労働安全衛生法
労働安全衛生法
第一章総則
第一条(目的)
この法律は、労働基準法(昭和22年法律第49号)と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。
労働安全衛生法を守らなければいけないのは、事業者(事業主)、関係者、労働者(労基法の労働者)事業者と労働者だけでなく、関係者も取り締まりの対象となる。
施行令は政令により定められ、政令は内閣が制定する法令。告示とは、法令で定めきれない、細かい運用の基準などを定め、公示を必要とする場合に出されるもの。労働安全衛生法に関する告示には、作業環境測定基準や、衛星管理者規定などがある。
労働安全衛生法は、ある程度の規模、業種といった要件に当てはまる事業者に対して、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者と呼ばれる人を選び配置し、常日頃から職場の安全と衛生を確保する努力をしなければいけない、という決まりがある。この取り組みを、職場の安全衛生管理体制という。
安全に関しては安全委員会、衛生に関しては衛生委員会、両方の機能をもった安全衛生委員会。衛生委員会には、産業医という医者をメンバーに加えないといけない。産業医は、衛生管理者に指導や助言を与え、事業者(総括安全衛生管理者)に対して、勧告をし、労働者の健康管理に必要な情報管理を事業者から受けることができる。平成31年4月1日施行の改正法で、産業医の勧告を受けた事業者、これを尊重し、衛生委員会や安全衛生委員会へ報告する義務を負う。また、事業者は、産業医へ労働時間や健康管理に必要な情報を提供する義務も負うようになった。
事業者は、委員会を開く都度、概要を周知する必要がある。その議事の概要も周知する義務がある。
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業で、50人以上の労働者が働いている職場は、安全管理者を置かなければいけない屋外工業。
製造業、電気・ガス・水道業、通信業、自動車整備業、機械修理業で、50人以上の労働者が働いている職場は、安全管理者を置かなければいけない屋内工業。
衛生管理者は、ほぼ全職種の事業で、職場に50人以上の労働者がいる場合、必ず置くよう義務付けられている。
小規模でも危険が伴う職場には、安全衛生推進者を選任、配置する義務がある。衛生管理者にあたるのは、衛生推進者。
業種に限らず、発注を受けて自分の会社で仕事を行いつつも、別の会社に仕事を振っていく元請会社のことを、元方(もとかた)事業者という。元方事業者の中でも、建設業と造船業という特定事業の元方事業者は、特定元方事業者といい、独自の安全衛生管理体制をつくらなくてはいけない決まりがある。この特定元方事業者には、特定元方事業者が行う事業で、工事現場に常時50人以上の労働者入る場合、複数の会社が皆で作業をしている1か所の作業現場全体の安全衛生管理を統括して管理する役目をする、統括安全衛生責任者を置くことが義務付けられている。ただし、トンネル工事や橋の建設現場の場合は、労働者30人以上で置かないといけない。
さらに、建設業の場合は、その統括安全衛生責任者の補佐役を置く規定も設けれており、その人を元方安全衛生管理者という。一緒に作業を行う各会社には、安全衛生責任者を選ぶ決まりもある。
・元請会社=元方事業者
・建設業、造船業の元請会社は、特定元方事業者という。
・特定元方事業者には、統括安全衛生責任者、さらに建設業の場合は元方安全衛生管理者がいる。
・各会社への連絡係として、安全衛生責任者がいる。
労働安全衛生法は、事業者に、労働者への安全衛生教育を行う義務がある。雇い入れ時・作業内容変更時、危険有害業務に就くとき、職長になったときは法的義務、新しい技術・知識の習得の必要があるときは、努力義務。一定の経験をもっている労働者や、作業主任者と呼ばれる人は、これらの教育を免除されることがある。
職場での健康診断は、実施も受診も、安全衛生法上の義務。一般健康診断、有害業務に従事する労働者に対する特殊健康診断、有害業務に従事した後の労働者が受ける特殊健康診断、有害業務に従事する労働者に対する歯科医師による健康診断、行政の命令により事業者が実施しないといけない健康診断がある。一般健康診断にも、就職時に行う健診、定期的に行う健診のほか、特定業務に従事するときや、海外へ派遣されるとき、給食をつくる仕事に就きとき、労働安全衛生法で定められた特別な診断事項がプラスされた一般健康診断もある。平成27年6月から「受動喫煙防止対策の推進(努力義務)」同年12月から「ストレスチェックの実施の義務化」の規定が施行された。ストレスチェックの施行は義務だが、当面、従業員50人未満の事業場は努力義務。
健康診断を実施した事業者は、労働基準監督署長へ、結果を報告しなければいけない(定期健康診断結果報告書。例えば、レントゲン検査を受けた者の数、そのうち異常があるかもしれない所見のあった労働者数を書いて、職場の産業医のサインをもらって提出する)。報告義務があるのは、常時50人以上の労働者を使用している事業場。