労務管理その他の労働に関する一般常識・労務管理、労働経済、労働統計
・労務管理には、人事情報(職務に関する情報と労働力に関する情報)の収集と分析、評価(職務分析、職務評価、人事考課)が必要。人事考課の際に生じる評定誤差(心理的偏向)には、評価が標準に集まりやすい中央化傾向、部下の評点を高めにつけやすい寛大化傾向、1つの面で優れている、あるいは劣っているところが全体の印象になり影響を与えるハロー効果などがある。
・労働者を採用、異動、退職までの一連の管理を雇用管理という。年功的人事制度からの脱却と、資格制度の導入。現在は昇進昇格は、俗人資格を基準とする身分的資格制度ではなく、職務遂行能力を基準とする職能資格制度が主流。専門職制度の導入も多い。
・企業が要員を算定する方式は、賄い得る人件費を基礎に保有可能な人員の総枠を決めるマクロ的算定方式(総枠方式)と、企業内の業務を分析し必要人員を職場・職種別に積み上げるミクロ的算定方式(積上方式)がある。
・通年採用制は、随時必要な人員を採用する制度。
・勤務地限定採用は、転勤のある企業において、人事異動の範囲を一定の範囲内の事業所に限定する者とそうでない者を区分して採用すること。
・職種別採用は、職務内容別に採用するもの。
・OJTとは、職場内訓練、職場で仕事を通して計画的に教育訓練すること。OFF-JTとは、職場外訓練。
・ジョブ・ローテーションとは、従業員に複数の職務を経験させるため、定期的かつ計画的に職務の異動を行うこと。
・CDPとは、経歴管理制度。複数のキャリアパスを設定し、個人のキャリーアッププランと企業の人材ニーズを統合させて人材育成する系統的人事管理システム。
・ジョブ・カード制度とは、フリーターなどの正社員経験の少ない人などを対象に、ジョブ・カードを活用したきめ細やかなキャリアコンサルティングを通じた意識啓発やキャリア形成上の課題の明確化を行い、企業実習と座学を組み合わせた実践的な職業訓練の機会の提供、企業からの評価結果や職務経歴をジョブ・カードによりとりまとめ安定的な雇用等への移行を促進する制度。
・インターンシップは、学生などが在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと。産学連携による人材育成の手法の一種。
・賃金管理は、賃金額管理、賃金体系(基本給プラス諸手当)管理、賃金形態(賃金の算出及び支払の単位で、時給性、日給制、月給制、年棒制など定額制と、出来高払制がある)管理に大別。
・賃金総額の決定方式は、ジョゼフ・スキャンロンが提唱した、売上高に人件費率を乗じて賃金総額を決定するスキャンロンプランと、アレン・ラッカーが提唱した、付加価値に一定の労働分配率を乗じて賃金総額を決定するラッカープラン(賞与原資(付加価値×標準労働分配率)ー既に支払った賃金総額)がある。
※日本では、売上高が増加しなくてもコスト削減によって付加価値を増やせば賃金総額の増加が可能ということから、ラッカープランの方が人件費管理として優れているものと考える人が多い。
・使用者が労働者に賃金を渡す前に賃金から組合費を差し引き、一括して同労組合に渡すことを、チェック・オフという。
・賃金を年齢別に曲線で図示したものを賃金カーブといい、日本はS字型が多い。
・会社が経営者や従業員に対して、自社株をある特定の価格で、ある将来の一定期間に買い入れる権利を与える制度を、ストック・オプションという。
・基本給は、属人給、仕事給(職務の相対的価値により決定されるものを職務給、職務遂行能力により決定されるものを職能給、職種により決定されるものを職種給(単一職務給をシングル・レート、幅を持った賃金を設定する範囲職務給、レンジ・レートがある)、業績により決定されるものを業績給)、総合決定給の3つに大別。
・人間関係論とは、メーヨー(人間関係論の父とも呼ばれる)やレスリスバーガーが中心となって1920年代から1930年代にかけてホーソン工場での実験を基礎として生まれた理論。(ホーソン実験、労働環境が生産能率にどのような影響を与えるか調べた大規模な調査)
・マズローの欲求5段階説では、人間の基本的欲求には、低次元のものから順に次の欲求があり、モチベーション(積極的な動機付け、自ら進んで行動しようとする心的状態にすること)も高まるとされる。
・バースバーグの動機付け衛生要因理論では、仕事の内容、達成感、承認、責任といった職務に対する満足要因と、会社の方針、作業条件、給与と言った不満足要因を区別し、満足要因こそが動機付け要因で、不満足要因は衛生要因(十分であっても積極的な満足や動機付けをもたらさない要因)にすぎないとされる。
・マグレガーは、人間観の理論を、人間は外部から強制されなければ目標達成のための努力をしないというX理論と、人間は自我の欲求や自己実現の欲求がみたされるよう目標達成のために努力するというY理論に分け、Y理論の人間観に立脚した管理が行われるべきとした。
・職務設計とは、職務を通して能力が発揮され人間的欲求が充足dされるよう職務を設計すること。
・目標管理とは、1954年にP.F.ドラッカーがその著書『現代の経営』において提言したのが始まり。従業員の動機付けを図ろうとする制度。
・統計法は、公的統計が国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報であることにかんがみ、公的統計の作成及び提供に関し基本となる事項を定めることにより、公的統計の体系的かつ効率的な整備お酔いその有用性の確保を図り、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。
・公的統計とは、行政機関等(国の省、委員会および庁等、地方公共団体又は独立行政法人等)が作成する統計をいう。
・統計調査とは、行政機関等が統計の作成を目的として個人又は法人その他の団体に対し事実の報告を求めることにより行う調査をいう。
・国等の行政機関が行うものは、全国的な政策を企画立案し、又はこれを実施する上において特に重要な統計等である基幹統計調査と、基幹統計調査以外の一般統計調査に分けられる。
基幹統計調査・・・
労働力調査(総務省)我が国における就業及び不就業の状態を明らかにするための基礎資料を得ることを目的とする。標本調査。一定の統計上の抽出方法に基づき選定された全国約4万世帯およびその世帯員が調査対象。就業状態は、世帯員のうち15歳以上の者約10万人を調査。労働力人口、就業者、完全失業者、非労働力人口、労働力人口比率(労働力率)、就業率、完全失業率。
就業構造基本調査(総務省)国民の就業及び不就業の状態を調査し、全国及び地域別の就業構造に関する基礎資料を得ることを目的とする。
毎月勤労統計調査(厚生労働省)雇用、給与及び労働時間について、全国調査にあってはその全国的の変動を毎月明らかにすることを、地方調査にあってはその都道府県別の変動を毎月明らかにすることを目的とした調査。16大産業に属する事業所で常用労働者を雇用するもののうち常時5人以上を雇用する事務所が対象。総実労働時間数、所定内労働時間数、所定外労働時間数、現金給与総額、きまって支給する給与、所定内給与。
賃金構造基本統計調査(厚生労働省)我が国の賃金構造の実態を詳細に把握することを目的として行われている。主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別等に明らかにする。
一般統計調査・・・
就労条件総合調査(厚生労働省)、雇用均等基本調査(厚生労働省)、賃金引上げ等の実態に関する調査(厚生労働省)、能力開発基本調査(厚生労働省)、労使関係総合調査(厚生労働省)
・全体調査とは、統計調査を構成する個体全部について行う調査
・標本調査とは、統計調査を構成する個体の一部を調査し、その統計集団全体について推測するもの。
横断調査・・・横断面データを用いた調査。ある時点における性別、年齢別などに記録した複数の項目を集めたデータをいい、同一時点での複数項目を横断的に分析できる。
縦断調査・・・時系列データ、コーホートデータ(生まれた年ごとに記録し、経過時間に沿って集計したデータをいい、人口や就業率の推移を世代ごとに比較分析できる)、パネルデータを用いた調査。横断調査には、動向調査(傾向分析・トレンド分析)、集団調査(コーホート分析)、追跡調査(パネル分析)の3種類がある。
27.労務管理
・職務分析によって得られた職務情報に基づき、個々の職務について、職務価値の相対的評価を行うことを「職務評価」という。
・寛大化傾向とは、部子評点を高めにつけてしまう傾向。
・ライン管理職とは、名称の如何を問わず、企業の組織系列の各部署において配下の係員又は労働者の集団を指導・監督する役職をいう。
・専門職制度とは、高度の専門的な知識や技術を有する従業員を、ライン管理職の系列とは別のスタッフ系列として位置付けつつ、昇進や給与面では、ライン管理職と同等の処遇を行おうとする制度をいう。
28.労務管理
科学的管理法とは、時間研究や動作研究に基づいて標準作業方法と標準作業時間が設定され、その方法と時間内で作業を行うことを課業(ノルマ)とし、労働者がその課業を達成した場合には割増された賃金を支払い、未達成の場合は賃金を減額する差別的出来高給制を採用する管理法である。(テイラーが提唱。雇い主に低い労務費負担を、労働者に高い賃金支払いを同時に実現させることができるとする考え方。)
計画と実行の分離により、現代でいう、職能別組織の原型をつくったとされる。
就労条件総合調査
・1日の所定労働時間は1企業7時間48分。週所定労働時間は1企業平均39時間20分。産業別では、金融業保険業が38時間2分で最も短く、宿泊業、飲食サービス業および生活関連サービス業、娯楽業で39時間35分と最も長い。
・何らかの週休2日制を採用している企業割合は85.4%(令和4年83.5%)完全週休2日制は53.3%(同48.7%)。完全週休2日制を採用している企業割合は、1000人以上が68.1%、300~999人で60%、100~299人で52.2%、30~99人で52.5%。
・令和5年調査における令和4年1年間の年間休日総数の1企業平均は、110.7日。(令和4年調査107日)労働者1人平均は115.6日(同115.3日)
・令和4年の1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰り越し日数を除く)は、労働者1人平均17.6日(令和4年調査と同じ)。このうち労働者が取得した日数は10.9日(同10.3日)。取得率62・1%(同58.3%)。昭和59年以降過去最高。複合サービス事業が最も取得率が高く74.8%、宿泊業、飲食サービス業は49.1%と最も低い。
常用労働者とは、次の①又は②のいずれかに該当する者をいう。
①期間を定めずに雇われている労働者
②1箇月以上の期間を定めて雇われている労働者
パートタイム労働者とは、1日の所定労働時間が当該企業の一般の労働者より短い者、又は1日の所定労働時間が一般の労働者と同じであっても、1週の所定労働日数が少ない労働者をいう。
所定労働時間とは、就業規則等で定められた始業時刻から終業時刻までの時間から、休憩時間を差し引いた労働時間をいう。
変形労働時間制とは、一定の期間内で週40時間、1日8時間の労働時間の原則に対して例外を認める制度で、1年単位の変形労働時間制、1か月単位の変形労働時間制、1週間単位の変形労働時間制、フレックスタイム制をいう。
みなし労働時間制とは、特定の事情により労働時間の算定が困難又は通常と同じ算定方法が適切でない場合、労使協定により定めた時間を労働したものとみなす以下のア~ウの制度。
ア 事業場外みなし労働時間制
外勤の営業社員など、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮・監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務を遂行する場合に、所定労働時間、又は労使協定等により、その業務の遂行に通常必要とされる時間を労働したものとみなす制度をいう。
イ 専門業務型裁量労働制
研究開発など、その業務の性質上その遂行の方法や時間配分の決定等に関し具体的な指示をすることが困難として定められている業務に就かせた場合に、あらかじめ定めた時間労働したものとみなすとを労使協定により定める制度。
ウ 企画業務型裁量労働制
事業運営に係る企画、立案、調査及び分析の業務を行うホワイトカラー労働者を対象として、労使委員会で決議した時間労働したものとみなす制度をいう。なお、導入においては労使委員会における委員の5分の4以上の多数による決議と対象労働者本人の同意が必要。
時間外労働の割増賃金率
時間外労働の割増賃金率は、25%以上(1か月60時間を超える時間外労働に係るものを除く)とされている
1か月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率
月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率は50%以上。
確定給付企業年金
加入した期間などに基いてあらかじめ給付額が定められている企業年金制度。規約型(労使合意の年金規約に基づき外部機関で積立)と基金型(厚生年金の代行のない基金)があり、確定給付型の企業年金について、受給権保護等を図る観点から、積立義務、受託者責任の明確化、情報開示といったルールを定めた上で、労使合意に基づき、柔軟な制度設計が可能となるよう必要な措置が講じられている。
CBPキャッシュバランスプラン
労働者ごとに仮想個人口座を設け、その口座に一定のルールに基づいて持分付与額(元金相当部分)を累積していくとともに、一定の再評価額(利息相当部分)を付与し、支払い開始時までに積み立てた元利合計額を支給する制度。
確定拠出年金
拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、掛け金とその運用収益との合計額をもとに給付額が決定される年金制度。対象者により、企業型と個人型(iDeCo)に分かれる。
・属人給とは、年齢や勤続年数といった個人の要素により給与が決定される仕組み。日本従来の終身雇用や年功序列がこの属人給により支えられてきた。
・仕事給とは、職務や職種といった仕事内容・職務の遂行能力・業績や成果といったものに応じて賃金を決定する給与を決める仕組みのこと。
・マグレガーは、人間観の理論を、人間は外部から強制されなければ目標達成のための努力をしないというX理論と、人間は自我の欲求や自己実現の欲求が満たされるよう目標達成のために努力するというY理論に分け、Y理論の人間観に立脚した管理が行われるべきとした。
29.労務管理
1.人間関係論とは、メーヨー、レスリスバーガーが中心となって1920年代から1930年代にかけて行ったホーソン工場での実験を基礎として生まれた理論。この実験においては、経営組織の中には、意識的に形成された公式組織のほかに、自然発生的にインフォーマル組織が形成され、時にはこのの統制力が公式組織の統制力を上回ることがあることが明らかとなっている。この、人間関係論に基づいてを重視し、人間関係を改善し、従業員のモラール(士気、意欲)の向上を図ろうとするし悲恋の管理を人間関係管理という。その施策としては、カウンセリング(悩み・不安についての相談面接をいう)や、苦情処理制度(紛争や不平・不満を解決するための常設制度)、モラール調査(従業員のモラールの実態調査)などがある。
2.マズローの欲求5段階説では、人間の基本的欲求には、低次元のものから順に、①生理的欲求、②安全・安定の欲求、③所属と愛の欲求、④承認の欲求、⑤自己実現の欲求、の5段階の欲求があり、低次の欲求が満たされると、より高次の欲求が強まり、それを目標としてモチベーションが高まるとされている。
・モラールmoraleとは、職場をはじめ組織に所属する人々の士気や労働意欲のこと。倫理や道徳の意味のモラルmoralとは意味が異なる。モラールは組織全体の士気を指し、モチベーションは個人の意欲が対象。
30.労務管理
多様化する雇用形態別の人材マネジメントの近年の特徴に関しては、正規雇用労働者については、厚生労働省が2012年3月にとりまとめた「非正規雇用問題に係るビジョン」で述べられているように、(1)労働契約の期間の定めはない、(2)所定労働時間がフルタイムである、(3)直接雇用である、といった3つの要素に加え、大企業で典型的にみられる形態としては、長期雇用慣行を背景として、(4)勤続に応じた処遇、雇用管理の体系(勤続年数に応じた賃金体系、昇進・昇格、配置、能力開発等)となっている、(5)勤務地や業務内容の限定がなく時間外労働がある、といった要素を満たすイメージで論じられることが多い。
人材マネジメントの基本的な考え方として、「仕事」をきちんと決めておいてそれに「人」を当てはめるという「ジョブ型」雇用と、「人」を中心にして管理が行われ、「人」と「仕事」の結びつきはできるだけ自由に変えられるようにしておく「メンバーシップ型」雇用があり、「メンバーシップ型」が日本の正規雇用労働者の特徴であるとする議論もあるが、上記(4)や(5)のイメージはこうした特徴を反映しているものとも考えられる。こうしたことは我が国の企業が、景気の変動に伴う労働需要の変化に対して、主に残業の増減や配置転換、出向等を活用して対応してきたこと密接に関連していると考えられる。
31.労働経済、労働統計
統計法による基幹統計調査として行われるのは、労働力調査(総務省)、毎月勤労統計調査(厚生労働省)、賃金構造基本統計調査(厚生労働省)。
統計法による一般統計調査として行われるのは、就労条件総合調査(厚生労働省)と能力開発基本調査(厚生労働省)。
32.労働経済、労働統計
・労働力調査(総務省)は、我が国における就業および不就業の状態を明らかにするための基礎資料を得ることを目的としている。
・労働力調査(総務省)に定義される「非労働力人口」とは、15歳以上人口のうち労働力人口以外の者の人口をいう。
・労働力調査(総務省)に定義される「完全失業率」とは、労働力人口に占める完全失業者の割合をいう。
・労働力調査(総務省)を基に、女性の労働力率を年齢階級別にグラフに表すと、いわゆるM字型カーブを描いている。
・労働力調査(総務省)は、標本調査として行われている。
33.労働経済、労働統計
毎月勤労統計調査(厚生労働省)にいう「総実労働時間数」とは、所定内労働時間数と所定外労働時間数の合計をいう。
34.労働経済、労働統計
15歳以上人口のうち、毎月の末日に終わる1週間(以下「調査期間」)に収入を伴う仕事を1時間以上した従業者と仕事を持ちながら、調査期間中に仕事を休んでいた休業者を合わせたものを就業者という。また、仕事を持たず、調査期間中に仕事をしなかった者のうち、就業が可能でこれを希望し、かつ、求職活動をした者を完全失業者といい、就業者と完全失業者を合わせたものを労働力人口という。
35.労働経済、労働統計
1.毎月勤労統計調査は、統計法に基づく国の重要な統計調査である基幹統計調査として実施されており、その調査結果は、内閣府が作成する景気動向指数において、総実労働時間指数に非農林業雇用者数を乗じて得た労働投入量指数が一致系列に、常用雇用指数が遅行系列に採用されているほか、幅広く活用されている。
2.人口調査において、就業状態(収入を伴う仕事をしているかどうか)を把握する方法には、一定期間の状態により把握するアクチュアル方式と、ふだんの状態により把握するユージュアル方式がある。
就業構造基本調査では、15歳以上の人の就業・不就業について、構造調査であることから「ふだん」の状態によって把握するユージュアル方式で調査している。一方、労働力調査は動向調査であることから、「月末1週間」の状態によって把握するアクチュアル方式で調査している。
ユージュアル方式とアクチュアル方式を比べると、ユージュアル方式は、調査の時期や調査時の偶発的状況に影響されることが少ないという利点を持つ一方、定義に曖昧さが残り回答者の意識に左右される部分が大きいという欠点があり、アクチュアル方式は調査の時期や調査時の偶発的状況に影響されやすいという欠点を持つ一方、厳密に定義ができるという利点がある。
・景気動向指数とは、生産、雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感な指標の動きを統合することによって、景気の現状把握及び将来予測に資するために作成された統合的な景気指標をいい、コンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)がある。
コンポジット・インデックスとは、採用系列の前月と比べた変化の大きさを合成して作成した指数。採用系列には、多くの経済指標の中でも景気に敏感に反応する系列が選ばれる。景気変動の大きさやテンポといった量的側面を把握できる。
ディフュージョン・インデックスとは、採用系列の各月の値を3カ月前と比べた変化方向を合成して作成した指数。変化方向が+である系列数の割合を%で示す。採用系列には、多くの経済指標の中でも景気に敏感に反応する系列が選ばれる。景気変動の各経済部門への浸透度、波及度を把握できる。DIもCIと同様に、景気の動きに対し、先行していく先行指数、ほぼ一致して動く一致指数、遅れて動く遅行指数の3指数がある。
先行指数とは、景気の動きに対し、先行して動く指標。景気の先行きに対する予測を行うときに参照される。
一致指数とは、景気の動きに対し、一致して動く指標。景気の現状を把握するのに用いられる。
遅行指数とは、景気の動きに対し、遅行して動く指標。景気の転換点を確認するものとして利用される。