸術」

 ネタバレを書かないために,ここには敢えて詳細は書きませんが,”文句なし”に面白かったです.

 小説の舞台である東京芸大保存修復彫刻研究室のウェブページを読後に拝見すると,架空の話が”リアリティ”を増します.(読後にご覧になることをお勧めします)

「藝える」(植える)

 ”藝大”という表記は,明治に西周さんが”ART”を”藝術”とい言葉を新たに造語したことによるそうです.旧漢字をいまだに正式名称として使い続ける”芸術家の気概”を感じます.以下の引用からすると,”「芸」 の語は、 「 原意の藝とは反対の意味を持つ字」”だそうです.

・ 「藝」 䛾意味と䛿 [ 今道、75-76頁 ]
- 「も䛾を種える 」 [ うえる, 植える ] 䛾意味
- 「人間精神において内的に成長してゆく或る価値体験を種えつける技」 䛾意味
・ 「芸」 䛾意味と䛿 [ 今道、75-76頁 ]
- 農業用語、 音読み䛿 「うん」 、訓読み䛿 「くさぎる」
- 「草を刈り取ること」 䛾意味
・ つまり、 「芸」 の語は、 「 原意の藝とは反対の意味を持つ字」 [ 今道、6頁 ]  
 出典: 今道友信 『美について』 講談社現代新書、1973年。
【引用元 http://www.iiitak.com/topic/geijyutu-geijyutsu.pdf】

つまり,「藝術」を「芸術」に置き換えると,本来の漢字の意味からすると,「植(藝)える」とは真逆の,「刈り取る」術(すべ)となってしまいます(アラッ,驚き!).

 以下は,私の予想(”妄想”)です.もしかすると西周さん,”Well”(ウエル)と同じ音を拾ったとかしたりして?明治初期に日本の近代化を急ぐあまり,”漢字廃止論”を一時期熱心に説き,すべてアルファベット(ローマ字表記)に使用などと大胆な(かなり無謀な)自説を”ぶち上げた”お方ですので,もしかすると,もしかすると,,,. ”哲学”という言葉などなど,西さんの造語には感銘することが多いので,個人的にはエライなぁーと思っているのですが,文化を断絶するような漢字”放棄”には賛成しかねます.(漢字が残ったおかげで,私たちは1000年以上前の自分たちの歴史の石碑や書を読むことができます.)

「リアル」は時にしんどい

 最近,映画や本で人気があるのは,現実っぽい,寂しい、悲しい話題が多い気がします(個人の感想です).もしかしたら、本の話題はそれほど昔からそれほど変化がなく、自分の人生経験値が増えて作者の意図がより強く感じられるようになったのかも知れません。.
 辛(つら)い現実を”ひと時”忘れさせてくれる,非現実的な世界の本を近頃は選び読んでいます.難しい事を考えず、”単に面白いもの”があることが,”心の安全弁”としてストレスを解放してくれる気がしています.

お気に入りの小説

 私にとってのお気に入りの本を並べてみると,
・「有頂天家族」「熱帯」「きつねのはなし」「夜行」「宵山万華鏡」「山月記」(森見登美彦) ・「鴨川ホルモー」「鹿男あをによし」「ホルモー六景」「パーマネント神喜劇」「悟浄出立」(万城目学) ・「東京會舘とわたし」(辻村美月) ・「アルジャーノンに花束を」(ダニエル キイス)  ・「天地明察」「光圀伝」(冲方丁) ・「美しき愚かものたちのタブロー」「たゆたえども沈まず」(原田マハ) ・「廉太郎ノオト」(谷津矢車) ・「銀河鉄道の父」(門井慶喜) ・「火定」(澤田瞳子) ・その他:(司馬遼太郎,塩野七三,アガサ クリスティ,トマス ハーディ)などなど

 ザっと眺めてみると,歴史上の事実に基づく「小説」と,架空の話(推理小説,青春もの,芸術)に分かれます.それぞれで,”お気楽な”・”クスっと”笑える話と,”重い”・”現実の泥沼”に引き込まれる重い話があります.

Wel(藝える)come 面白い本との出会い

 面白そうだと思って借りた本でも,自分に合わない本だったりすると,最初の数ページを読み返却しています.逆に,おもしろくないかなと思って借りた本が,自分の”お気に入りリスト”上位ランクになる”嬉しい誤算”もあります.という事で,本を借りるときには,「無料」だからという事で気軽に”間口を広げて”借りています.いい本と出合うと”感無量”です. (お後がよろしいようで,,,)

(写真:3年前,東京上野の散策時に東京藝術大学正門でパチリ撮影した一枚)