やさぐれエッセイ-Deserve-ダメもとの奇跡
1:42pm
ワクチン予約の電話が鳴りやまないコールセンター
フロア全体で忙しく対応している中、ひとり回線をホールドにした
アリッサからのメールを読んだ瞬間、涙があふれてきて思わなかったその場に立ちつくす
事の始まりはお昼前、
予約電話をとってる最中に携帯に着信。めずらしく元職場の人事担当ショーン
こちらから問い合わせるのが普通で、彼からの電話はめずらしい。ブレイク中にかけ直すと2コールでアンサー
『あ、明日から例の10am-6pmのシフト入ることになったから。あとで会社のサイトにアップデートされるんで確認しておいて』
アッサリ言って切られた。
え?!
あしたから空港?!
10-6時シフト?
一瞬、喜びで飛びあがりそうになるのをグッとおさえ、サイトで公式にスケジュールが表示されるまで、この夢みたいなニュースは信じないでおこう、と心に決めた
2週間まえ、復職がきまった元職場の労働組合に電話した
『障害のある息子の世話があるので、今の夜勤から早い時間に終業するシフトに変えてもらえませんか』
おそるおそるお願いしてみた私にむかって
組合代表のアリッサ
電話の向こうで「フン」と鼻で笑い
『新入りの分際で何言ってやがんだコイツ感』満載で乾いた特徴のある声で、べらんめえ調みたいなパキパキした英語でまくし立てた
『だいたいね、何よアナタ入社たったの2年でしょ?子供の世話したいから早く帰りたい?誰だってそうよ。子どもがいるのアナタだけじゃないでしょ?!』
(ナメとんのかコイツ?)
言わんばかりのケンカ口調にビビる
『じゃあ何よ、9時-5時みたいなシフトがほしいって事でしょ?私の知ってるかぎりそんな理想のシフトもってるのは、勤続45年の○○さんだけ。アナタそのシフトがほしいってこと?!』
(身のほどもわきまえず図々しい)
『とんでもない!先輩の邪魔しようなんて考えは一切ありません。皆さんにはリスペクトしかないです』
『じゃ何よ、アナタが勤務中は誰が息子みてんのよ?!たしかシングルマザーじゃないわよね?』
『いえ、夫がみてくれてます。でも2年前事故にあって脊髄の手術したのでまだ仕事復帰できてないんです。いま政府に療養中の手当て申請してますが、まだ認可されてない状況で。。』
そう言ったとたん
アリッサのトーンがガラッと変わった
『じゃアナタ旦那さんの世話もしなきゃならないじゃない。それなら話は違うわ。そういう状況ならじゅうぶん会社に支援を申し込む理由になる。任しときなさい、週末までにアタシがなんとかして連絡してあげるから』
そう言ってサッと電話をきられてから2週間
彼女からは何の連絡もないまま、いきなり会社側からシフト支援が決まったよ、といわれてポカン
けっきょくランチ中に、会社サイトでスケジュールが正式に変わっているのを確認して、すぐにアリッサに電話した
コール4回で出ないので、忙しいのだろうとすぐメールでお礼をいった
『アリッサ、こんな夢みたいなシフト、本当なの?
新入社員の私が、次のシフト決定まであと半年、土日休みで昼間だけ働けるなんてありえないでしょ?ぜんぜん信じられないんだけど。。』
送ると秒で返信があり
『本当よ。私にお礼をいう必要ないわ。
当然のことをしたまでよ。
このシフトが少しでもあなたとご家族の助けになれば幸い。
今後、このシフトをあなたが退職まで続けられるよう会社に交渉する予定です』
昼のあかるい保健機関のオフィスの真ん中で、涙があふれて止まらなかった