菅平(すがだいら)から思いをはせる
我が家では夏に恒例の行事があった。
息子が合宿に行く長野県菅平(すがだいら)に練習試合を見に行くこと。
部活のママたちがみんな行ってて、
「行かないの~?向こうで遊ぼうよ。」
「えー?いいよ。めんどくさいし。」
だったのだが、一度行ってみたらこれがやけに楽しい。
最初はひとりで運転して日帰りで帰ったが、夕方の関越自動車道の渋滞に辟易し、日帰りはやめることにした。
「どこに泊まるの?」
「うちは行きつけのペンションがある」
「ペンション?」なんとも懐かしい。まだあるんだ。バブル時期にすごい流行ったよね。スキー、テニス、みんながやってた。そ、みんながね。
宿泊するようになったら、母も行きたいと言い出し、どうせ車なんだからみんなで行くか。母と娘と親子三代でいろいろなところを旅しながら、最後に菅平に寄る。
最初は、息子と頑張っている仲間を応援しようというのが目的だったはずが、さぁどこに行こうか、最後は菅平だからと最終目的地に変わっていった。
息子は、私たち3人が楽しく旅をしてから菅平に行くことを、それってずるくね、と怒っていた。確かにね。地獄の練習をしているんだからね。
でもね。旅先を決めるのも大変だったんだよ。
条件は私以外のふたりが行ったことがないところ。
そして、母が行ってみたいところ。自営業で学生の頃から家のために働き続けて旅に出たことがほとんどない、というのが理由。
私の夏休みは8月のお盆の時期が入る日程だがお盆を避ける日程にすること。
母がお財布の旅だったが、できるだけ散財にならない経済的な旅行にすること。
そんなことを考えながら行先を定め、その点と点を結びながら行程を決めていく。そして、宿泊場所探し。朝食付きの車向けのホテルなんてのもみつけたり、楽しいこともあったけど、だいたいがいつもギリギリで、またしてもムンクになる。
やっと決まっていざ出発しようとすると、私の思いとは違う文句が出てくる。夜中に出るのは嫌だ。日差しがまぶしい。車内が暑いだ、寒いだ。足が痛いから歩けない。長く歩くところにはいかない、下で待ってる。何しに行くんだよ。先に話したじゃん。とにかく口を開けば文句しか出てこない。
ペンションの話で思い出したことがある。
「ペンションって泊まったことないから泊まってみたい。」
「まじか。絶対に文句言わないでよ。こんな感じだからね」と画像を見せる。
さあ、この後どうなったと思います?
お風呂も一つ、順番で入る。洗面所もトイレも共同。当たり前ですよね。
ペンション、ですからね。
「これじゃ、共同アパートじゃないの!!!」と怒っておる。
だからさぁ、ペンションてそういうものだよ、って言ったじゃん。
旅先で何度も口げんかになるが、この文句製造機が母という人なんだから仕方ない。
そのたびに2度と一緒に行くものか、と思うのだが
「ねえ、今年はどこに行くの?」
「えっ、行くの?あんだけ文句言ってたじゃん」と思うが喧嘩してでも行きたいのね。はいはいわかりました。
父が残してくれた車が私の愛車です。いろんなところへ連れて行ってもらいました。その車もあと少しで12万キロを超えます。
そして、たくさんの思いと思い出があります。
母が春に旅立ちました。
片付けもまだ残っているし、いろいろやることがある。
それに母が書き溜めた日記が山ほどあって、開くのが怖くて、でもこんなにたくさんの文字を残しているということは、私に何かしてほしいってことなのかな、とも思えるようになりました。
母への思いはいろいろあり、すこーしだけ気持ちの変化はありますが、まだまだ課題が山積みです。
でも「書く」を始めたら「気づき」「変化」「進化」が起こり始め、少しづつ文字にしていくことでアタシのなかの言いようのない思いを整理していけたらな、と思います。
かーさん、
私になにかを託してそちらに行きましたか。
そちらは快適ですか。
もう文句は言わないほうがいいよ。
ね、かーさん。