社会保険労務士試験の概要、直近の法改正
受験案内:4月半ば~
受験申込受付:4月半ば~5月下旬、インターネット申込か郵送
試験日程:8月下旬
合格発表:10月上旬
受験料:15,000円
受験資格:大学、短大、専門職大学等を卒業等または行政書士試験に合格した者
試験形式:選択式と択一式
選択式は40点満点で8問(5空欄×8問)出題、総得点27点以上かつ各科目3点以上が合格基準、回答時間80分
択一式は70点満点で70問出題、総得点44点以上かつ各科目4点以上が合格基準、回答時間210分
試験科目
・労働基準法・・・労働条件の最低基準を定めて労働者を保護する法律
・労働安全衛生法・労働者の安全と健康にかかわる重要な事柄を定める
・労働者災害補償保険法・労災保険のことなど
・雇用保険法・・・失業者に対して求職者給付を行うことで生活を支える
・労働保険の保険料の徴収等に関する法律(択一のみ)
・労務管理その他の労働に関する一般常識・労働法規、労務管理、労働経済
・社会保険に関する一般常識・・社会保険法規と社会保障制度
・健康保険法・・会社員など会社等に雇用されている人が加入する保険
・厚生年金保険法・・・現在の年金制度の2階部分
・国民年金法・・すべての国民に加入義務のある基礎年金
合格率は5~8%程度
最近の法改正
・令和6年4月1日施行・・・労働基準法、無期転換ルール及び労働契約関係の明確化
労働契約の締結に際し明示すべき労働条件に、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数の上限並びに就業場所・業務の変更の範囲が追加された。無期転換申込件が発生する契約更新時においては、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件も明示しなければならないこととされた。
・令和6年4月1日施行・・・労働基準法、雇止め等に関する基準の改正①
使用者は、有期労働契約の締結後、当該有期労働契約の変更又は更新に際して、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数について、上限を定め、又はこれを引き下げようとするときは、あらかじめ、その理由を労働者に説明しなければならないものとされた。
・令和6年4月1日施行・・・労働基準法、雇止め等に関する基準の改正②
使用者は、労働者に対して無期転換後の労働条件を明示する場合においては、当該労働条件に関する定めをする当たって労働契約法3条2項(均衡考慮の原則)の規定の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について、当該労働者に説明するよう努めなければならいものとされた。
労働契約法(平成19年法律第128号)
第一条(目的)
この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
第二条(定義)
この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。
2.この法律のおいて「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。
第三条(労働契約の原則)
労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と背地活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
・令和6年4月1日施行・・・労働基準法、専門業務型裁量労働制に関する改正①
専門業務型裁量労働制に係る労使協定事項に、対象労働者本人の同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取り扱いをしないこと、同意の撤回の手続きが追加された。
・令和6年4月1日施行・・・労働基準法、専門業務型裁量労働制に関する改正②
専門業務型裁量労働制の対象業務に、銀行又は証券会社において、顧客に対し、合併、買収等に関する考案及び助言をする業務(いわゆるM&Aの業務)が追加された。
・令和6年4月1日施行・・・労働基準法、企画業務型裁量労働制に関する改正①
企画業務型裁量労働制に係る労使委員会の決議事項に、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更する場合に、使用者が労使委員会に対して変更内容について説明を行うことが追加された。
・令和6年4月1日施行・・・労働基準法、企画業務型裁量労働制に関する法律②
対象労働者本人の同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取り扱いをしないことについては、これまでも企画業務型裁量労働制に係る労使委員会の決議事項とされていたが、更に同意の撤回の手続きも追加された。また、これまで6ヶ月以内ごとに行うこととされていた労働基準監督署長への企画業務型裁量労働制に関する定期報告の頻度を、初回は6ヶ月以内に1回、その後は1年以内ごとに1回とすることとされた。
・令和6年4月1日施行・・・労働基準法、労使委員会に関する改正
労使委員会の労働者側委員の氏名は、使用者の意向に基づくものであってはならないものとされ、労働者側委員が労使委員会の決議等に関する事務を円滑に遂行することができるよう、使用者は必要な配慮を行わなければならないものとされた。また、企画業務型裁量労働制においては、労使委員会の運営規定に「対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項」「制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項」「開催頻度を6ヶ月以内ごとに1回とすること」を定めることとされた。
・令和6年4月1日施行・・・労働安全衛生法、濃度基準値設定物質に関する規制
リスクアセスメント対象物のうち、一定程度のばく露に抑えることにより、労働者に健康障害を生ずるおそれがない物質として厚生労働大臣が定める物質(濃度基準値設定物質)は、屋内作業場で労働者がばく露される程度を、厚生労働大臣が定める濃度基準値以下としなければならないとされた。
・令和6年4月1日施行・・・労働安全衛生法、労働災害発生事業場等への労働基準監督署長による指示
労働災害の発生、又はそのおそれのある事業場について、労働基準監督署長が、その事業場で化学物質の管理が適切に行われていない疑いがあると判断した場合は、事業場の事業者に対し、改善を指示することができることとされた。
・令和6年4月1日施行・・・リスクアセスメント対象物健康診断の実施等
リスクアセスメント対象物による健康影響の確認のため、事業者は、労働者の意見を聴き、必要があると認めるときは、医師又は歯科医師が必要と認める項目の健康診断を実施し、その結果に基づき必要な措置を講じなければならないこととされた。
また、濃度基準委設定物質について、労働者が濃度基準値を超えてばく露したおそれがあるときは、速やかに、医師又は歯科医師による健康診断を実施し、その結果に基づき必要な措置を講じなければならないこととされた。
・令和6年4月1日施行・・・労働安全衛生法、衛生委員会の付議事項の追加
衛生委員会の付議事項に「濃度基準値設定物質について、労働者がばく露される程度を濃度基準値以下とするために講ずる措置に関すること」「リスクアセスメント対象物健康診断の実施及びその結果に基づき講ずる措置に関すること」が追加された。
・令和6年4月1日施行・・・労働安全衛生法、化学物質管理者・保護具着用管理責任者の選任義務
リスクアセスメント対象物を製造、取扱い、又は譲渡提供をする事業場では化学物質管理者を、リスクアセスメントに基づく措置として労働者に保護具を使用させる事業場では保護具着用管理責任者を選任することが義務付けられた。
・令和6年4月1日施行・・・労働安全衛生法、雇入れ時等の安全衛生教育の拡充
安全管理者の選任義務がない「その他の業種」の事業場では、雇入れ時等の安全衛生教育のうち、一部教育項目の省略が認められていたが、この省略規定が廃止された。
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)
第十条(総括安全衛生管理者)
事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
1.労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
2.労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
3.健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
4.労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
5.前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの
2.統括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもって充てなければならない。
3.都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができる。
・令和6年4月1日施行・・・労働管理その他の労働に関する一般常識、障害者雇用促進法の改正
障害者雇用率が段階的に引き上げとなり、例えば、令和8年6月30日までの一級の民間事業主の障害雇用率は、100分の2.5となった。
重度障害者、重度知的障碍者又は精神障害者である特定短時間労働者(短時間労働者のうち、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の労働者をいい、一定の者を除く。)は、その1人をもって0.5人の対象障害者とみなして実雇用率を算定し、障害者雇用調整金や障害者雇用納付金の算定基礎に含まれることとなった。
障害者雇用調整法や報奨金について、雇用義務を超えて一定数以上障害者を雇用している場合には、支給調整が行われることとなった。例えば、障害者雇用調整金については、支給対象人数が1年度につき120人(1ヶ月換算10人)を超える場合には、当該超過人数1人につき23,000円/月(本来の29,000円/月から6,000円調整)
・令和6年4月1日施行・・・健康保険法、流行初期医療各拠出金等の納付義務に係る改正
流行初期医療確保措置(新型インフルエンザ等感染症等の発生等に際し初動対応等を行う協定締結医療機関について流行前と同水準の医療の確保を可能とする措置)関係業務に要する費用に充てるため、保険者等から流行初期医療確保拠出金等を徴収する仕組みが創設された。
・令和6年4月1日施行・・・出産育児一時金等に係る後期高齢医療制度からの支援
健康保険の保険者等が支給する出産育児一時金及び家族出産育児一時金に要する費用の一部について、後期高齢者医療制度から支援する仕組み(後期高齢者医療広域連合から出産育児支援金を徴収し、保険者等に対して出産育児交付金を校風する仕組み)が創設された。
・令和6年4月1日施行・・・国民年金法、保険料免除等に係る所得基準額の算定の見直し
所得税における扶養控除の見直しに伴い、保険料免除等に係る所得基準額の算定において、30歳以上70歳未満の扶養親族のうち、所得税法に規定する控除対象扶養親族に該当しない者(扶養控除の対象とならない国外居住親族)については、当該所得基準額の加算の対象としないこととされた。
・令和6年1月1日施行・・・社会保険に関する一般常識、国民健康保険法の改正
産前産後期間における国民健康保険料(税)を免除し、その免除相当額を国が2分の1,都道府県と市町村はそれぞれ4分の1を負担することとされた。
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