開発ストーリー#4 day1からコンセプトもアイデアも考える
壁を傷つけずに、好きな高さに美しい空中棚を取り付けられる「AIR SHELF(エアシェルフ)」。 このnoteでは、AIR SHELFができるまでのブランドストーリーを具体的に発信していきます。 2024年2月29日の発売に向けて、美しい空中棚がどうやってできたのか?を楽しみながらお待ちいただければ幸いです。
みなさん、こんにちは。
AIR SHELFのブランドマネージャーを担当している大川と申します。
前回は、平安伸銅工業が、AIR SHELFを立ち上げるに際して、パートナーの見つけ方やその判断基準をお伝えしました。事業の成功を左右するパートナー選定を、カルチャーフィットなどの観点も考慮しながら進めていった背景をご理解いただけたかと思います。
day1をなにから始めるか
今回は、Takramさんとの協働が決まった後、何から始めたのかについてご紹介します。具体的にはプロジェクトのday1のお伝えですが、このプロジェクトに与える影響がとても大きかったので、その内容を詳細にお伝えしたいと思います。
Takramさんのnoteでも、簡単にプロジェクトの進め方に触れられていますが、我々とのプロジェクトの進め方もまさにこの通りです。
私たちにとって印象的だったプロセスは以下の2点です。
経営者・メンバーインタビューを丁寧に行うこと
day0アイデアで具体的な壁打ちをday1から行うこと
※メンバーとは、平安伸銅工業の社員を指します。
経営者・メンバーインタビュー
2022年1月にプロジェクトがスタートしたのですが、day1はTakramさんに我々のオフィスにお越しいただき、平安伸銅工業へインタビューを行っていただきました。
経営者インタビューでは、平安伸銅工業のこれまでの歴史、これから描いていきたいビジョンを丁寧にお聞きいただき、当時、形になり始めていた「暮らすがえ」のミッションについてご説明しました。我々も、改めて組織外の方との対話を通して、単に暮らしを便利にする「アイデア商品」でもなく、「暮らすがえ」を実現することが、新ブランドが目指すところなんだと明確に意識することができました。
意外だったのが、経営者だけでなく、現場に近いメンバーへのヒアリングもあったことです。平安伸銅工業には、現在の経営者よりも長くこの会社に勤め、新卒入社から40年にわたり技術畑一筋のメンバーもいます。
いわゆる職人なので、日頃はあらたまって、仕事について考えていること大事にしていることを話していただく機会がなかったのですが、ヒアリングを通して、メンバーが大切にしている価値観を知ることができました。同席していた私も、当時は入社3年目程度だったのですが、初めて平安伸銅工業のDNAに触れられたように感じました。
これらのインタビューをもとに、平安伸銅工業のミッションやビジョン、市場機会や我々の強みについてまとめたのが、以下のチャート(インタビューインサイト)です。
このインサイト(洞察)のおかげで、どのような事業領域に取り組むとしても、自分たちが実現すべき価値の立脚点が可視化されました。
day0アイデアで壁打ちを行う
もう一つ印象的だったのは、day0からアイデア出しを行われていたことでした。コンサルティングの現場では、「day0仮説を持って、day1からクライアントと壁打ちする」という心得があるようですが、Takramさんの場合は、day1までに既に「こんなアイデア面白くないですか?」と、具体的なアイデアをたくさん用意されていました。
今回のday1では、事前に作成いただいたアイデアをもとに、平安伸銅工業の経営者やプロジェクトメンバー交えて、アイデアブレストを行いました。Takramさんから我々への提案といった、答え合わせの場所ではなく、お互いフラットに共感できるポイントを探るディスカッションになり、楽しんで取り組むことができました。
経営者インタビュー・メンバーインタビューだけだと、ともすると抽象的な議論に終始してしまいがちですが、並行して具体的なアイデアも話し合うことで、プロジェクトの着地イメージを具体的に共有することができました。
ここには、Takramさんがカルチャーとして大事にされている「振り子」の思考が生きていると感じられました。
「振り子」とは、抽象と具体や、一見整合しない二律背反する要素の「間」を、同時に考えたり高速に行き来することで、矛盾を乗り越え、イノベーティブなアイデアを出す創造プロセスだと私は理解しています。今回のプロジェクトの場合は、ミッション・ビジョンといった抽象領域と、製品アイデアといった具体領域を同時に考えることで、プロジェクトのベクトルをTakramメンバー含めたプロジェクトメンバー内で共有できたように思います。
この後は、day1で見つけたベクトルをもとに具体的なコンセプトを作成していくフェーズになります。コンセプトを絞っていく段階でもいくつもの気づきがありましたので、次回はコンセプト立案から、アイデアの選定方法についてご紹介できればと思います。