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ショートショート:現実を見てないのが当たり前

「なんなんだ!?このふざけた内容は!!」
先生の怒声が、二つ隣の教室まで響き渡る。
耳障りな蝉の音すらかき消すほどだ。
怒りの矛先は、文学少年という言葉が似合う、どちらかというとおしゃべりな同級生だった。

「空飛ぶ馬車だ!?ドラゴンを退治しただ!?来年高校受験するやつが、こんなガキみたいなことを書いてどうする!?もっと現実を見ろ!!」
今日は虫の居所が悪いようで、いつもは犬が吠えるくらいの調子が、それこそドラゴンが飛びかかってくるくらいの勢いで怒鳴っている。

「いいか!貴様みたいな、現実の見えてない文学少年気取りが、現実とフィクションの違いもわからんやつが、将来凶悪犯罪を起こしたりするんだ!!」
もはや言いがかりレベルだ。
怒鳴れている方も、だんだんイライラした目で教師を見るようになる。
「なんだその目は!?言いたいことがあるなら言ってみろ!!」
机を叩きながら、相手の言うことを聞く態度は見せてみる教師。
怒鳴られてた同級生は、しばらく黙った後、短く答えた。

「これは「神官コルンが勇者になる旅」というファンタジー小説の読書感想文です。こういう文章になるのは当たり前でしょう」


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