怒ってばかりの毎日に、1日5分【特別な遊びの時間】を取り入れてイライラ解消!
✔︎子どもが言うことを聞かない
✔︎子どもについ口うるさくしてしまう
✔︎うまく褒められない
こんなことで困っていませんか?
忙しい毎日の中で、つい子どもに「あれしなさい、こうしなさい」と指示することが増え、「まだやっていないの?!」と批判ばかりしてしまう。
褒めることが大事、と頭では分かっていても、うまく褒められない。褒めるところが見つけられない。そんな風に悩んでいる方多いのではないでしょうか?
いつも指示や批判ばかりだと、子どもだってうんざりしてしまいます。また、親の方も疲弊してきて、怒りがエスカレートしてしまったり、子どもの可愛さを忘れて、憎たらしく思えるようになってしまうことさえあります。
そんな時に取り入れていただきたいのが【special time】です。
special time(特別な遊びの時間)とは
special timeとは、親が子どものリードに従う時間のことです。
※special timeは、PCIT(親子相互交流療法)の中の一つのプログラムです。
PCIT: 幼い子どものこころや行動の問題、育児に悩む親(養育者) の両者に対し、親子の相互交流を深め、その質を高めて回復に向かうよう働きかける心理療法。多くの研究で効果が確認されている。詳しくはこちら
どうやって子どものリードに従うかというと、
親が子どもの行動に対して ◻︎繰り返す ◻︎真似る ◻︎説明する ◻︎ほめる ことを、◻︎楽しんで行います(これをDoスキルと呼ぶ)。
一方で、この時間の間は ◻︎指示・命令 ◻︎質問 ◻︎批判 はしないようにします(これをDon'tスキルと呼ぶ)。
このようにDoスキルとDon'tスキルを駆使することで、親から子への肯定的で温かみのある関わりを増やし,支配的・強制的な関わりを減らすのがspecial timeの目的です。その結果として、親子関係が安定し、子どもの問題行動の改善や親のイライラの軽減にも繋がっていくのです。
それでは次の章で、具体的にspecial timeをどうやって実生活に取り入れていくのか、みていきましょう。
special timeのやりかた
special timeは、親子一対一の関わりを良くするためのものです。そのため、きょうだいがいる場合にも出来るだけ一対一の時間をつくります。(下の子がお昼寝している間や、きょうだいを先にパパにお風呂に入れてもらうなどする)
とは言っても、ワンオペで現実的に毎日その子だけに時間を割くことが難しい場合もありますよね?そんな時には、きょうだいで順番に行ったり、「今日は〇〇、明日は△△ね」と、日によって交代しても良いと思います。
special timeをすることが親のストレスになってしまっては元も子もないので、無理せずできる範囲で始めてみましょう。
それでは、special timeの流れです。
①子どもの好きなおもちゃをいくつか準備しておきます
※ 組み立てて遊ぶ 創造的なおもちゃが推奨される。(例: 積木、ブロック、リンカーンログ、ポテトヘッド、人形付きドールハウス、クレヨン、ステンシル、紙、動物の人形付き農場、ねんど・型抜き、動物の小型ぬいぐるみ、小型プラスチック製人形、ままごとセット
汽車セット、車の付いたガレージセット など)
②タイマーを5分にセットして「これから特別な遊びの時間を始めます。好きな遊びをしてね。」と子どもに伝えます。
③子どもが遊び始めたら、DoスキルとDon'tスキルを意識して声掛けしながら一緒に遊びましょう。
◻︎繰り返す では、子どもの発言をおうむ返しすると、やりやすいです。子どもが「何しようかなー?」と言ったら「何しようかなー」と言ったり、「おうちつくってるの」と言ったら「おうちかぁ」や「おうちつくってるんだ」などと返します。
◻︎真似る では、子どもがやっていることを同じようにやってみます。子どもが紙飛行機を作ったら、同じように作ってみる。ビューンと飛ばしたら「ビューン」と同じように飛ばしてみる。
◻︎説明する では、子どものやっていることをそのまま言語化します。スポーツの実況中継のイメージです。「赤い折り紙を選びましたー」「山折りしています!」「人差し指で、力強く折れ線をつけていますね」など。
◻︎ほめる では、子どもが頑張っていることや、良くできている部分について褒めます。「壊れないように、慎重に作業を進めていますね」「さすがです」「素晴らしい発想ですね」「なんて素敵な〇〇なんでしょう」「本物の〇〇みたいですねー」「こんな〇〇見たことありません!」など。別に敬語である必要はありませんが、別人になったようなつもりで話すと、大人も面白くなってきたり、褒めることへの照れも少なくなる?ような気がします。
こうした一連のDoスキルを楽しんで行いましょう!
はじめのうちは、全部のスキルをやることは難しいと思います。それは当たり前。徐々にレパートリーを増やしていきましょう。
④タイマーがなったら「今日の特別な時間は終わりです。」と伝えて、おしまいにしましょう。
再現なく行うと、次第にDon'tスキルが発動して「これやってないなら片付けようよー」とか言いたくなってしまうと思うので、special timeの5分間だけはDon'tスキルを封印する!と心に固く誓って、しっかり切り替えをすることも大切ですね。
これだけで本当に関係が良くなるの?と思うかもしれませんが、誰にも邪魔されず大好きな親を独り占めできることや、親が自分に合わせてくれることは、子どもにとってなんとも心地よく幸せな時間です。
そうして良い関係が築けると、親から子どもへの指示も入りやすくなります。
さて、ここまで読んで「真似する」「褒める」のが大切というけれど、不適切な言動に対しても、Doスキル使っちゃっていいの?と疑問に思った方もいるかもしれません。
そんな時に役に立つのが【無視のスキル:選択的注目】です。
望ましくない行動への対処(無視のスキル=選択的注目)
子どもが望ましくない行動(例えば「う〇ち」や「死ね」など不適切な発言、大声を出す、ブロックを口に入れる・投げるなどの行動)をしたときには、無視のスキル(=選択的注目)を使います。
選択的注目では、良い行動に注目をして、良くない行動には注目をしません。
言い換えると、適切な子どもの行動には関心を向けますが、(安全面に心配がない限り)気を引くための行動や不適切な行動は積極的に無視、スルーします。
例えば、大きな声を出している間は、無言で子どもから顔を背けます。そして、静かになったところで再び子どもの方を向いて笑顔で「静かにしてくれてありがとう」「上手に〇〇しているね」など声を掛けます。
子どもにとっては、良い注目でも悪い注目でも、実はご褒美になってしまいます(だからわざと親を怒らせたり、困らせたりすることをするのです)。
だから、本当にやって欲しくない行動に対しては、安全に問題がない限り、無反応でスルーするのが正解です。
年齢が高い子どもの場合はどうする?
PCITやspecial timeの方法論は、主に2〜7歳のお子さんを対象としたものとなっています。
ただし、DoスキルやDon'tスキルで相手との関係を良くすること、選択的注目をすることで望ましい行動を増やし、問題行動を減らすことは、幼い子どもに限ったことではなく、ひと全般に応用可能な行動の理論です。
とは言っても、小学校高学年や思春期のお子さんに「これから特別な遊びを始めます」というのも、なんだかちょっと変な感じがしますよね?
そこで、年齢が高いお子さんには、食事の会話の際などにDoスキルやDon'tスキルを意識して声掛けすることが勧められています。そうすることで、お子さん自身が「自分の話をちゃんと聞いてもらえている」「わたしのことを受け止めてくれている」と安心感を感じることができます。
special timeの効果&まとめ
ここまでspecial timeが親子の関係をより良くすることや、子どもの問題行動を改善する効果があると書いてきました。
他にも、special timeを実践することによって、きょうだいの行動まで改善されたり、幼稚園などのクラスの別の子どもにも効果が波及することが確認されています。
元々は褒めるのが苦手だった方も、special timeの間だけは頑張って褒めることを意識して行うことで、徐々に日常でも自然にほめたり「ありがとう」と伝えられるようになった方もいらっしゃいます。
お子さんとの関係を変えていくことに、遅すぎることはありません。怒ってばかりいる毎日、子どもとの関係を変えたいな・・と思っている方、ぜひ今日から【1日5分のspecial time】始めてみませんか?
今まであまり褒められた経験がないお子さん(特に思春期)だと、褒められてもはじめは反応に困ってしまい、拒絶的な反応が返ってくることもあるかもしれません。
でも必ず、伝えた言葉は耳に入っています。子どもは親が想像する以上に、親を頼りにしているものです。
子どもにとっての安全な場所を家の中で作っていく、安全基地を強固なものにしていく、そのためにも、まずは自分から変わることが必要なのかもしれません。
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長文にもかかわらず、最後まで読んでくださった方、ありがとうございます!!
この記事は、以下の資料を参考にして書かせて頂きました。少しでも多くの困っている親御さんに届くよう、祈っています。
参考資料
◼️PCIT Japan http://pcit-japan.com/custom.html
◼️ウワサの保護者会「さようなら!子育てのイライラ」https://www.nhk.or.jp/hensei/sp/program/article/?area=001&date=2020-02-15&ch=31&eid=33804&f=3465
◼️小平かやの(2019)虐待事例への支援と治療的介入─PCITの実践─ 小児の精神と神経 59(2), 184-190 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsppn/59/2/59_184/_pdf/-char/ja
◼️はじめましてPCIT https://medical-society-production-tkypa.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/uploads/theme/pdf/514/20190302_002.pdf