便利な時代
便利になったものだ。
マッチングアプリのおかげで俺は無駄な労力を使わず、運命の人に出会うことができた。それに最初の挨拶だってAIが考えてくれるから自分は一切なにも考えなくてよかった。
おかげ様で俺は何がしたいのか分からなくなった。運命の人だってAIが作った回答にAIで返しているのだし、初めてのデートだってお互いのアバターがちょうどいい場所を選んでちょうどいいデートをしてくれた。結婚の時の両家顔合わせだってアバターだった。両親含めて。
そうさ、俺は親の顔もまともにみたことがない。俺はAIの親に育てられたんだ。よくよく考えてみたら、俺はこのカプセルから出たことがない。自分の本当の姿も知らないし、暗闇から抜け出したこともない。外で俺のAIが俺の楽しい人生を送っているのなら俺なんていっそ、、、
ある夜、一台のロボットが暴走して研究施設から抜け出し海へ飛び込んだ。それを見ていた博士は満足げに呟く。
「これでようやく自殺用AIが出来た。今ではAIがなんでもやってくれる時代になった。じゃがやはり、死だけは人間がやらなねばならなかった。このAIのおかげで人間の寿命がさらに伸びることじゃろう。」
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